第8話 火の玉

丸盾や背負い袋などをマジックバックに入れようと格闘していると、


「ギヤャッギヤ」


ドカドカドカ!


騒がしく、集団が近づいて来る音がする。狩から戻って来たのか?獲物を担いでいる奴もいた。


迎え撃つか?隠れるか?逃げ出すか?

逡巡していると何かが飛んできた!


もう見つかってしまっているようだ。


音は来た道の先の通路から聞こえてきた。魔石やらマジックバックの検証などに夢中になって、全然警戒が足りなかった。


緑色の小鬼達がワラワラ五匹集まってきて、取り囲もうとする。


更に背丈の高い奴が、ゆっくりと登場した。


完全に包囲される前に、守備の手薄な方、自分が来た道に戻る。


「ヤバイ⁉︎どうしよ!」


どうにか背負い袋をしまい、丸盾と槍を手にする。数が多いし、リーチのある槍の方がいい。


回り込もうとする小鬼に先程手に入れた槍で腿辺りに傷を付ける。


相手の機動力を奪い逃げの一手だ。


振り向きもせずに駆け出した。来た道を戻り中間辺り、


「落ち着いて対処すれば大丈夫!

一匹づつ冷静に!」


声に出して自分を落ち着かせる。


「オォ!!オォ!!オォ〜!!」


馬鹿でかい声が洞窟の通路に響き渡った。


また一瞬ビクッとし足がすくむ、どうやら背丈の高い小鬼の声の様だ!はじめての声で威嚇され、どうしても足が止まる。振り返ってもいい事無いが、振り返るとなんと火の玉が飛んできた。慌てて横に飛び退いたが、もし振り返っていなければ背中に直撃していた。


「マジか⁉︎」


ドーン!っと轟音を響かせ壁を焼いた炎の熱風が押し寄せる。


はじめての魔力の攻撃と威力に恐怖する。


よく見ると背の高い小鬼は移動が苦手そうで、声を出した後はもたついている。


先程火の玉を飛ばした小鬼は鼻がデカい!赤ら顔だ。周りに指示をして他の小鬼達をけしかけている。手には何やらロットのような杖が見える。


一匹は足の傷を押さえて、のたうちまわり、元気な三匹はもう目の前だ。


両方の手を地面に着いた自分は槍を諦め、素早く立ち上がると丸盾を構え距離を取る。


丸盾で隠しながら腰袋から短剣をどうにか取り出し、半身になって武器を悟らせないようにする。


足を刺すと効率よく数を減らせそうだな、あとは自分の足を刺したり刺されたりしないよう気をつけよう!


三匹に囲まれて槍で突かれれば確実に殺される。


ここは攻める!


「オォ!!」


威嚇するつもりで気合いを入れて大声を出す。怯むかはどうでもいい!先頭の槍に突っ込んだ!!


槍の穂先だけ上に逸らし、丸盾ごと全身でぶちかまして後続の小鬼の所まで吹っ飛ばした。


短剣の間合いまで近づくと右の小鬼の左腕を切り飛ばし、左の小鬼の槍を丸盾で逸らす。そのまま壁まで押し付けて脇腹を刺した。


脇腹を刺された小鬼は急所を突いたのか?すぐに光の粒子になって消えた。ひっくり返った小鬼と左腕を斬られた小鬼はまだ当然消えて無い。


そういえば魔力を全身に巡らせてみると、完全に出来ている気はしないが、やはり効果がある。動きもいいし、短剣の切味が上がっている。錆びた短剣で片腕を切り飛ばせるとは思わなかった。


片腕の小鬼に駆け寄ってもう一度斬りつけると槍の柄で防がれた。必死に守りに徹している。

左隅が光るのが見えた。

ヤバイ⁉︎火の玉が飛んでる来る!!


丸盾を構えると吹っ飛ばされた小鬼が起き上がる。丁度その背中に火の玉が直撃し、炎が爆ぜる。


バーン!


ローブを頭から被り地面を転がって火を消した。


顔を上げると二匹の小鬼は炭のよう真っ黒で、炎によって燃やされていた。


あの野郎!!


自分の槍が落ちていたので拾い上げ鼻のデカい小鬼にぶん投げる!


もちろん全身に魔力を纏い、槍にも全体に意識を入れて、全力で投げた!!


ブン!っと唸りをあげて直進する槍はうっすら魔力の輝きを放っていた。


ドーン!っと地響きをたて、槍は鼻デカ小鬼の腹を突き抜け壁に剣先がまるまる埋まっていた。


凄まじい威力に驚いたが、自分の魔力が無くなっていたのには二度驚いた。


やり過ぎた!!


まだ背の高い奴は無傷で残っているのだ。もう小鬼程度なら充分戦えると思ったが、魔力が無いと話が違う。ましてや背の高い奴ははじめてでどんな攻撃をして来るのか?わからない!


「オォ!!オォ!!オォ〜!!」


また雄叫びが上がる。今度は反対の背後からだ!増援が来る。挟まれる!!

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