第168話
時間が経ち日が上り海は太陽で銀色と青が合わさり輝く。
海の表面にはこの世界特有の現象…大量の魚が波のように海の上を飛び跳ねるという私からすれば異常な光景が広がっていた。
この町の漁師が言うにはこんなのは毎日起きるそうで漁師の収入のほとんどはこの時間だけ訪れるこの魚を網で捕獲し売ることだそうだ。
何とも見慣れなくて奇妙な光景だがこの町の漁師は早朝だというのに血眼になって船を漕ぎ網を投げ入れては引き上げるその作業を繰り返している。
取れる魚はアガリウオというらしい…この町というか海に面している街や村の主食として有名とのこと。
大きさは成長しても手より小さいが骨が他の魚より少なく調理が簡単で美味いと漁師から教えてもらった。
それからしばらく時間が経ち海は落ち着きを見せ漁師は屋台の準備を始め大型船が海に姿を見せ始めた。
どうやらアガリウオは早朝の少しの時間しか海の表面に現れないらしく1時間もしないうちに海深くに戻っていってしまうらしい。
私は運良くその1時間を見れたとのことだった。
「おめぇらぁッ!出航すんぞ~帆を上げろ~ッ!」
船長のその声が船内から響き他の船員は雄叫びを上げ船の帆を広げていく。
今回乗る船は海上国家シーヒルズ行きの大型船…俗に言う豪華客船というやつだ。
普通の船と違うところはやはり手で漕ぐような船では無いということだろう。
この船には多くの魔法使いがおり帆に風を絶え間なく当てる風魔法を使える魔法使いに船の尾から水を噴射する水魔法を使う魔法使いが雇われている。
周りを見ると恰幅のいい人が多くおり商人や貴族がこの船内にいることが一目でわかる…だがその中には明らか人では無い魚の顔をしている人もおりそのことからこの船には傭兵がいることが確認できた。
海の上で傭兵がいると言うことは海賊には襲われないという証明でありそれだけでこの船は安全であり良い船だという証明になる。
「いやぁ…この船は商人や僕ら以外にも貴族が居て騒がしく敵わないね」
やはり豪華客船というのは貴族や一部のお金持ちが乗るため当然その護衛も乗る。
そのため必然というべきか乗る人数は多いため人は集まると煩くなる。
ある者は知り合いへの挨拶、またある者は敵対の者へ牽制するために自分を高く見せ声を上げる…またある者は貴族へ取り入るために自分を売り込む。
そんなことを平気で行われるわけだから当然自分の声が相手に聞こえるような大きさの声に自然と変わっていく。
その結果…大きな声で話をしないと相手に聞こえなくなる。
だから私はそっと気休め程度に片耳を手で塞ぎアルキアンの手を繋ぎ目線で移動しようという意を伝える。
その行動に分かったのか分からなかったのか分からなかったのかとりあえず移動したいというか意は伝わったらしく船内に移動することとなった。
船内に移動すると真っ先に見えたのはそこから動くことを許されないと一目で分かる煌びやかな拘束具が取り付けられた大きな魔石が見えた。
「コレがこの船の動力源かぁ…」
手を繋いでいるアルキアンがそんな言葉をこぼす。
その拘束具の下にはこの船の説明やらこの魔石のことが記された看板が立てられている。
どうやらこの船は王様から下賜された神の時代に作られたアーティファクトらしく敵対行動する外敵を探知すると結界を作動するとか自動的に迎撃するとかそれらしいことが書かれている。
こんな見やすいところに動力源を曝け出しているなんて私的にはあり得ないと思うんだが…いや他にコレより良い動力源がこの船内にあると考えた方がこの馬鹿な構造を納得できるか。
そんなこと考えているとアルキアンが手を引かれ次の場所へと移動させられる。
途中でこの船の案内板をチラッとアルキアンと見たがこの船には娯楽と言える場所が一つしかない。
それが…船内に作られている大規模な賭博場だ。
泊まる場所以外はこの賭博場が占めている…内装自体はアーティファクトに含まれていないから船長の趣味で賭博場があるんだろうけどもっと他の娯楽とかなったんだろうか?
そんなことを思いながらトランプを捲る。
今私がやっているのは前の世界で言うところのブラックジャック。
まぁ所々ルールは違うがおおよそ前の世界のブラックジャックと同じで21に合わせるまたはディーラーより21の範囲で高ければ勝ち。
そして21以上だと問答無用で負けというルールだ。
勝率は大体は半々といった感じだろうか…まぁ少し勝ちが多いぐらいだが。
チップは使わず金貨をそのまま賭けるというのがこの高級賭博場のルールの為まぁ…稼がせてもらっている。
賭ける金貨がそこら辺の貴族基準の為普通に百単位が最低ラインで稼ぎとしては2000枚程勝っている。
そのせいで他からの視線が痛いことになっているが気にせずに百単位を賭け…初手で21つまりはブラックジャックでディーラーに勝つ。
「レナは…運が良いね。どうやら僕は今日はツイてないらしいから大人しく帰ることにするよ…」
「あぁまぁ今日はどうやら運が良いらしいよ…それじゃ私も帰ろうかな」
そう言いながらアルキアンが近づいてくる…どうやらまた負けたようだ。
勝負は時の運と言うがアルキアンがやっていたのはポーカーというゲーム。
ポーカーフェイスが少し下手なアルキアンにはここではカモられたらしく損が大きかったらしい。
そんなこんなで私達は賭博場で遊んだ後自分が泊まる部屋へと移動することとした。
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