第18話 暴走
進化する選択肢は二つあった。
ホブゴブリンとゴブリンマジシャン。
ホブゴブリンにはゴブリンの王となる道が示されていた。
ゴブリンマジシャンには、火のエレメント、土のエレメントの寵愛があった。
俺はゴブリンマジシャンへの進化を選択する。
俺の腹の底の魔石がパリンと割れ、光りの祝福に満たされると、やがて光りが収縮し、火と土の魔法の全てが与えられた。
魔石の格があがる。
身体つきが若干変わった。
魔力の高まりで、顔がほんのり赤くなり。鼻がデカくなる。
身長と体重はほんの少し伸びて、重くなる。誤差の範囲だ。
後は火と土の何たるかはなんとなくわかった気がする。魔力を用いて現実に作用させる方法はわからなかった。どうやら別の話の様だ。
ゴブリンマジシャンは可能性しかなかった。
しかし俺は今、希望に満ちている。やる気が青天井だ。ゴブリン、ホブゴブリン、ジャングルやダンジョン、世界が俺を祝福してくれている。
全能感に一体感、負ける気がせん!
ダンダンダン
ダンダンダン
高揚感が素晴らしい。ホブゴブリン達が隊列を組む。
この森の中に進んで行く。
その前方のジャングルに雲の隙間から光りのシャワーが差し込む。
スポットライトに照らされ、至る所へ魔法陣が展開する。
大量の魔物が生み出される。
象の様な大きさの狼が現れる。その眷属である森狼達が、無数に湧き出て来る。
象の様な大きさ豚や猿や鹿や鳥や蝙蝠が現れる。その眷属達が、無数に湧き出て来る。
前哨基地のゴブリン達の動員数は百体程度、圧倒的な戦力の差。
しかしホブゴブリンリーダー改め、ゴブリンジェネラルへと進化した大将は、魔法陣を展開し、的確な采配で、ゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンマジシャンを召喚していく。質と量を巧みに操り戦場を支配していく。
戦場は多くの血と魔力に染まる。
戦いが激しさを増し、血みどろの様相を呈した頃、
俺は狼の大将へと駆け出していく。
「ひぃーはぁー!!」
つまり、つまりは拡散と収縮!!
火のエレメントに魔力で干渉し、
ベクトルを操作することで燃え上がらせることが出来るし、消すことが出来る。後は燃料たる魔力と位置と組み合わせでお好み次第。
やってやるぜ!!
駆け出しながら短剣を真上に掲げ、腹の底に火をつける。変換した魔力が短剣に流れる。今この時の熱い情熱を、剣先に集中する。溢れ出すこの想い!
陰陽交流自在、今出現!!
ファイアボール!
剣先から光りが生まれ、一瞬で燃え上がる。巨大な火の玉が頭上に渦を巻き、収縮して短剣の刃に収まる。
アンカー、ゲート、バイパス。
短剣を振り下ろすと、
空間が裂け、
魔力が太刀筋にそって迸る。
狼の大将に向かって飛んでゆく、三日月の炎は、眷属の狼達をも飲み込んで、拡散する。
火の海!
その先のジャングルは炎々と燃えて無くなっていた。
敵味方ドン引きの惨状に前哨基地の熱量と雲の隙間から降り注いだ魔物達も覚めてしまった。
儚き夢の事く、
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