第17話

「何言ってるの当たり前じゃん」


 俺の血が繋がっているのかという問いに対して、妹は笑顔で慌てるふりも何も無く、血が繋がっていると言った。俺はどうにも納得は出来なかったがこれ以上踏み込めば、妹、そして両親にも影響が出てしまうと思い、辞めた。


 そして俺は最後に妹に言った。


「これ以上お前が俺の事情に首を突っ込んだら分かるよな?」

「分からないけど、とりあえずお兄ちゃんが地獄を見たらいいと思うよ。私が止めているのにそれ以上突っ込むならね」

「……今ここで事実を話したらどうだ。先輩に対してのあの無礼さを謝って、私が思っていることは何も無かったです。と」

「……お兄ちゃんさ、私のこと毛嫌いしてるのかもしれないけど。私はお兄ちゃんと結婚したいから、お兄ちゃんのために我慢してやってるんだよ?」


 妹はそう言うと、何度も何度も切ったであろう手首の傷を見せつけてくる。


「お前……」

「私はこれで我慢できるけど、お兄ちゃんはあの女が隠していることを知ったら私よりも酷いことになるかもね」


 妹は鋭い目付きで俺を睨みながら言った。


 だが、俺はそれでも先輩を信じたかった。妹が何を隠しているのか、何を知っているのかは考えないようにして。


 そして、妹の部屋から出ようとした瞬間。妹は俺の服を掴んだ。


「お兄ちゃん。最後の忠告ね。これ以上あの女に踏み込めば地獄を見るよ」

「……言ってろ」

「あっそ……」


 俺は妹を冷たく突き放した。


 ☆☆☆


 翌日のこと。俺は先輩とデートの約束があったため、服を着替えて家を出る。妹は普段ならここで「行くな」と止めるはずが、今日は来なかった。それだけ昨日の俺との会話が身に染みたのだと思い考えないようにした。


 約束の場所に着くと、昨日よりもガッツリとメイクをして、髪色も本来なら黒だったはずが真緑になり、服装も露出の激しいものになっていた。


「先輩……?」

「おはっ!」

「……すみません。人間違いですね」


 俺は先輩の変わりようを受け止められず、自宅へと引き帰ろうとすると先輩は俺の服の袖を掴みながら言った。


「どこ行くの?」

「か、帰ります」

「ねぇー。なんで?」

「……先輩じゃないでしょ。貴方」

「何言ってんの?」


 俺は現実を見ないように、そして変わり果てた先輩の姿を見ないように目を背けた。

 これが妹の言う隠していた事実なのだろうかと考えていると、先輩は俺の顔を強引に覗き込む。


「私だよ。分かった?」

「……」

「ね。行こっ!」


 妹の隠していた事実が、このギャルギャルしい格好を普段からしているということにしておいて、俺は先輩に負け、着いて行った。


「私ね、ここ行きたかったんだ〜!」


 連れてこられたのは女性物の服が沢山並ぶレディース専門の服屋だった。俺は周りが女性だらけだったため、先輩の後ろにコソコソ着いていきながら、先輩に対して早く帰ろうと急かしていた。


「待ってよ。もう少しで買い物終わるからね!」

「……はい」


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