第41話
3人グループの誰一人として教室にいない時間はとても平和なものだった。
みんなどこか穏やかな表情をしているし、華やかな笑い声が多く聞こえてきた。
あの3人は教室にいるだけで周りに重力をかけていたのだ。
私と多美子も他のクラスメートたちに混ざって大いに楽しんだ。
隣の旭とも普通に会話をしたし、このまま復縁できるかも、なんて淡い期待を抱いている。
問題はアプリだった。
一週間の使用がないと勝手に起動してしまうので、それはどうにかしなきゃいけない。
少しもったいないけど消してしまおうか。
帰宅後、自室でスマホを取り出したとき、ちょうどクラスのメッセージグループから連絡が入った。
珍しく先生本人からのメッセージだ。
なにか重要なことのようで私はすぐにメッセージを確認した。
《1年A組緊急連絡
大友真純さん、赤沼由希さん、角田夕里子さんの3人が今日亡くなりました。
大友真純さんと角田夕里子さんの葬儀は明日の午前11時から、○○会館で。
赤沼由希さんの葬儀は家族葬で執り行われます》
それは思ってもいない連絡だった。
すぐには信じられなくて何度も何度もメッセージを読み直した。
それでも文面は少しも変化しないし、それは淡々と3人が死んだということを伝えているばかりだった。
呆然としていると多美子からの着信があった。
「もしもし?」
『真純、先生からのメッセージ見た!?』
電話に出た途端多美子の焦った声が聞こえてきた。
スマホ片手に大きく目を見開いている様子が安易に想像できる。
「うん、見た……」
私はまだ呆然とした気分のまま返事をして、ベッドに腰を下ろす。
『3人共死んだって』
「信じられないよね」
『うん……』
そこで少しの間沈黙が降りてきた。
多美子が真剣になにか考えている雰囲気がしてくる。
だけど、その数秒後私達は同時にプッと吹き出して笑い始めていた。
「あはははは! 死んだってあの3人! もういないんだって!」
『だね! 私達開放されたんだね!』
「そうだよ多美子。もう彼氏を作っても友達と騒いでも誰も邪魔しに来ない」
『最高だよね! でも、由希だけどうして家族葬にしたんだろうね? 真純と夕里子は共同で葬儀を出すみたいなのに』
「そうなんだ」
私はようやく笑いが収まり、笑いすぎて出てきた涙を指先で拭った。
「たぶん、由希は自殺だからだよ」
『自殺?』
「うん。由希、知らない男にやられたって噂だったじゃん。あれ、本当のことだったんだよ」
じゃなきゃ由希まで死ぬのはおかしい。
他の2人は瀕死だったんだから。
とにかく3人共いなくなった。
もう自由なんだ。
明日さっそく旭を誘ってデートに行こう。
デートをOKしてくれたら、真純たちに脅されて別れを切り出したのだと説明して、もう1度やり直してもらえばいい。
旭は優しいから、きっと私の言うことを信じてくれる。
「じゃ、また明日ね」
私はそう言って電話を切ったのだった。
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