27.私もエルフの里行きたいわ。今度はもっとスゴイのパクりましょ?

 魔角オルペルを倒し森を進むと、石でできたほこらへ着いた。

 このほこらはエルフの泉に行ける光の門だ。


 前より石が散らかっている気がする。

 魔王軍に気づかれたんだろうか?


 周囲をうろうろしていたブラッドスカイさん。


「で、どうやってエルフの泉に行けるんだ?

 」

「待ちます。前はエルフ幼女がほこらを光らせてくれて、エルフの泉へ連れて行ってくれんたんですよ」


 前は偶然エルフの泉に行けたから、待つしかないだろうな。

 なんとかして、俺たちが来たことを知らせれればいいんだけど。

「ふーん」とブラッドスカイさんは言い、


「じゃあ、ここで休憩だ。だが、魔王軍が近くにいるからあまり油断するなよ?」


 ブラッドスカイさんは両手につけている黒い爪付き鉄甲を外し、布でふきはじめる。

 爪付き鉄甲は脂でギットギトだ。ここに来るまでにたくさん魔物を切り刻んだからな。


 アリアはその場に荷物を下ろす。

 魔角オルペルへ強力な魔法を使ったのに疲れている様子はない。

 なにげにアリアって、体力も魔力も俺より上で、俺たちの中で一番強いんじゃないか?

 今度ピンチの時は全力でアリアに頼ろう。


 俺は背負っていたリリアンを下ろして寝かす。

 魔角オルペルを倒した後、眠そうなリリアンへ「自分で歩け」って10回行ったけど、10回断られたので……背負った。


 だけど、たまに本当は起きてることあるよな……

 俺は下ろしたリリアンをツンツンしてみる。ドコとは言えないがツンツンしてみる。


「うっ……」


 反応がある。

 やっぱり起きてんじゃねぇか?

 もう少しツンツンすると。ガバリと体を起こすリリアン。


「ちょっ! 何してるんですか!?」

「え? なんでもねーよ」

「トボけないでください。エッチなことしてましたよね?」

「エッチなこと? どんなことだ?」

「こういうのですよ!」


 リリアンは俺の胸やお尻や足をベタベタ触ってくる。

 雑な触りかた。

 これは、指導が必要だ。


「違うって。なんだその手つきは! こうすんだよ」


 俺は息のかかる距離にいるリリアンの胸をつかもうとすると、


「ちょっと! 目の前でイチャつかないでよ!」


 声がする方を見ると、ほこらが光っていて、1人の耳が長い女の子が立っていた。

 エルフ幼女だ。名前は……なんだっけ?


 ほこらの光の門からもう一人、耳の長い女の人が出てくる。

 エルフ幼女のお世話をしている……誰だっけ?


「お久しぶりです。エルク様。リリアン様。キカグラウィです。お元気そうでなによりです」


 微笑むキカグラウィさん。

 エルフ幼女はニカッと笑っている。

 キカグラウィさんは俺たちを見て。


「前にいらした、ハティ様はどちらでしょうか?」

「あー。ちょっと色々ありまして、今はいないんですよ。でも、すぐ戻ってくるのでまた会いに来ますよ」

「そうですか。ハティ様もわが姫をお救いいただいた恩人ですので、いつでもいらしてください」

「はい。絶対に来ますね。で、あっちの鉄甲兄さんがブラッドスカイさんで、こっちのプリーストがアリアだよ」


 ブラッドスカイさんは前に出る。


「俺は夜明けのルシファー教団で特別戦技隊をしている。今日はこいつらの護衛だ」

「わたくしはただのプリーストです。魔法に詳しいエルフに会えて光栄です」


「よろしくお願いいたします」とお辞儀をするキカグラウィさん。

 顔を上げた時、真剣な目になる。


「それにしても、ここには強い魔王軍がいたはずなのですが、何か知りませんか?」

「それなら、このアリアが倒しましたよ」

「いえ。わたくしはエルクさんやブラッドスカイ様の援護をしただけです」


 アリアがクールで謙虚に答える。

 キカグラウィさんは「なんと!」と言い、


「ありがとうございます。実は、魔王軍がこの光の門の周囲にいたため大変不便な暮らしをしておりました。わが王が感謝を伝えたいと申していまして、城までご同行をお願いできませんか?」


 エルフの王? すごそうな人だ。

 それにハティの奴隷契約について聞きたいし、なんとしても行きたい。


「はい。行きます。いいよな?」

「はい。わたくしは構いません」

「また魔道具を貰えるんですね? 私は前に貰えなかった透明マントが欲しいです」

「俺も行かせてもらうぜ」


 エルフ幼女がにっこり笑う。


「やった。今度はたくさんお話しできるね! パパとのお話しが終わったら私の部屋に遊びにきてよね。お兄ちゃん」

「パパ?」

「うん。パパはエルフの王様してるんだよ。あとね、お姉ちゃんは大人でお名前あるし、とってもキレイなんだよ。すっごいでしょ?」


 王様の娘? このエルフ幼女ってエルフの姫だったのか。

 しかも、名前が無い?


「えーっと、姫ちゃん? 名前無いの?」

「うん。わたしは子どもだからまだお名前無いの。でも、大人になったらお名前貰えるし、結婚もできるんだよ。お兄ちゃん! 大人になったらわたしと結婚しようよ」


 エルフの姫と結婚……

 エルフの世界は魔物のいない楽園らしい。


 ……いいかもしれない!


「よし! 姫ちゃん。結婚し痛っ!」

「はいはーい。エルフの城に行きますよ!」


 リリアンが俺の尻をつねりながら割って入る。

 文句を言おうとリリアンを見ると……にらまれた。怖い。


 ブラッドスカイさんも俺を急かす。


「ブラックナイトメアの言う通りだ。さっさと行こう」


 姫ちゃんとの堕落しきったほのぼのライフの話をする空気ではなくなった。

 仕方なく「お願いします」とキカグラウィさんへ伝える。

「ご案内します」とキカグラウィさんは微笑み、エルフの城へ行くことになった。




 俺がリリアンにつねられたお尻をさすっていると、


「ほほー。そういう手つきでお尻を触ればいいですね」


 新しい発見をしたように、ニヤリと笑っているリリアン。

 次にリリアンを背負った時は、起きてもしょうがないくらい強めに揉んでやろうと決めた。

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