第118話

次の日の朝、気分は憂鬱だった。

理由については昨日の出来事が原因だろう。

まぁそんなことを気にしていても仕方がない…もう過ぎたことだし私もこれでよかったと結論は自分の中でつけている。

ただまぁ…今になって少しだけ手伝ってもよかったんじゃないかと思ってはいるが。


「今更考えても無駄か」


私はそう呟いて今考えていたことを放棄することとした。

それよりも今日何をするかについて考えるとしよう。

金はあるから稼がなくてもいいし何より昨日の帰り道にここの冒険者ギルドに行ってきたが扱っている依頼の大体が学園の生徒用の依頼ばっかで高いランクの依頼がなかった。

その為あまり稼ぐことも出来んし私はこれでも一応はランクがBだから下のランクの食い扶持を潰すわけにもいかずこうして暇を持て余している。


「はぁ…とりあえず外に出ることにしよ」


そう呟きながらいつもの格好に着替えることとした。

そうして外に出て寮から学園の外に足を運び昨日の今日だが新しい高ランクの依頼があるかもしれないという期待を込めて私は冒険者ギルドに足を運ぶこととした。


「さて…と何か手頃な依頼はないかなぁ?」


依頼を張り出している壁を見ながら私は高ランクの依頼を探してみることとした。

だが見つかる依頼はランクがFやEのものばかりで私が受けれそうな依頼はないように見える。

『薬草の採取』『先生の手伝い』『グラスカウの乳搾り』『ゴブリンの討伐』などなど色々な依頼があるがどれも規定ランクがEやらのものだ。


私はそれを見て肩を下ろしながら冒険者ギルドを見渡し気を紛らす為にこの世界の情勢を知ることができる新聞のような物を読むこととした。

まぁやることもないし最近はあまり世間の情報やらが分からなかったからこういう機会も大事だろう。

私は私にそう言い聞かせながら新聞を読む。


「へぇ今話題なのは『財務大臣の横領』と『国賊ポイズンスネーク盗賊団の公開死刑』ねぇ…物騒だなぁ」


とりあえず『財務大臣の横領』について読むか。

えぇっと…就任時期から国家予算を横流しして作成資料を改竄していたことが発覚。

更に国賊ポイズンスネーク盗賊団との関わりがあり資金調達も行なっていた模様…就任時期は10年前ってよくバレなかったなこれ。


んで『国賊ポイズンスネーク盗賊団の公開死刑』についてはっと。

イードラ王国中で被害やらが報告されており過去に街を3つ崩壊させたり占領し国に多大なる被害を与えている盗賊団ねぇ。

その首領アテール・リーデンはイードラ王国の軍部大臣に就任しており『氷食虫討伐作戦』の際に参謀として活躍されたと世間では評価されてはいるがその裏ではポイズンスネーク盗賊団を動かし暗躍し国の重要人物の殺害を行っていたとされその殺害現場をアルキアン・アマガル・フォン・レインバードに取り押さえられ確保されたと…。

んで『氷食虫討伐作戦』の際にアテール・リーデンに関わり合いのある冒険者を多数確保し国賊であると判明した為死刑とするらしい。

死刑決行日は…1ヶ月後かぁ。


「マジかあの参謀が死刑か…」


あいつに関しては怨みがある。

何せ私を極寒の時に鳥籠みたいな檻に入れてあんな仕打ちにした野郎だ…あの戦いが終わったら真っ先に潰すと考えていたぐらいだし。

今までは考えてもいなかったが今になって考えてみると怨みそして怒りが湧いてくる。

そうかアイツの死に際が見れるのか…私も行ってみるかな?

それで私がいなくなって心配をかけたであろうアルキアンにも顔を合わせて今までの話をして…後『ドラゴニア』のみんなにも挨拶したりして…うむ完璧な予定が完成したな。

今からが楽しみだね。


「あぁ本当に楽しみだね…私」


私はそう呟いた後立ち上がり周りを見渡す。

冒険者ギルドはいつの間にか先ほどまでいた冒険者の姿がなくなっており外がなんだかうるさい状態だった。

私は何かあったのだろうかと思い声がする方へと足を運ぶこととした。

そこでは冒険者が囲っておりその中心で二人の男性が戦っているようだった。

その周りの冒険者は一方の冒険者に向かって「負けるな」やら「勝てッ!」と応援しているがもう一方には「負けろッ!」やら「新入りに負けんなよぉ」という声が聞こえてくる。


よく観察すると周りの冒険者の手には一枚の紙が握りしめられているのが見え私は何となくこれは賭け事をしているのだろうという予想がつけることができた。

んで片方がベテランでもう片方が新入りで揉めたことで決闘やらなんやらになってこんなことになっているのだろうなぁ。

ハハハ…ラノベじゃあるまいしこんなテンプレ起こるわけないと思っていたんだが予想外にも起きるもんだな。

さて、私は賭け事には参加はしないが観戦することとしますかね。

人の戦いを見ていたら何か新しい戦い方や魔術のインスピレーション湧くかもしれんし。


そう思い私は人混みを掻き分け冒険者ギルドの屋根の上へよじ登りその戦いを観戦することとした。

一方の冒険者はなんというか装飾が凝りに凝りまくって使いづらそうな大剣で装備の一つもつけない裸一貫を貫いているアッタマテッカテーカな巨漢でもう片方は防具はきちんとしているが無手で身体付きは冒険者としては少し頼りない男性…?


「っていうかよく見たらコウキ君じゃないか…」

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