第18話
元カノから笑みが完全に消え去り、たった一言の「誰から聞いた?」にとても強い殺気、そして一瞬にして恐怖に俺を包んだ。元カノは玄関のドアを厳重に閉じ、逃がさないように体制を整え始めた。
鍵を閉め終わった後にドアチェーンでロックをし、数秒では逃げれないようになりカーテンを全て閉じ、元カノは言った。
「ねぇ。誰から聞いたの?」
「言わねぇ」
「そう。なら拷問してでも吐かせるね」
「本当に浮気してたんだな?」
「……」
俺の言葉にぴくぴくと耳を動かし、口をカタカタ震わせながら睨む。そんな姿に本当にあのボイスレコーダーは本当だったんだと、心の中ではAVなどを録音したんじゃないかと思っていたが、そんな想いも散っていった。
「ねぇ。誰に聞いたのって言ってるじゃん。昔からそうだよね。なんか聞いたら都合が悪くなると黙るくせがある」
「お前が俺の何を知ってるんだ」
「知ってるよ。俺くんの好きなものとか好きな女の子のタイプとか。いやそれよりももっと知ってるのは俺くんの……」
元カノは先程までこちらを睨んでいた目が、次はとろんとした目に変わり、頬を赤らめた。
「私は……!」
「もうそれ以上ガタガタ抜かすと殺すぞ……!」
「え?」
「殺すって言ってんだ。今なら間に合う。自首しろ」
「自首って何が。は?」
「この人間たちを殺そうとしてんだろ」
「こいつらは家畜。私の血肉になり栄養になり、そして私と俺くんの愛の巣の形にするの」
元カノは次元を超えて、もはやアニメの世界のようなことを言い始めていた。そんな狂った子に恋していたとは自分が情けなくなってしまった。
そして俺は元カノを殺すためにも油断をさせようと言った。
「お前がそこまで愛してくれてたなんて知らなかったよ」
「……俺くん?」
「俺は。お前のこと誤解してたようだ」
「……?!」
俺は元カノにキスをし、油断しているところを刺そうと懐にナイフを仕舞っていた。
すると元カノは抵抗もしなければ、むしろ絡ませてくる。そしてとろんとした目が完全にイってしまい気絶に近い状態になっていた。
「お、おい?」
「……俺くんの久々の唾液!」
元カノは深く息を吸い始め、俺の服を掴み匂いを嗅ぎまくった後にまた深く息を吸う。それをローテーションのように数分間繰り返した後に言った。
「……俺くん。私の秘密もうひとつ言うね?」
「な、なんだよ」
「……私を殺そうとしてるのバレバレだし、今日実は俺くんを殺そうと思ってたんだ」
「は?」
「だから私の唇には遅効性の毒が塗ってあるの」
「……ふざけるな!」
すると本当に遅効性なのか、目の前が急に暗くなっていく。
「ふふ、1度おやすみ」
「……てめ……ぇ……」
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