見習いSEのすすめ!

かまぼこにーさん

第1話 初めてのエクセル!

 「じゃあ金子君、ファイルサーバーにエクセルでまとめてあるから、後で更新しておいてね」

 

 「はい!承知しました!」

 

 威勢の良い金子君(筆者)。

 

 金子君は上司Aに資料の更新を依頼されたようです。

 他の業種はどのように管理されているかわかりませんが、IT業界では何事も、ファイルサーバーと呼ばれる空間にPC資産の棚卸管理表や出勤予定表などの共有資料が置かれているようです。

 金子君は果たして、ファイルサーバー上のエクセルファイルを正しく更新できるのでしょうか。

 

 それでは、新人金子君のエクセルファイルの更新作業を見てみましょう。

 

 

 よしっ、上司Aに言われた通りエクセルファイルを更新するぞ。

 それじゃあ、このファイルサーバのここをクリックしてっと。

 

 『更新したい資料.xlsx』

 

 これこれっ、このファイルをダブルクリック。

 

 『このファイルは○○(上司Aの名前)によってロックされています。』

 

 なにっ、上司A。更新を頼んだくせに自分でファイルをロックしてるじゃないか。

 うーん、しかし。

 

 (上司Aの席をチラ見)

 

 もう電話対応をしているではないか...。

 

 それじゃあしょうがない、いったん作業に戻って後で更新しておくとするか。

 

 

 ――3時間後――

 

 

 「金子君、さっき言ったファイルはもう更新してくれたかい」

 

 ハッ。

 

 「す、すみません。先ほどは上司Aさんがファイルをロックしていたようでして」

 

 上司Aは眉を顰める。

 

 「何言ってんだ。俺、今日はあのファイル開いてないぞ。早めに更新してくれよな」

 

 上司A、タバコを吸いに喫煙所へ。

 

 

 ...なにっ??

 さっきあのファイルをロックしていたのは、まさか影武者か!?

 

 ファイルサーバというデジタル空間の中に上司Aに成りすましたスパイがいるのではないか!?

 ウィルスか、それとも上司の脳波がAIとなってコンピューター世界に...(厨二病をこじらせているため割愛)。

 

 しょうがない、気を取り直してファイルを更新しようか。

 

 カチカチッ(ダブルクリック)。

 

 『このファイルは○○(上司Aの名前)によってロックされています。』

 

 こらーーー、ほらやっぱりだ。忘れているだけで実は開いたままなんじゃないのか!

 

 なるほど、上司Aは俺様に心理戦を仕掛けてきているわけだな。

 わかっているぞ。

 仕事上で何か障害に当たったとき、一人で考え込んでしまって作業が進められないのか。

 はたまた、作業の中でわからない点をまとめ、的確に有識者に質問をすることによって問題を解決する能力が備わっているのかを試しているんだな。

 

 ふっ、俺は間違いなく後者の逸材。

 上司Aも粋な腕試しをしよる(玄人キャラ風)。

 

 (上司A、喫煙から戻る。)

 

 (金子、すかさず上司の席へと足を進める。)

 

 (金子、上司がPCのロックを解除したのを確認して声をかける。)

 

 「上司Aさん、やはりまだ上司Aさんがファイルをロックしているみたいです。お手数なのですが、ファイルを閉じていただいてもよろしいでしょうか?(どやっ)」

 

 (上司A、PCで開いているエクセルのファイルを確認する。)

 

 「金子君、見てみろ。俺はそのファイルは開いていないだろう」

 

 上司Aがこちらに向けたディスプレイの中に、更新を依頼されているファイルは表示されていない...。

 

 「えっ...、あっ、たっ、そっ、すみません、み、見間違えかもしれないです」

 

 (金子、そそくさと自席に戻る。)

 

 (着席。)

 

 

 なぜだーー!!そんなはずがない!!

 

 俺は試されているのか、これはミステリなのか?

 

 このプロジェクトルームの中に謎が隠されているはずだ。

 考えろ、考えるんだ。

 真実はいつもひとつ!

 

 (金子、きょろきょろ周りを見回して手がかりを探る。)

 

 おっと、隣の席の先輩B。今ファイルサーバにアクセスしているようだ。

 これは、先輩もあのエクセルファイルを更新しようとしているのではないか?

 

 (先輩B、更新したい資料.xlsxをダブルクリック)

 

 ふっ、甘いぜ先輩B。そのファイルは上司Aによってロックされているのだ!

 

 (先輩B、静かに更新したい資料.xlsxを開き、先輩Bにかかわる項目を更新して保存、ウィンドウを閉じる。)

 

 涼しげな先輩Bの表情に、思わず口がぽかーんと開いてしまう。

 

 な、なんでなんだ...(金子、自分のデスクに首を垂れる)。

 

 先輩Bはこの密室トリックをいとも簡単に...。

 

 くっ、なぜだ...。

 だが、新人金子はこんな事じゃへこたれない。

 先輩Bにどうやってこの密室トリックを解いたのか確認してやる。

 

 (金子、頑張ってさわやかな表情を作る)

 

 「先輩Bさん、すみません。今、少々お時間よろしいでしょうか?」

 

 (先輩B、こちらを振り向く。)

 

 「ああ、金子君。なんだい、なんでも聞いて(にこっ)」

 

 「あの、私も先ほど更新したい資料.xlsxを開こうとしたのですが、上司Aがロックしていると表示されてしまい、開くことができませんでした。先輩はどのようにしてエクセルファイルを開いたのでしょうか?」

 

 (先輩Bは微笑む。)

 

 「僕は単純にファイルを開いただけだよ(にこっ)」

 

 (金子、ぽかーん。)

 

 ごほんっ(咳払い)、まだまだ、へこたれる俺じゃないぜ。

 

 「あのっ、上司Aさんは今日、一回もエクセルファイルを開いていないようなのですが、なぜか私のPCだと上司Aさんがロックいるとでてしまいまして...」

 

 「ああ、そういうことね」

 

 (先輩B、こちらを向いて微笑む。)

 

 「そういうこと、よくあるからさ。何回か開いてみたらうまくいくかもよ(にこっ)」

 

 ...。

 

 

 爽やかか!この先輩は爽やかか!

 何を言っているのかよくわからないけど、とりあえず爽やかだ!

 

 「あっ、ありがとうございます。では、私も何回か開いて試してみます(白目)」

 

 (金子、自席に戻る。)

 

 

 ふぅ。体力を使った。

 

 ここで分かったことは2つ。

 開いてもいないのにファイルをロックしていることになってしまうことがある。

 そういう時は、何回も開いてみると解決したりする。

 

 あと1つ、先輩Bは爽やか。

 

 (金子、更新したい資料.xlsxを開いてみる。)

 

 ...開けた。

 

 

 新人金子君は無事、上司Aに頼まれたファイルの更新を完了させるのでありました。

 めでたし、めでたし。

 

 

 ――1時間後――

 

 (上司Aが猛烈なスピードで俺の席までやってくる。)

 

 「おい金子君、さっきのファイル、開きっぱなしじゃないか?」

 

 (金子、ディスプレイを上司Aに見せるようにしてPCを確認する)

 

 更新できてほっとしたのか、そこには更新したままの姿で佇むエクセルファイルの姿が映る。

 

 「すみませんっ、今すぐ閉じます!!」

 

 新人金子君はこうしてエクセルファイルのいろはを学んでいくのであった。

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