第4話 誰!?

勇太と麻央は同じ高校へ進学し、二人は一緒に剣道部へ入部していた。


二人は幼馴染。


二人は恋人同士。


そして、二人はよきライバル。






高校一年生。二人は同じクラス。


「誰よっ!?」

「はぁ……?」




とある日の朝。


麻央が教室に入ってくるなり勇太の元へ歩み寄り大声で問い詰める。


「昨日のあの女は誰かって聞いているのっ!」

「ん?……あぁ、あの子のことか……」




昨日の夕方、勇太は通りすがりの女子高生から道を聞かれた。


彼女は県外からの修学旅行生だった。


本来なら道を教えるだけで済んだことだったのだが、話は意外な方向へ流れる。


道を訪ねてきた女子高生も剣道部だった。


しかも地元の強豪校で全国大会優勝を目指しているとのこと。


意外な共通点をもっていたことに意気投合してしまい、そのまま近くのカフェで剣道談義に花を咲かせた。


そして、カフェで楽しくおしゃべりしているところを麻央に目撃されていたのだ。






自分という存在がありながら、行きずりの女と楽しい時間を過ごしている勇太が許せなかった。


「なんだ? 嫉妬でもしてるのか?」


「くっ……! 言ったな。誰があなたの恋人なのか分からせてやるっ!」






((…………あれっ???))




((今のやり取りどこかで聞いたことあるような……))


二人は子供の頃から時々変なデジャヴを感じることがある。


初めて話す内容のはずなのに、昔どこかで聞いたことあるような……。






嫉妬に怒り狂う麻央を微笑ましく思いながら、この日の勇太は真央を宥めるのに少し手こずることとなった。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「誰だ?」


「はぁ……?」




ある日のこと。


いつもと同じように勇者が魔王城を訪れると、魔王が大声で問い詰めてきた。


「昨日の対戦していた相手は誰かって聞いているんだっ!」

「ん?……あぁ、あのことか……」




昨日の夕方、勇者は通りすがりの魔物に話しかけられた。


”世界最強”を目指して武者修行の旅を続けているとのことだった。


いつもの勇者なら軽くあしらって相手にしないのだが、昨日は相手の真剣な眼差しが気に入ったので立ち会うことにしたのだった。


そして、二人が対決しているところを魔王に目撃されていたのだ。




自分という存在がありながら、行きずりの魔物と対決している勇者を許せなかった。


「なんだ? 嫉妬でもしてるのか?」


「くっ……! 言うではないか。誰がお前のライバルなのか分からせてやるっ!」






嫉妬に怒り狂う魔王を微笑ましく思いながら、この日の勇者は魔王との対決に少し手こずることとなった。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る