第9話 そっと触れたら壊れた扉

「まだ直し始めてないみたいだね」

「本当だ。開かないね」

 その頃、ミナモの本棚の部屋に来たアカリ達。ヒカリが、ドアノブをガチャガチャと動かしてみても、扉は開かず、ミナモがはぁ。とため息をついた

「時間かかるのかなぁ」

「そういえば、お父さんが扉を通る魔術使えばいけるかもって言ってたよ」

「すり抜ける魔術ですか?使える人はいるとは思いますが、僕は……」

 アカリの提案に、ミナモがあまり浮かない表情で返事をする

「まあ、とりあえずやってみれば?記念になるよ」

「記念かはともかく頑張ってみようかな」

 アカリに返事をしていると、ふとカグヤと目が合って、カグヤがはぁ。とため息をついた

「万が一、術に失敗しても大丈夫と思う」

「カグヤさんが大丈夫と言うなら……」

 ふぅ。と一つ深呼吸をして、モナカをぎゅっと抱きしめ部屋の扉に触れると、モナカが本へと姿を変えてミナモが本のページを開く。すると本から光が溢れだしたその瞬間、ミナモが扉に触れてた場所からピシッと音が聞こえ、ミナモが驚きその手を離し少し扉から離れるとすぐガラガラと音をたてて扉が崩れ落ちてしまった



「あーあ……。壊しちゃったね。片付け大変だ……」

「片付けどころじゃないと思うけど……」

 ミナモが壊れた扉にあたふたとうろたえる側で、アカリがそーっと部屋の中を覗き込んだ

「部屋の中に入れる?」

「たぶん……」

 小さな瓦礫がパラパラと落ちる中、そーっと部屋の中に入っていくミナモ。本から元に戻ったモナカも不安そうな顔で本棚の部屋へと入っていく


「本棚は無事だね」

 部屋の中を見渡し本棚を確認していくアカリ達。本棚は変わりない様子に、ミナモとモナカがホッと胸を撫で下ろしている

「入れたなら、ルカの本棚に置いてた本も持って来れば良かったね」

「まあ、入れたというのかな」

 アカリの言葉にルカが少し呆れたように返事をしていると物音が聞こえ駆けつけてきた人達がミナモの部屋の前に来ていた


「ミナモさん!これはどうしたんですか!」

「えーと……部屋に入ろうとして、ちょっと術を失敗しちゃって……」

 ちょうどミナモの部屋の扉を直すため様子を見に来た女性が起こった顔をしてミナモに話しかけると、説明が上手く出来ずにミナモが苦笑いで返事をすると、女性がはぁ。と困ったようにため息をついた

「私達が片付けるので皆さんは出てください」

「……はい」

 ミナモがしょんぼりと返事をすると、アカリ達も少し落ち込んだ顔をして部屋を出ようと歩きだす

「ミナモ、ごめんね」

「いえ、失敗した僕が悪いので……」

 アカリにヒソヒソと小声で話しかけられて、ミナモが笑って答えていると、本棚を見つめ動かないカグヤを見つけた

「カグヤさん、行きましょ」

 そう声をかけながらカグヤの隣に駆け寄っていく

「ミナモ、本はどうだ?」

「本ですか?特に変わりありませんが……」

 と、カグヤの質問に首をかしげながら答えると、ジーっとミナモとモナカを見つめだしたカグヤ。その視線に戸惑っていると、カグヤがミナモの頭にポンッと優しく手を置いた

「そうか。それならいいが、今日はもうモナカと一緒にゆっくり休むべきだな」

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