第三章 第四節 女神の秘密
1 二度目の召喚
「まあ、何もかもはっきりするまでは決めてしまわない方がいいな」
ディレンが二人の気持ちをなだめるようにそう言う。
「ええ、まあ、そうですね」
「はい、分かりました」
アランとミーヤもディレンの気持ちが分かってそう答える。
「けどなあ、なんにしてもあの光が何か言うまではなんも言えないってことになるな」
ディレンが話を変えるような、それでいて同じ問題であるような方向に話を向ける。
「こうなりゃ少しでも早く、もう一回あそこに呼んでもらいたいもんだ」
ディレンの言葉にアーダは一瞬ビクッとしたが、
「は、はい、今では私もそう思います。怖いですが、一人ではないですし、それよりはもっと色々知りたい、知った方が怖くないのではないかとも思っています」
それでもそう言う。
「今なら、もしもあそこに飛ばされても大丈夫な気がします」
「アーダ様……」
ミーヤがアーダを
「え!?」
ミーヤの胸元がほうっと温かくなった。
「これは……」
そしてふうわりと明るい光を放つのを見た。
「フェイ……」
あの青い小鳥が柔らかく、優しく、そして温かく光を放っている。
「あ!」
そうして空間が消滅した。
「これって」
「ああ、来たみたいだな」
比較的冷静なアランとディレンがそう言って状況を受け止める。
「呼ばれたみたいだな」
どこかから聞いたことのある声が聞こえた。
「トーヤか?」
「アランか」
またあの時のように空間がつながったようだ。
「リル大丈夫か!」
「あーこっちは大丈夫、おっかさんは強いのよ!」
ダルの呼びかけに答えたリルの明るい声にミーヤもホッとする。前回はダルと一緒だったが、今回は1人なだけに心配にもなるというものだ。
「ミーヤいるの?」
「ここよ、なに?」
「アベルが光ってるんだけど、そっちはフェイが光ってるの?」
「ええ」
「この子たちったら、小さいくせに本当に大きな顔をして光っているんだから、ねえ」
「リルったら」
こんな状況ながら思わずミーヤが吹き出す。
「ん、なに?」
「いえ、本当にリルは強いなと思って」
「ありがとう、でもミーヤには負けるわよ?」
「え、そんなことはないと思うのだけど」
「ま、今はそういう場合ではなさそうだから、また今度ね」
どこまでも自分のペースを崩さないリルである。
「こっちはこの間のメンツ揃ってんだが、そっちもか?」
「ああ、ダルさんが移動してこっち来たけど」
「そうか」
トーヤが人数を確認するのを待つようにして、また光が
『
光がそうして話を始める。
「ああ、会ってきた」
『どう言っていました』
「どうしたいのか聞いたら、前に言った海の向こうを見てみたい気持ち、親元に帰りたい気持ち、それから、そのまま宮に残りたい気持ちがあるってよ。後宮に行きたいって気持ちはねえらしい。だから、交代が終わったら逃してやるって言ってきた」
何しろ時間がないと言われている。トーヤが一気にまとめてそう話をした。
『そのまま宮に残りたい、そう言ったのですね』
「ああ」
トーヤの報告に光が不安を含んだように瞬いた。
「こっちは言うことは言ったぞ、あんたからもなんか言いたいことあるんじゃねえのか? てか、こっちもまだまだ聞きたいことがあるが、とりあえず言いたいことあるんならとっとと言ってくれ、時間がねえってことだからな」
『分かりました』
光が静かに瞬く。
『まずは千年前のこと』
「そんな前の話からかよ、なんか前にトーヤにおんなじようなことやられた気がすんな」
その言葉にベルがそう言う声が混じり、
「だから時間ねえんだから話の腰折んなおまえは!」
「ごめん!」
と、兄が妹をどやしつけ、光が楽しそうに一瞬
『ほとんどの神々が神の世に戻り、わたくしのように一部の神が人の世に残って後、人の世の時は穏やかに流れていましたが、千年前、あることから世界が眠り、その流れが止まることとなりました』
「世界が眠るか、なんかそういうの千年前の託宣にあったな」
『そうです』
光が悲しみを帯びたように瞬く。
『眠った世界では時も眠り、流れぬ川のように
マユリアもそういやそういうこと言ってたな、あの時は眠りたかったら眠らせてやれと言ったが、とてもそれで終わることではなさそうだと、トーヤは心の中で思った。
『八年前、一度はトーヤがそれを、世界が眠ることを
「そんで、今度は一体何をやらせようってんだ? いっつも思うんだがな、あんたら、すげえまどろっこしいんだよ。マユリアもラーラ様もああだこうだと
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