第33話

「ふぅ…これで一応テントの完成だな」


俺は今ローガンさんと一緒にテントを作り終えた。

そこらへんでうろうろしながら必要そうな物を集めていた俺をローガンさんは呼び止めてテントの立て方をレクチャーしてくれたのだ。

この世界のテントは魔道具で作られている。

まぁ高価で金を持っている人達にしか持てないものだが。

一応レクチャーされたから覚えたがそこまでお金を貯めることができかは別のことだ。


「少年!それじゃあこれからモエとミニューが狩ってきたツノウサギを解体するぞー?」


「は、はい!今行きます」


ローガンさんに呼ばれローガンさんのいるところまで走る。

今回モエさんとミニューさんが狩ってきたのはツノウサギという魔物。

兎から魔物に変異した奴だが姿は変わらず頭に少し鋭い角が生えた兎だ。

Fランクの冒険者でも1対1で狩猟できる程度だが群れると普通に強い。

下手をするとあの鋭い角が腹に突き刺さるということもあるため普通の人は武装でもしていない限り近づいてはならないとされてる魔物だ。


「少年、それじゃあこれから解体するぞ?まずは…」


…幼女解体中…


解体で血だらけになった俺の身体をミニューさんが生活魔法という民間人でも使うことができる魔法で洗い落とす。

生活魔法というのはどうやら学のない人でも金さえあれば教会で教えてもらうことができる魔法らしい。

俺も覚えたいなぁ。

そんな風にぼやきながら解体された肉を見る。


あの後ローガンさんにホーンボアというイノシシの魔物とウッドスネークという蛇の魔物を解体した。

とにかく大変だった。

ボアは胃袋などの内臓系は薬に使えると教えられて覚え、ウッドスネークは牙を粉末にすると錬金術の媒体に使えるから高く売れるし需要があるからと教えられ…とにかくいっぱいのことを覚えた。


「これでいい…じゃあご飯ができたら起こして~…すやぁ」


そう言いミニューさんは木にもたれかかって寝てしまった。

生活魔法いいなぁ。

これは風呂いらずになるしいつでも身体を洗えるというわけではない冒険者にとって必要となるだろうな。

金貯めるか。


そして相変わらずフガクさんは動かない。

木をたくさん持ってきてそのままあぐらをかいて瞑想を始めてしまった。

誰も文句を言わないところを見るといつもこんな感じなんだろう。

ミニューさんは眠り、フガクさんは瞑想、ローガンさんは鍛錬として大剣を振り、モエさんは料理を作る。


…俺も料理手伝おうか。

早速俺はモエさんのいる所へと移動して話しかける。


「すいませんモエさん、料理手伝います」


「ん?んーそうねぇもうそろそろ終わりそうだしコレをお皿に分けてくれるかしら?」


「はいわかりました」


今日の野宿での夕食は焼いた兎肉、猪肉、蛇肉とそれを混ぜたスープと硬いパン。

硬いパンは保存に適しておりスープにつけて食べるタイプのパンだ。

そのまま食べることもできるが石のように硬い。

…ちなみに俺はそのまま食べることができる。


この世界の食事は小麦で簡単に作ることができる黒パンが主流だ。

硬くはあるがその分保存がしやすいため主食にすることもできる。

なんと銅貨1枚で買うことができるため食堂や酒場で大体何かを注文すると無料で1つついてくる。

ただし硬い。

なんといっても硬い。

前にいた所の酒場でそのまま食べていたら酒場のマスターに「そうじゃない」とまで言われた。

あの時は恥ずかしかったなぁ。

そんなことを考えながら皿に分けていく。


「さて、終わったぞ?」


「うん、それじゃああんたら夕食の時間だよ!集まりなッ!」


そういうとローガンさんが大きな返事をしながらこちらへと歩いてきてそれを見た残りの3人もこちらへと歩いてきた。

なんというかモエさんって子供に食事を与える親鳥的な感じになっているな。

そしてこのパーティの自由さよ。

まぁこれだけ自由だけどちゃんと指示に従ってくれる人たちなんて少数なんだからこのパーティが優秀だということを表しているんだろうな。


あのどこぞの護衛に遅れたパーティの人達は一応どこにでもいるパーティなんだろう。

遅れて商人が先に行ったとしても魔物や野盗に襲われるだけだから必然的に冒険者に頼らなくてはならなくなる。

普通だと冒険者の方が優位な立場にいるからどれだけ遅くても商人は襲われないために待っていなくてはならない。

だから冒険者はあんなギリギリにくることが多いと言えるのだろうな。


「はい、それでは集まったな?それじゃ…我らの信じる神に感謝を」


そう言いローガンさんは目を閉じて親指と中指と小指を立ててそれ以外の指を閉じたかんじの手を胸に添えその手を右、斜め左上、右の順に動かしてから目を開け食べ始めた。

周りを見ると他のメンバーの人達も目を閉じて手を動かした後、目を開け食べ始めた。

これがこの世界での「いただきます」にかわるものだろうか?

俺はそんなことを考えながらみんなの真似をした。


「…いただきます」


俺は誰にも聞こえないような声でボソッと呟いてから食べ始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る