都市圏のファンタジア

萎びたポテト

都市圏〜開闢〜

終わる、始まる〜Dramático que es 〜

 一般的なファンタジーの最大の目的。

 それは、魔王を倒す事である。

 数多のモンスターの亡骸を踏み越えたその先に魔王との激戦が待っている。

 しかし、人々は魔王を倒す前に異世界との邂逅を果たしてしまった。


[次元衝突]

 この一件は、その言葉で世界の歴史に刻まれることになった。


 そこから日本は...いや世界はファンタジー世界と混ざってしまった。

 陸海空のあらゆるところからUMA(未確認生命体)と呼ばれていたモンスターがどこからか出現したのだ。

 現実と非現実が混在する中、人類は闘うことを決めた。しかしモンスター達の圧倒的な力を前に軍事力というのは小石程度にしか及ばず多くの犠牲が払われた。


 一方のモンスター達は現代世界への適応が早かった。変な薬などを売りつけて成金になったゴブリン。土木工事に勤しむオーク。金を稼ぐ為に自らの体を売るエルフ達。

 要するに適応していくうちに人間と同じように腐っていったのだ……

 そこから約何年後だろうか人類とモンスターは共存し合い互いに文明を再建した。



 それは建前上の事だが。





 真夏の曇天の中、環状線は自動車で埋まっていた。


車は不気味な程に整然とならんでいる。


「はぁ…はぁ…」


 その行列から遡るように一人の少年が歩いていた。


どのくらい歩いたのだろうか。足元がふらついている。歩く気力はもうない。


「はぁ…ゲホッ」


湿った空気に腐敗した臭いが混ざり漂う。


少年が後ろを向くと果てしなく続く道路が蛇の様にうねっていた。

少年はそこで力尽きた。


 半年後

 季節は一転して肌寒くなった冬の入り口……

規制線の張られた環状線の上に、二人の刑事が立っていた。


 環状線には誰もいない車が——当時渋滞でもあったのだろうか——長い列を作ってそのまま放置されていた。

多くの警察官が道路の上にいた。


「ここに生存者がいるって言われてもなぁ……」


 茶色いコートを着た太った老刑事がふてぶてしそうな顔をしながらボヤく。


「まぁまぁ…通報が来ましたから、仕方ないでしょう」


 いかにも誠実そうな若い刑事が宥める様に言う。


「だがここは5か月も閉鎖されていたんだぞ。人がいるなんてありえないだろう」


浅く息を吐きながら愚痴を溢す太った刑事に若い刑事は苦笑する。


「それについては自分もいたずらと思ってます。でも道路上の公衆電話から来たんですよ?これで逆に誰もいなかった方が怖いですって……」


 肩を竦めながら若い刑事は捜索を続ける

 そのまま二人が道路を歩いていると、目の前に少年が倒れていた。


 驚愕する二人。

「子供?馬鹿な!!」

 その状況は少年が普通の場所で倒れれば、別に大した事ないモノだった。

 だが、ここは約半年以上も閉鎖された環状線。

 そんな場所に子供が倒れているはずがない。


「まだ息があります!急いで病院に連絡を……!!」

 ましてや、それでも生きているという事などありえない。


しばらくして救急車が到着し、その中に少年は運び込まれる。


「まさか、ホントに生存者がいたとは…」

「ええ、それもまさか年端もいかない少年だなんて……」

 二人はまるで狐に摘まれたかのような感覚に陥っていた。

 まるで、この状況が全部幻覚であるかのように。


  その後、少年の容態は回復し、無事退院することが出来た。

両親がいないという事なので少年は親族へと引き取られていった。

 

  封鎖された環状線に謎の少年がいたということが都市伝説になった。


 

 余談だが、少年が何故そこにいたのか、何故一人で生存できていたのかという疑問は未だに解決できてない。









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