第7話 4人の鍔迫り合い
ティンとトレノが地面を蹴って、カタパルトから打ち出された様に飛び出す。
ルシアとローダもほぼ同タイミングで続いた。
ティンが初弾からいきなり強烈な
だが冷静に
それをティンは
「へぇ………俺と同じパンチを持ってるのか。しかもこの
「貴女のパンチに
クロスアームブロックの中でティンは
答えながらルシアは、両腕のガードを上げて少し後ろに下がって距離を取る。釣られて笑ったりなどしてしない。
「いつもの様に飛んだり跳ねたり拳を燃やしたりしないのか?
「純粋な
「そうかよッ!」
ティンがあっという間に詰めてくる。彼女の方がルシアよりも
ルシアもこれに負けじと左右のコンビネーションで
ゼロ距離でお互い身の毛もよだつパンチを交換する。二人の動きが速過ぎて残像が残る程だ。
(その
ティンは頭狙い
(なっ!?)
驚くティンにルシアの左フックは
流石に一撃で意識を刈り取る
駄目押しとばかりに、たたらを踏むティンに向かって、右ストレートをこめかみに飛ばす。
(調子に乗るな、小娘ッ!)
ルシアの2射目もクリーンヒットするが、それに合わせて自らもカウンター気味の右の打ち下ろしを叩き込んだ。
「えっ!?」
決まったと油断したルシアもこれには驚く。ルシアの
(ちょ、直撃だけは!)
ルシアは
けれど決めたティンもルシアのフックで軽い
「………い、今のをいなすのかい。やってくれるねえ」
「貴女こそ化物? 意識を飛ばすどころか、まさか反撃に転じるとは思わなかった」
ふらつきながら言っている割には、ティンは実に楽しそうだ。
口から
「じゃあ、第2ラウンド…………」
「OK、ギヤ上げるわよ」
首関節を鳴らしながらティンが告げる。ルシアはスっと立ち上がり、再び両腕を上げた。
恐らく互いの全ての攻撃が、相手がそこいらの戦士であれば一撃必殺の破壊力。
けれどもまるで
◇
一方、ローダとトレノ。此方も互いに飛び出したので、いきなりの
しかし動いてこそいないが、互いに中段で剣を構えて、心中では激しいやり取りをしていた。
(す、
ローダは頭の中でチェスをやる様に、10手先迄を
「どうした、来ないのか? では此方から………とその前に面白いモノを見せてやろう」
「え?」
「風の精霊達よ、我に自由の翼を!」
トレノがニヤついた顔で風の精霊に働きかけると、彼の身体は宙に舞い、勢いそのままローダに向かって空を飛んだ上での鋭い突きを見舞う。
(は、速いっ!)
ローダは相手が飛んだ事よりも、その
多分自分よりも速い。しかしまるで予想の
「ほぅ………その動き。貴様、俺が飛べると読んでいたな」
「ああ、お前が俺の意識の中から、その術を奪う事をな」
トレノは元々この術を
「風の精霊達よ、我に自由の翼を…………意識を共有して相手の力を
(ただ、此方よりも速いのは
ローダも同じ術で宙に浮く、落ち着き払った物言いをしつつも、内心
「安心しろ、何も貴様から全てを奪えた訳ではない。ただこの術は特に欲しかったのでな、狙わせて貰った」
「そこまでわざわざ教えるのか、大した余裕だ」
トレノは宙で停止しながら、再び間合いを広げた。加えて剣先を斜め下に構える。
ローダもまるで
(ほぅ、お前の
「ついでにもう一つ教えてやろう。俺が貴様の全てを奪えていない様に、貴様も俺の全てを奪えてはいない。判るかこの意味が?」
冷笑しながらのこの一言に、ローダは思わず息を飲んだ。その感情の
(やはり速い! しかもまるで空中戦の経験がある様な動き!)
ローダは
「グッ!?」
ローダの手足の至る所に斬られた
だがそのダメージよりも、いつ斬られたのかが判らないのが気味悪い。
「こ、これは真空の刃を飛ばして? かまいたちというものか?」
傷そのものには気にもせずに、ローダは登り切った剣を、今度は斬り降ろして頭上からトレノを
ローダの勇気に
「そういう事だ。これが貴様に真似出来るか?」
トレノも
「なっ!? 鎧さえ通すのか! この刃は!」
ローダの鎧の
まるでローダの血の味を確かめているかの様な
「クククッ、どうする扉の男よ………勝ち筋は見えそうかな?」
トレノはローダよりも背こそ低いが、態度で完全に見下した。
(問題ない………。意識を共有した所で相手の力を全て手に入れることなど出来ないこと位判っている。ただ……それにしても知らないことが多過ぎやしないか?)
ローダとてまだ本気を出してはいない。この程度の出血が増えた所で
長引かせなければ良いだけの話だ。彼は一度剣と身体をスッと引いた。
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