第6話 オリエンでまず第二王子を弾き飛ばしました

翌朝、私達はやる気満々だった。というか主に私がだが。

服装は学園のジャージ、私は全員に白鉢巻をつけさせていた。

学園の基本は学園内は全て平等なので、私のねじり鉢巻には打倒王子とはっきり書かれている。


「ちょっとリア、それはやりすぎなんじゃない」

ハンナとヒルダの出来たら王子の婚約者になりたい組からは悲鳴が聞こえたが、私は当然無視した。あのいけ好かない二人の王子を倒さない限りドラゴンの角はもらえないのだ。


スタート地点はそれぞれバラバラだった。


最初は数学の問題だった。我がクラス担任のガスコンの担当だ。


私達の班は何故か第二王子達と同じだった。


向こうはイケメン3人、ベッキーの情報によると王子とその側近の侯爵令息と伯爵令息に公爵と侯爵令嬢がついているという話だった。超ハイクラスのメンバーだ。でも、位と実力は違うのだ。私は倒す気満々だった。


「おい、そこの女、何だそのはちまきは」

いきなり私のはちまきを見てテレンス・オルコット侯爵令息が文句を言ってきた。

ハンナとヒルダが頭を抱える。


「心意気です」

私が平然と言い返すと

「いくら学園内は身分は問わずとは言え、そのはちまきはあまりに不敬ではないか」

「良い良い。テレンス。その不敬な女は破壊女だぞ。さすが学園の教室を破壊するだけのことはある」

テレンスの言葉に王子が私を見下した。


「何ですって」

切れた私を仲間が4人がかりで押さえる。

他の参加者は王子に食って掛かる私を呆然と見ていた。

担任のガスコンもオロオロしている。相手はこの国の王子様だ。本来ならば私を注意するところだが、担任は私に入試の時に障壁で弾き飛ばされたので、私をも怖れていて注意できないのだ。



「それでは始めてください」

放送でアビゲイル先生の合図が全校に響く。





「よし、やるわよ」

私は王子たちを無視して問題のおいてある所に向かった。


この数学はお金命の商会令嬢ベッキーに任せる。

一人1問、5問解かねばならない。

ベッキーが問題を振り分けた。


私に渡された問題はややこしい計算式だったが、まだ何とか解ける。

私がなんとか解いた時はベッキーはヒルダを手伝っていた。


王子軍団はさすがに数学が得意らしく、あっさりクリアして次に向かい出す。


私達は遅れること1分で次に向かった。



次はなんと刺繍だった。


王子たち男性陣は大苦戦中だった。


それを見て私は先程の溜飲を下げた。が、私もベッキーも刺繍は壊滅的だった。でも、ハンナは得意だ。

王子軍団の公爵令嬢のプリシラと侯爵令嬢のレベッカも得意みたいだ。


しかし、ハンナはそのはるか上を行った。

ハンカチにハートマークを刺繍するというのが課題であり、ここは刺繍の出来を先生が得点としてカウントしてくれるのだ。

制限時間は10分。10分でどれだけ出来るかだ。

私は針で傷だらけになりながら、10分で何とかハートマークに見えるものを刺繍した。


うーん、何とかハートマークに見えるはずだ・・・・・


私は無理やりこじつけて刺繍の先生の所に持っていく。


先生の机にはひし形の刺繍があった。


「なにこれ。四角じゃない」

私はホッとして言った。これは私より酷い。


「悪かったな。刺繍なんてしたことがないんだから仕方がないだろう」

どうやらそれは王子のものだったらしい。私はしまったと思ったが、


「破壊女が俺を馬鹿にできるのか」

王子は私が触れてくれてほしくないことを言った。


「何ですって」

「ちょっとリア」

「不敬よ不敬」

切れた私をベッキーとハンナが必死に止める。


「ふんっ、何ならここで障壁を発動して失格になるのか」

王子が挑発する。


「ちょっと二人共止めなさい」

刺繍のアビゲイル先生が止める。


「2チームとも1分のプラスね」

容赦なくアビゲイル先生がマイナスポイントを付加してきた。


「えっ」

「そんな」

王子と私が叫んだが、判定は覆らなかった。


「おのれ破壊女め」

「おい、アリスター、これ以上はまずいぞ」

侯爵令息に第二王子は注意されていた。

我チームはハンナのハートマークが私みたいに形だけでなくて全面に真っ赤な糸で刺繍してあり、高得点を叩き出していた。

1分の追加はあったが、出発は王子たちと同時だった。



そして、次は演習場での対戦だった。模擬剣とあまり強くない魔術を使っての対戦だ。

大怪我や手足の欠損する事態になると大事になるので、使える魔術は限られていた。模擬剣にも防御魔術がかけられていて大怪我はしないようになっていた。でも、私の得意な障壁は制限されていない。


5対5の対戦に対して10名もの魔導師が審判についているのを見ても安全面に配慮しているのは明らかだった。


そして、我チームの対戦相手は王子軍団だった。

対戦時間は5分。その間に何人が円の中に残っていられるかだ。


ふっふっふ、王子共め、覚えていろよ。私の障壁は完璧なのだ。



私は皆に作戦を指示する。


「えっ!」

「そんな事するの?」

皆は私を白い目で見たが、ドラゴンの角がかかっているのだ。ここで第二王子達を叩き潰すしかない。私は作戦にも容赦がなかった。念には念を入れるのだ。


対戦する王子たちは模擬剣を構えた。

3人の男で女二人を守っている陣形だ。


「きゃー、王子様かっこいい」

「素敵・・・・」

こちらの陣からベッキーらが声を飛ばす。


「えっ、まあそれほどでも」

王子たちは一瞬謙遜して言った。


「褒められても容赦はしないぞ」

王子が前髪に触れて言う。


「えええ!いたいけな女の子に剣を向けられるのですか」

ベッキーがぶりっ子で叫んだ。


「えっ」

一瞬男たちに動揺が走る。そうコチラは可愛いかどうかは別にして見た目はか弱い女の子軍団なのだ。


「ちょっと殿下。何戸惑っているんですか」

怒ったレベッカが後ろから注意した。


でも、遅いのだ。


その瞬間ベッキーらが伏せた。


「えっ?」


間抜けな顔をした王子たちの目の前に、ベッキーらの頭上を凄まじい勢いで私が横に展開した障壁が通過する。


態勢を崩していた王子たちはひとたまりもなかった。


「キャっ」

女の令嬢二人には申し訳なかったが、弾き飛ばさしてもらう。魔術師が怪我するのは防いでくれるだろう。


想定通り、魔術師達が障壁を展開して5人が怪我をしないように受けてくれた。

開始から30秒。

5人全員が円から出たから、20分くらい彼らはここから動けなくなったはずだ。


「卑怯だぞ。破壊女!」

第二王子の負け犬の遠吠えは無視することにした。


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にんじんぶら下げられたリアは無敵です。

不敬は気にしません?!


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