第90話 即興演奏

彼が席を立った後

暗い店の中で

あたしは一人

残されたグラスを見つめていた


氷が溶けてからん、と音を立てる

その拍子にあたしの心も軋みだす


わかってた

あたしが子供過ぎたんだ

わかってたんだ


涙を堪えるあたしの耳に

優しいギターの音が入り込む


子守唄かな

優しいね、マスター





***

別れ話を一方的にして、店を出ていく彼。

『あたし』は自分が悪かったのだと

黙って受け入れたけれど

辛くてなかなか席を立てない。


様子から、大体の事情を察したマスターが

カウンターの隅でギターを弾き始める。

······というシーンを思い浮かべました。


ピアノにしようかとも思ったけれど、

お店は小さなスナックって

イメージだったので却下。

となるとギターしか思い付きませんでした。


このお題、なかなか難しかったですわ(苦笑)



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