異世界転生して目覚めたらヤンデレの姉達に囲まれた

ミナト

第一章異世界転生

第1話現実世界の最後


 これは感じた事がある人が多いか分からないが、今人につけられていた。


「おいおい、もうすぐ家に着くのに、なんでこんな所までついてくるんだ」


 外に用事があり、用事が終わった頃は夜だったので、バスで家に帰る事にしたのだが。

 

 バスから降りてから、ずっと後をつけてくる音がしていたのだ、一度振り向こうとしたのだが、何故か振り向く事が出来ず、家の近くまで着いてしまった。


「もう家まで見えてきたのに、まさか入ってきたりしないよな」


 家に入られる恐怖があり、早足で家に向かうと、後をつけてくる音も早足になっていた。

 

 門を開け、ドアをすぐに開けると同時に振り向くことが出来たが、そこにいたのは金髪の若い女性だった。


「また来るね、人間君今度は逃げないでね」


 金髪の女性はニッコリ笑うと、すぐにドアを閉めて、母さん達に話そうとした。


「あらお帰り。もうすぐご飯出来るから、ソファでゆっくりしてて」


 母さんに言われた通り、ソファに座ると、さっきの金髪の女性の事を思い出していた。


「母さん、姉さんはまだ帰ってないの?」


「姉さんなら、もう少ししたら帰ってくるって連絡があったわよ」


「それなら、いいんだけどさ」


 それから母さんがご飯が出来たと言うとソファから離れて椅子に座ると、丁度姉さんが帰ってきた。


「お帰り姉さん、一つ聞きたいんだけど、家の周りに金髪の女性がいなかった」


「は……いなかったけど? 何あんた彼女でも出来たの」


 姉さんに頭を撫でられ、すぐに止めてと言うと、姉さんは頭から手を離すと、隣の椅子に座った。


「まあそんな金髪の子がいたら、夜でも目立つし、今度近所の人に聞いてあげようか」


「いや、いいよ。そんな気にする事でもなかったから」


「そうなの? まああんたなんかに寄ってくる女の子なんているわけないか」


 そう言って姉さんはご飯の唐揚げを頬張っていた。

 それにしても一体あの子は何者なんだろうか、そんな事を考えていると皿にあった唐揚げが全て消えていた。


 隣の姉さんを見ると、姉さんの皿にだけ、まだ唐揚げが残っていた。

 さっき見た時は残り一個だった唐揚げが四つに増えていた。


「姉さん聞きたい事があるんだけど」


「うん、何?」


「俺の唐揚げが減っている事についてなんだけど」


「あれ……食べたんじゃないの?」


「そんな早く食べるわけないだろ!! まだ一個しか食べてないよ」


「そんな怒んなくてもいいじゃん、たかが唐揚げ三つ取ったぐらいで」


 姉さんは耳を抑え、唐揚げを元の皿に戻してくれた。


「そんなに唐揚げを食べたら太るんじゃないの」


「ああ女の子にそんな事言うんだ。もう怒ったもんね」


 すると姉さんは皿を取り上げ、唐揚げを口の中に全て入れてしまった。


「ああ……俺の唐揚げが……」


「どうだみたか、これでも毎週三日はジムに通ってるからこれぐらいじゃ太らないよー」


 姉さんは威張っていた。

 だが唐揚げを失って何も考えられなくなっていた時に神が現れた。


「一体何やってるのよ、ほら私の唐揚げ半分分けてあげるから」


 母さんから唐揚げをもらい、ゆっくり食べていると、さっきまで威張っていた姉さんはもう既にリビングから消えていた。


「あれ、姉さんは」


「今お風呂入りに行ったよ、たく、あんたたち姉弟なんだから、もう少し仲良くなったらいいのに。なんでこう毎日喧嘩ばっかりなのよ」


「今日はあっちが悪いのは母さんも知ってるでしょ」


「それでも最初にあんな事を言ったあんたが悪い」


 母さんに分けてもらった唐揚げを頬張り、ご飯を食べ終わる頃に姉さんが風呂から上がってきた。


「ふぅーさっぱりした、何よ」


 姉さんと目が合い、姉さんの方から声をかけてきた。


「別に、上がってくるの待ってただけだし」


 立ち上がり、風呂場に行こうとした時に姉さんに阻まれた。


「あんたさ、もう少し優しくなった方がいいよ、いつまでもそんな態度じゃ、大人になったら嫌われるよ」


 姉さんに言われた事を頭の隅に入れ、風呂に入った、風呂から上がり、歯磨きを済ませると、部屋に行きベッドで寝た。


 いつの間にか朝になり、起きると学校に行く支度を始めた。


「あれ、これってもしかして遅刻か」


 ふと、時計を見ると、授業が始まるまで後十分の所だった。


「それならゆっくりしながら学校に行くか」


 今から急いでも遅刻は確定なので、それならゆっくり学校に行く事にした。


「姉さんも起こしてくれればいいものを」


 そんな事を呟き、家には誰もいないので、鍵を閉めて、学校に向かった、ゆっくり歩いていると、公園があり、そこでは小さな子が遊んでいた。


「そう言えば俺も昔は姉さんと一緒に、ここで遊んでいたな」


 そんな昔の事を思い出していると、大きな音が近づいてきた、振り向くとトラックがこの道を通ろうとしていた。


「危ないな、ちゃんとゆっくり運転しろよな」


 結構なスピードで通ろうとしていたので、横に避けると、公園から小さな子供が飛び出してきた、トラックは止まろうとせず、その子を引き殺す所だった。


「大丈夫か、怪我なんてないよな」


「う、うん」


 すぐに走り出し、子供を庇ったが、どうやら無事だったようだ。

 

 だがトラックは止まらずにそのまま走り去るのを見ると、急に頭がぐらぐら揺れていた。


「お兄ちゃんの方こそ、頭から血が出てるよ」


「そんな事気にしなくていいさ、俺は嫌われ者だからさ、ほらお母さん達が心配してるから早く行きな」


 すぐにお母さん達が気づき、近づいてきた。


「この子を助けてくれて、ありがとうございます」


「そんなお礼なんて、それじゃあ俺は学校に行かないと行けないんで」


 すぐに離れようとしたが、お母さんに止められた。


「そんな傷で学校に行けるわけないでしょ、もうすぐ救急車が来ると思うから」


 どうやらもう救急車を呼んでいてくれたらしい、だがもう自分でも気づいているんだ、これは助からないと、だから離れようとしたのに。


「お母さん救急車」


 助けた子が救急車の音に気づいたらしい、お母さんは子供を担ぎ救急車の音がした方向に走っていった。


「大丈夫か君」


 救急隊員に呼ばれると、その声がだんだんと遠くなっている事に気づいた、意識が遠くなり、気づいた時には知らない天井だった。


 横を向くと涙目の姉さんが手を握っていた。


「バカ! 学校に来ないと思ったら、なんで子供なんて助けてんのよ!」


「バカはないだろ、それに子供を助けるのは当然の事だろ」


「それでもあんたが助からないんじゃ、意味ないじゃない、さっきも助けた子の母親からお礼と心配されたんだからね」


「そっか、だったらこっちも後で挨拶しないとな」


 すると急に胸が苦しくなった。


「どうしたの? ゆう……ねえ!!」


 姉さんに体を揺らされ、どんどん胸が苦しくなっていき胸を抑えると、姉さんの声がした。


「誰か、来てくださいゆうが」


 姉さんの声を聞くのも最後かもしれないので、最後の力で姉さんの体を抱く。


「姉さんずっと大好きだった」


 最後に微笑み、体の力が抜けていくのを感じ、意識が途絶えた。

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