第13話 待機
先輩ゴブリンに蹴られて目が開いた。
もう挨拶も会話も蹴りで済ませてるな!
どうやら狩りに出かける様子。
武器などを準備する姿がチラホラ見える。
そういえばホブゴブリンはこの集落にはいないのね、住んでる場所が違う様だ。
「オォ!!オォ!!オォ〜!!」
聞き慣れたホブゴブリンの雄叫びが聞こえる。
ゴブリン達に緊張が走る。
慌ててホブゴブリンの元へ駆けつけギアギア元気な声を出してアピールしてる。
急な展開に訳がわからん。とりあえずは武器になる物を探して回る。
整理など生まれてから今までやった事ないだろうゴブリン達の集落は、足場が悪く、俺は滑って転んでしまう。
どうやらゴブリンは、ホブゴブリンの雄叫びを聞くと興奮して特攻隊の様に攻撃指示を待つのが仕様の様で、それを軽く無視した俺は鬼軍曹の様なホブゴブリンに目をつけられてしまった。どしどしと近づいた血走った目のホブゴブリンは俺の尻を蹴り上げる。
ドカン!と打ち上がった俺は水飲み場に飛び込む事になり盛大な水飛沫を上げた。
死んだと思った奴もいただろう。俺も思った。
気が済んだのか?鬼軍曹ホブゴブリンは踵を返し、ゴブリン達の集団に戻る。そして蹴ったり、叩いたりして、ゴブリンを選別し去って行った。
俺の寝床の先輩の姿もチラッと見えた。
ホブゴブリンが立ち去ると心配したのか?ゴブリン達が集まって来た。手に武器を持ったまま俺の様子を伺うと生きていたので落胆するゴブリン達。絶対食う気だっな。
今日は出遅れたようだ。散々な目にあった。死んでたら食われるところだったし、もう仲間なのか?なんなのか?
尻を蹴られた時は実際かなりのダメージでマジで死ねそうだったが、いっぱい寝たお陰で魔力が回復して、ダメージを軽減出来たのが良かった。
なお、魔物を倒すと魔力と魔力の最大値が増加する気がする。ダンジョンで休むとダンジョン内の魔力で、減少分が補充されるのは確かだが最大値は増えない。
朝から死にかけるとはゴブリン生活も楽では無いな。
集まったゴブリン達の武器の中に見覚えのある短剣があった。一番俺が死んで無くてガッカリした顔の奴のものだった。俺の中で最初の獲物が見つかった。短剣を必ず取り戻そう。
ゴブリン集落の居残り組は集落の守備警戒が仕事になるが、まともにやってるゴブリンは見かけない。自由にしていても怒られる事は無いと思った。
この集落の責任者はいない。死んだら絶えず新しいゴブリンがやって来るので、新陳代謝が激しく、責任者を置く必要もない。
ゴブリンとホブゴブリンが棲み分けをしている様に互いが棲みやすいエリアが分かれているせいらしい。より魔力の濃い良質なエリアは上位種が占拠し、最弱のゴブリンは薄い魔力のエリアを好んで暮らす。
俺は横穴に戻りマジックバックから槍を取り出し、見つからない様に出し入れの練習をする。疲れたら、干し肉もマジックバックから出して少量食べ、水飲み場の水を沢山呑んで寝る。
一日目は何事も無く過ぎて行くが、昨日の横穴の先輩ゴブリンはとうとう帰っては来なかった。
いつのまにか増える新米ゴブリン達と横穴で寝るが先輩ゴブリンの事がなかなか頭から離れなかった。
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