第20話 魔王 VS 民 その2
あれから何時間経っただろうか。時刻は13時32分。嘘だろ…配信が始まってまだ2分しか経っていない。なんでこんなに長く感じるんだ。体感では既に3時間ぐらい経ったような気がする。そう感じる程にこの配信で体力が奪われている。信長とヒデ。いや、魔王と泣き猿の二人の個性が強すぎて全くついてけない。でも、戦いは既に始まっている。俺は黙って動画を撮り続けるしかない。
「いやはやそれがしとしたことが。殿の凄まじい覇気と迫力に痺れて動けなくところでありましたぞ。間近で殿を感じることができて儂は天下一の幸せ者じゃ」
「もうよい猿。進めよ」
「ははっ!!失礼仕りました。ではさっそく始めさせていただきます。これからそれがしが殿に代わって民たちから届いた文を読み上げまする。殿はその民からの問に対しお答えいただければと」
「よかろう」
なるほど、いわゆる配信者が視聴者の質問に答える質疑応答形式か。
「そうですなぁ。多くの文が来ておるゆえ、しばしお待ちを。うーむ……お、これなどいかがか」
『秀吉までおるのヤバすぎるww』
……ヒデ。なんでそれなんだ?何百何千とあるコメントの中からそれを選んでくるお前のセンスがやばすぎるだろ
「うむ。儂も何の因果かわからんが猿とともにこの世へ来た。この者が驚くのも無理はなかろう」
それっぽい回答ぉぉぉぉっ!!!!
「さすが殿。簡潔で明確な答えゆえ、きっとこの者の心にも深く刻まれたでしょうな」
うん、黙れ。ちなみに何の回答にもなってね−よ。
「続いての者に参りまする」
『信長さんは彼女いるんですか?』
おい、猿こら。お前いい加減にしろよ
「……で、あるな」
信長ぁぁぁあああっ!!!!
「殿、この者は無礼ですなぁ。聞く相手を間違えておる」
俺も手伝ってもらう相手を間違えました。
「続いての者に参りまする」
『ちゃんとアキちゃんに謝ったほうがいいのでは?』
お、やっとそれらしい質問が来た。(っていうか最初からほとんどのコメントがこれとほぼ同じ内容だったのに脱線しすぎだろ)
「……あきちゃん……誰じゃ?」
信長ぁぁぁあああっ!!!!
「殿、おそれながら。あきちゃんとはついさきほどの記事にて書かれていた殿の相手方、つまり有名ゆうちゅーばーのことかと」
「なんじゃ、珍獣のことか」
はい、さらにコメントが加速してまーす。
「そうじゃったのう。そもそもこの場は珍獣のことを味方する退屈極まりない民が儂に物を申す場であったわ。で、なぜ儂が珍獣に謝る必要がある?」
「はっ。殿が謝る必要はありませぬ。これにて解決。では続いての者に参りまする」
くそざるがぁぁああっ!!!!
はあ、はあ。やばい、このままじゃ俺の命がいくつあっても足りない。信長一人でさえツッコむのが大変なのにヒデが加わったことで俺の血管は既に何本か切れていそうだ。あまりの進行の下手さにツッコんだはいいが、その前の信長の退屈極まりない民発言も相当やばい。もう、終わりたい。今何時間経った?
13時37分。
……誰か。助けてください
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