第34話 盗賊との戦い

 リリニアはブラッドに告げる。


「ラッド、もうじき村に着くよ」 


「ああそうだな。その木を抜けたらあと1分て所だろう 」


「よく知ってるね!」


「言ったろ?俺はナイーブ村の出身者だって。今も村長はダルマのじいさんか?」


「うん。あのおじいちゃんは今も元気よ!」


「そうか 」


 ブラッドは後ろを振り返った。


「みんな気合い入れていくぞ!もう村に着くからな 」


 4人が一斉に返事をする。今の隊型はブラッドを先頭に V の字体隊形である 。


 村の中が見えてきたが、所々煙りがくすぶっているが、大きな被後は見えない。


 村の入り口付近に 数人の死体があったが、それほど多くの者が倒れてはいない。


「くそっ!何人かやられているな」


 ブラッドはリリニアの目を手で隠した。


「無理に見なくていいぞ」


「私、大丈夫だから。目を背けないよ。あっ。ゴロタのお父さんが・・・」


「リリニアは強いな。 よしこのまま中心部まで一気に行くぞ !」


「あいよー」


 4人は各々面を被り、返事をした。ブラッドを戦闘に奥に駆けて行く。


 町に唯一ある教会の扉を無理やりこじ開けようとしている姿が見えた。どうやら村人は教会に立て籠もっているというのは本当らしい。


 ブラッドはおもむろに槍に握り投擲しようと構える。魔法の射程距離ではないが槍は届く。


「ラッド、どこから出したの?」


「後で説明してやるよ。今は黙ってみてろ」


 ふんっ!といきみ、思いっきり槍を投げると扉を開けようとしている中心の者の頭に刺さり、そのまま扉に串刺しになる 。


 なんだと!と騒ぎになる。


「突撃するぞ!いっけー」


 うららうらら!


 ブラッドの一言に4人が雄叫びを上げる。


 盗賊達がざわめく。


「おい、兵士が来たぞ?」


「高々5騎じゃねえか!蹴散らせ!こちとら100人はいるんだぞ」


 そして戦いが繰り広げられた。


 まだ距離があるので直接剣による交戦には至っていないが、ブラッドは槍を投げて2人を屠った後、魔法の射程距離に入るとかなり強く魔力を込め、ファイヤーボールを教会の前にある広場にいる盗賊の中心部に投げた。そうするとドゴーンという大きな音と爆裂と共に中心が吹き飛び燃え始めた。そして半分以上が吹っ飛ばされた様を見てす、凄いとリリニアは叫ぶ。


 ブラッドはアイスアローやボールを どんどん投射する。


 時に剣の一振りで、首チョンパを決め盗賊を駆逐していく。


「討ち漏らしを頼む!」


 盗賊達も騒ぎ始めた。ややべーぞこいつと。


「スキルを2つ持ってやがるぞ!聞いてねえぞ?」


 一斉に逃げ始めた。


「す、凄い!私、 魔法2つも放てる人って初めて見たかも」


 リリニアも盗賊にストーンショットやストーンアローを放つが、殺すには至っていない。まだ体も小さく、年端もいかないため牽制や目潰し程度にしかならない。


「無理をしなくていいぞ。お前の年だとまだ魔力量が限られているだろう。身を守る為に温存しておけ。余裕があるなら牽制などの援護をしてくれると助かる」


「うん。分かった!ラットって強いのね!」


「だから安心しろ。俺はともかくとして、あの4人は共に死地をくぐり抜けてきた歴戦の猛者達ばかりだ。あいつらは強いぞ。


 頃合いと見ると2人と2人に分かれて4人は逃げる盗賊を追い始めた。


 ブラッドは教会の入り口を確保しに行った。ただし、レイガルドにリリニアのみを乗せて、自身は徒歩になる。そしてレイガルドに指示を出した。


「この小さきレディーを守ってやってくれ」


 レイガルドが短く嘶き駆け出した。


 いっちょうやりますかと肩を回し、ブラッドの無双が始まった 。


 程なくして動く事の出来る盗賊の気配がなくなった。怪我をして動けない者が数名いるのみだ。


 4人に生きている奴は捕えておいてくれとお願いをした。


 そしてリリニアが教会の扉を開けに行った。


「よし!俺は馬車の方が気になるからそちらへ向かう。後で合流しよう。皆は村を頼む」


 そしてブラッドはレイガルドに跨り馬車の方に駆けて行く。そうすると村の入り口付近で戦っている姿があった。女だけじゃねえか!皆べっぴん揃いだ。 一人位かっさらっていこうぜ。 等と聞こえてきた。


 ニスティーが槍でなんとか対峙しているが、相手の方が技量が上だ。


 マリーナが接近してくる者への対処をし、ダガーで斬りつけるが、マリーナの本領は暗殺スキルだ。 多少の近接戦闘もできるが、基本的に不意を突いて背後から首を切り裂く、そういうものが得意である。一対一ではまず遅れを取ることはないが乱戦には弱い。


 10人ぐらいに囲まれていて、 タミアが何とか2人ほど矢で倒していたが、近付かれてしまい、弓を放てなくなっていた。


 そしてアリアナも魔法を何やら使っている。

 盗賊は2人程その場で動けずにいた。


 蹲ってはいるが、倒すには至っていなかった。 グラビティか!と ブラッドは唸った。


 妹の方は重力魔法を使えるらしい。 この歳でもスキルが使えるのは凄いなと素直にそう思いつつ、ブラッドは槍を投げてニスティとマリーナに肉薄している奴を串刺しにした。


 そこからはあっという間に駆逐していった。

 ブラッドが駆け付ると見るや、 アリアナが駆け寄ってきた。


「おじさん強いのね!女の奴隷を囲っている屑かと思ったけど、そうじゃないのね?」


「こいつらには手を出しちゃいないぞ。それに俺はまだ24歳だ。リリニアによるとお前の母ちゃんと同じ歳だそうじゃないか。お前の母ちゃんがおばさんって言われて欲しいか?」


 アリアナは横に首を振る。


「じゃあお兄さんと言え。もしくはブラッドだ」


「ラット?」


「まあそれでもいい」


 面越しだと上手く聞こえなかったようだ。


「村の中の盗賊を倒しきったから、村の中に入るぞ!」


 そうして再び3人は馬車の人となり、アリアナはブラッドの前に乗り、村の中心部に向かうのであった。

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