11.超兵器、電磁砲

 話はもどり、涼真と彩夏が王宮から魔王迎撃に飛び出していた――――。


 二人は王都の上空を飛び、岩山に築いておいた迎撃拠点にやってくる。ここからなら魔王も見通せるだろう。


「涼ちゃん! ダメ! シアン様に電話がつながらないわ!」

 彩夏が泣きそうな声を出す。

「僕らのこと見ててくれてるはずなのに、どうしちゃったのかな?」

「ど、ど、ど、どうしよう!?」

 彩夏は涙目で涼真を見る。

 核兵器でも倒しきれない魔王。テロリストが神の力を使って何かやったに違いない。これはシアンに来てもらわないとどうしようもないレベルだ。しかし、魔王は今も迫ってきている。自分達だけでもできる事をやるしかない。

 涼真は大きく深呼吸をすると、ニコッと笑って彩夏の髪をなでながら言った。

「大丈夫、必ずやってきてくれるよ。それまでにできる事をやっておこう。研修でやった通りにこいつで魔王を撃墜だ。そもそも骸骨になったという事は攻撃が効いてるってことだよ」

 そう言ってブルーシートのかけられた巨大な砲門を指さした。

「う、うん……」

 不安そうにうつむく彩夏。

「僕は勇者だ。最後には素敵な結末になるんだよ。信じて」

 涼真はそっと彩夏にハグをする。

「そ、そうよね……。分かったわ」

 顔を上げ、少し引きつった笑顔を見せる彩夏。

 涼真はポンポンと彩夏の肩を叩くと、

「よーいしょ!」

 と、声をかけながらブルーシートをグイッと引っ張った。


 露わになる巨大な砲台。十メートルはあろうかと言う金属の角柱でできた銃身は、傾いてきたオレンジの太陽の光を浴びて鈍く輝く。

 続いて隣に設置された小屋くらいの大きさを持つ灰色の蓄電装置から、長く太いケーブルを取り出し、砲台に繋げた。

 涼真はコントロール席に飛び乗ってメインスイッチを押す。

 砲台の計器類が次々と点灯し、ブゥン! と音を立てて起動する。

 そう、これは電磁砲レールガン、砲弾をマッハ二〇の速度で射出する世界最強の砲台だった。この射出速度は一般の大砲の三倍以上。魔王の撃墜にはうってつけである。本当はもう一度核兵器を使いたかったが魔王はすでに人里の上を飛んでいる。さすがに使う訳にはいかなかった。


 彩夏がスマホに出した手順書を見ながら発電装置のスイッチを入れる。

「ジェネレーター起動!」

 ブルン! ボッボッボボボボボ!

 重低音が響き渡り、発電機が回りだす。

 すると、蓄電装置からキュイ――――ン! という高周波が響き渡った。

「電圧ヨシ! スタビライザーヨシ!」

 彩夏が砲台横のモニターを見ながらチェックをしていく。


 涼真もモニターを起動し、発射準備に入る。

「砲弾ヨシ! 射弾観測機器ヨシ! ターゲットサーチ!」

 手際よく発射準備が整えられ、砲台のモニターには、黒い点がもやの向こうに揺れ動く様が映った。

「ターゲット確認……。距離約百キロ。風速解析開始!」

 一瞬レーザー光がまぶしく閃光を放ち、ターゲットまでの空気の流れを解析していく。これにより風の影響を予測してキャンセルできるのだ。


 ビィ――――! ビィ――――!

 警告音が鳴り響き、赤い警告灯があちこちでキラキラと瞬き、危険を知らせる。

 涼真は風の影響で揺れて見える魔王に慎重に照準を合わせる。そして、発射ボタンにかぶさったプラスチックカバーを外し、後ろで心配そうに見ている彩夏に叫んだ。

「下がって、耳を押さえてて! 撃つよ!」

 彩夏は岩陰に駆けこんで目をギュッとつぶり、両手で耳を押さえた。

 涼真は大きく息をつくと、

 「ファイヤー」

 と、叫びながら赤く光るボタンをガチっと押し込んだ。

 BANG!

 ものすごい衝撃音が岩山全体に響き渡り、激しいオレンジのプラズマが吹き上がると、砲身はまるで炎上したかのように美しく煌めいた。

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