第16話 夜の森
索敵をしながら慎重に森を進む。
そこで森を徘徊する魔物の気配を感じた。複数の魔物が獲物を追っている様だ。
息を殺し、後を追ってみる事にする。
どうやら狼だ。獲物は白毛皮の兎だろうか?とんでもないスピードで走り、急に方向を変え、ジグザグに逃げている。しかし、狼達は複数で取り囲み、じわじわ追い詰める作戦。疲れたり、逃げ場を失った時が終わりだろう。
俺は木に登り、一部始終見る事が出来た。
中々頭の良い連中だ。連携も見事で狩りが上手い。
俺ならどう対処する?
走り回るのは兎が無理だし、
一発当てても周りの奴らに取り囲まれて終わりそうだ。
罠を仕掛けるのはどうだろう?
準備が必要か。槍ならあるけど、一本じゃ話にならない。暇な時に木の棒でぼちぼち作っておくか。
気配が無くなるまで暫くお待って、帰る事にする。
適当な棒を回収しながら、来た方角にると辺りは暗くなってしまう。
夜があるのか?ここは、
不思議なダンジョンだな。
まだ魔物をここで倒してないから判断できないな、これ、、
幸い暗闇でもゴブリンの目はよく見る。ここで野宿は危険だから早く帰ろ。
夜になるとダンジョン内の魔力濃度が高まった気がする。動物や虫の声さえ聞こえなくなった。闇がいっそう深くなった。誰かに見られている気がしてくる。
夜のジャングルダンジョンは半端なく怖い場所だった。気分的に…。
ホブゴブリン前哨基地の灯りが見えて来た。助かった。
知らぬ間に張り詰めていた空気が抜ける。
ガサガサと薮を掻き分ける音が聞こえる。木の影に隠れて息をひそめた。ギアギア聞こえるので、ゴブリン達の様だ。
前哨基地の近く、夕飯でも探しているのだろうか?各自散開して何かを探している。
最悪ゴブリンなら同族同士なので、襲われないし大丈夫だろう。
槍は仕舞い、念の為「魔球」の準備だけして気配を消す。
一匹のゴブリンが近づいて来る。バレてはいないようだ。このままだと変に見つかってしまうので、ガサガサと音を立てて木の影から出る。
「ぎあ」
挨拶する。このゴブリンは俺の短剣を持っていた。返して欲しいけど、無理だろうなと思いながら近づいていく、他のゴブリン達は音はするが見えなかった。
「ぎあ?」
返事が無い。奴は隈取の様な赤い魔力が顔に張り付き、何かに抵抗する様に力を入れて震えている。
あっ!これダメだ。
後ろに飛びのくと同時に短剣が横から振り抜かれた。俺の首が切られるところだった。
「魔球」 バン!
奴が飛び掛かる為に屈む隙をつき、「魔球」をお見舞いする。びっくりすると魔力が暴走するのか?奴の頭が弾け飛ぶ。
やはりここもダンジョンで間違いない。光りの粒子となり消えてしまう。
急いで短剣と魔力を回収して立ち去る。しかし「魔球」の炸裂音がゴブリン達を呼び寄せてしまう。
「ギア!ギア!」
なるしかないか?ジャングルの闇が影響して、ゴブリン達の魔力の限界を越えて溢れさせている。
仲間殺しが出来る夜。
野良のゴブリンなど奴等の餌だ。
俺は覚悟を決め、槍を取り出し左脇に抱える。マジックバックに短剣を仕舞い、右手に「魔球」持つ。
周囲から五匹のゴブリンが押し寄せる。
正面から来るゴブリン目掛け「魔球」を投げる。
バン! 腹に「魔球」を受けゴブリンが吹っ飛ぶ。
左から来るゴブリンに「魔球」
バン!
こちらはヘッドショットか決まり光りの粒子になって消えた。
どんどん敵が接近して来る。
振り返るとゴブリンが槍を持って突っ込んで来た。
脇に抱えた自分の槍の石突を、地面に斜めに刺して、ゴブリンの槍を躱すして、短剣を取り出す。
そのまま突っ込んで来たゴブリンは、
斜めになった槍に刺し貫かれ、光りの粒子となる。
ゴブリンの槍を左手で掴み、振り回すと接近を許した四匹目のゴブリンが棍棒で受け止めた。
五匹のゴブリンも目の前だ。棍棒を振り上げ叩きつけて来る。短剣で受けるが押し込まれた。
槍を手放し、敵が前後に並ぶ位置取りを取る。
押し込まれた五匹のゴブリンの股間を蹴り上げ、逆に押し返す。
四匹のゴブリンにそのまま体当たりをかますと、素早く短剣で滅多刺し!
五匹が消え、やがて四匹目も消えてくれた。
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