第2話 ファーストコンタクト
勇太と麻央。
自己紹介を済ませた二人は道場の中央で睨み合った。
先ほど襲ってきた不思議な感覚のことは既に忘れている。
「しょうぶだっ!」
勇太が竹刀を構える。
「けいこでもしたいの?」
麻央は子供たちの”仲良し稽古”に興味はない。
同年代の子供を相手にすればアッサリと勝ってしまうだけの実力はある。
求めるものは、自分よりも強い相手と立ち合うことのみ。
「けいこに きょうみは ない。オレがめざすのは”いちばん”だ」
「…………。そうなのね」
((あれっ…………?))
さっきの不思議な感覚が再び二人を襲う。
((何なの……これ?))
まだデジャヴと言う言葉を知らない二人は、この奇妙な感覚に大きく動揺した。
気を取り直して構え直す二人。
自分と同じ思いを口にした勇太に、麻央は興味を持った。
「ちょっとだけ相手をしてあげるわ」
麻央が竹刀を構えて間合いを詰める。
勇太が竹刀を振りかざして打ち込んできた!
「泣いてあやまっても知らないからなっ!」
((あれっ……? あれあれっ……!?))
『コツン……』
勢いよく竹刀を打ち込んだ二人だったが、三度襲ってきた不思議な感覚に集中力が完全に切れてしまう。
二人の初対決は、力無く竹刀を合わせただけで終わってしまった。
(な、何なんだよっ! このヘンな気持ちはっ!)
(な、何なのよっ! このヘンな気持ちはっ!)
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「一騎討ちを所望する!」
勇者が剣を抜き、構える。
「戦争でも終わらせに来たのか?」
魔王は国同士の争いに興味はない。
その気になればアッサリと世界を統一できるだけの実力はあるのだが。
求めるものは、ただ強い相手と剣を交えることのみ。
「国同士の争いに興味はない。オレが目指すのは”世界最強”だ」
「…………。そうか」
短い沈黙ののち、魔王は静かに立ち上がった。
くだらない目的で勇者がここに来たのであればアッサリ殺してしまおうと思っていたのだが、自分と同じ思いを口にしたことに興味を持った。
「少しだけ相手をしてやるよ」
魔王が剣を抜いて勇者の元へ歩み寄る。
「泣いて謝っても知らないからな」
不敵な笑みを浮かべてながら勇者が剣を振り下ろした。
『ガキーン』
((こいつ……))
お互いの剣がぶつかり合う。
全身全霊をかけた初太刀を受け止められたのはお互いに初めてのことだった。
想像通りの、いや思っていた以上の実力の持ち主であることに二人は戦慄を覚え、歓喜する。
勇者と魔王の長きにわたるライバル関係。
その初対決の瞬間だった。
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