19話 星あかりの元の旅立ち

「本当に良かったのかね?」

「ウルセェ、自分でもわかんねえんだ」

 街道を足早に歩くゴーヴァンを小走りで後を追う。歩幅が違うんだから、多少はこちらに合わせて欲しいものだね。

 あの後私がしたこと、いやゴーヴァンから言われたことを思い出す。

 町の外へ今すぐ連れて行くよう指示すること、そして奴隷商の元締めから自分たちのことを忘れさせること。

 誰も殺さなくていいのかと何度か聞いたが、返事はただ一言「黙ってろ」だけだった。

「で、どこに行きゃあいいんだ」

「どこ、とは?」

「オレのコレを消してくれんだろ」

 ゴーヴァンが自分の胸を指で叩く。ああ、そういう約束だものね。

「まずは港湾都市にいる私の友人に会いにいく。今回、何をどうしたか報告に戻れと言われているのでね」

 少し歩調を落としたゴーヴァンに並んで歩く。

「その友人に学術都市にいる魔術師に紹介状を書いてもらう、予定さね」

「予定かよ。アテになんのか、そのお友達は」

「顔は広いから、何かしらの伝手はあるはずさね。それより」

 少し力を入れて、ゴーヴァンの腕を掴む。

「しばらくは一緒にいることになったんだ、名前くらい呼んでくれても良いじゃないのかね?」

「ハッ、テメエの名前なんざ知らねえよ」

 いやいや、もう名乗ったろうさね。本気で言ってるのかい、まさか。

「レーテ。私の名前はレーテさね」

「ああ、はいはい。レーテなレーテレーテ」

 背負った荷物を背負い直し、面倒くさそうに頭をかく。

 その言い方、ちょっと投げやりじゃないかい?

「じゃあレーテ、その手、離せ。力入れ過ぎだ、痛えんだよ」

「おっと、これは失礼」

 手を話すとゴーヴァンは片手を振りかぶって、何かを投げ飛ばす。

 角にはもう所有者を示すタグは、付いていない。

「しっかし夜か、途中で野盗やら魔獣やらに襲われなきゃいいんだがな」

「なに、そうなったら私が助けてあげるさね」

「ハッ、助けてもらわなくても一人でどうにか出来らあ。面倒くせえだけだ」

 空を見上げる。

 星のきれいな夜だった。

「こんな星空の日に旅立つのも悪くないさね」

 私はゴーヴァンの横に立ち、歩みを進めた。

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