第31話 真魔球

ゴブリン城へ帰還すると振り出しに戻る気がして、嫌だ。

前哨基地も遠いし、装備を補充させてくれるかもわからない。


狼の残骸を見つめながら、手詰まりしていた。


爪や牙は武器になる。しかし小さいし、持ち辛いのでは使えない。太い狼の骨を持って暇潰しに地面を叩く、骨は鈍器にはなるが、棍棒と大差ない。


何かないか?俺は魔力で様々なモノに影響を与えてきたが、今までの経験では打開出来そうも無かった。


目を瞑り、俺の中の可能性を探る。


ゴブリンマジシャンへ進化する事で、火と土のエレメントの寵愛を授かった。火は練習により魔力を操り、火に変換して魔法とした。


土も練習により魔力を変換して魔法となるのか?先輩マジシャンは何も教えてくれなかった。多分必要無かったからだろう。攻撃に使えないのか?建物の建築などに使っていたのだろうか?

わからん。


とりあえず土を魔法で出してみるか、

でも土って何だ?土のエレメントの性質はわかる。だが俺が出そうとしているモノが土では曖昧過ぎて、難しく、悩んでしまう。


骨はどうだろう。土のエレメント的にも合致している。爪も牙も一緒だ。皮も肉も木も石も物体として留まった状態の物は土のエレメントと言える様だ。生きているモノはなんか違う。生き物を育む力は土のエレメントに感じる。


骨と牙を持って魔力を通す。極微小な粒の集まりが形作る骨の形、極微小な粒の集まりが形作る牙の形、同一のモノが、全ての物体を構成している。


土のエレメントのなんたるかを、漠然と理解していたが、今回の経験で、一つの真理を得た気がした。


やはりジョセ翁の云う通り、神の陰はあったのだ。そして魔力とも置き換える事ができる。


また目を瞑り、土のエレメントを感じると、森の景色が彩りを持って感じられた。意識の拡張を感じた。葉や生き物の動きが、対比する陰の様に伝わり、俺の魔力が感じる範囲に知らせてくれる。


千里眼とまではいかないが、気配ではなく、俺は魔力をハッキリと掴む感覚を得た。


これを火のエレメントに…。


いけない!いけない、楽しい、超感覚面白過ぎる。


残念だが目を開き、俺は息を整えた。


骨を魔力で包み、中に意識を入れる。一粒一粒に最小の物質がある事まで時間をかけて感じる。魔力をもって変化させ、動かしていく、真球を思い、形作る。


非常に疲れた。


そして俺の掌には、真球の謎のオーパーツが出来ていた。


よく見ると、真っ白な丸い形の骨であるかは定かではないモノ。骨ですと言われればそうかと思うが、そんな骨、今まで見た事ない。俺の充分な魔力が籠った球を『真魔球』と名付けしまった。


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