第4話 身支度
冒険者向けの装備品を売っている店に来た。
「いらっしゃいませ」
「こいつが冒険者をするのに必要な服や靴を見繕ってくれ。俺は自分のを見ているから頼む」
「お連れ様の体格ですと女性用のしか有りませんが、宜しいでしょうか?」
「何でも構わんが、実用なのを選んでくれ。下着もあるならそれもだ。予備の服も欲しいから2式揃えてくれ。金貨20枚もあれば足るよな?その範囲で選んで、袋に入れて持たせてくれ」
「畏まりました」
ブラッドはナイフや自分の冒険者用の丈夫な服を選んだ。今はシャツ等を着ているが、着替えを手伝える者を確保したから、機能性を優先させる事にした。靴もそうだ。
一通り買うと次に武器屋に寄り、軽装の革鎧と左腕に装着する小型の盾を選んだ。それと片手剣だ。また、タミア用に護身用のコンバットナイフ、弓と矢、矢筒を買い揃えた。
ブラッドはタミアを見たがしんどそうだったので、まあ今日はこんなもんかな?となり買い物を切り上げて宿に向かった。
「今日はもう宿で休むぞ」
ただハイとしか言わない。
タミアは不思議に思った。荷物を寄越せと言われ、買い物を渡すと消え失せたのだ。
ブラッドはタミアが戸惑っていると分かった。気が回らないので、全て後手だ。
「後で話すから、今は聞くな」
宿に着くと女将さんを探した。奴隷から開放された後ずっと泊まっている森の泉亭だ。
「ブラッドさん、お帰りなさい。あら奴隷を買ったのかい?」
「悪いが2人部屋に移りたい。空きはあるよな?」
「おや?奴隷を同じ部屋でねかせるのかい?性奴隷じゃないんだろ?」
「俺の着替えとか手伝わさせるのに買ったんだ。同じ部屋にいてもらわないと意味がないぞ。部屋代はちゃんと2人分払うから用意してくれ」
「そうかい。そういう事ならいいが、そうさね、この子は子供料金でいいよ」
「小さい方の風呂は使えるか?」
「今なら空いているよ」
「クリーンで綺麗にはしたが、どうやらこいつはずっと風呂に入っていないようだ。だから風呂に入って疲れを取り、休ませてやりたい」
「あらあら、見た目によらず優しいのね」
「余計なお世話だ。これから俺の世話をしてもらうのに早々にぶっ倒れられたら困るだろ?」
「はいはい。そういう事にしておくよ。その間に部屋を用意しとくからお前さんも入ってきたらどうだい?」
「分かった。そうさせてもらうよ」
ブラッドは戸惑っているタミアを連れて風呂場に行き、札を使用中に変えた。
小浴場は4、5人が入れるが、今の時間だと30分が限度だが、貸し切りにできるので貸し切り中を示すように使用中の札を立て、30分用の砂時計をひっくり返しておけば他の者が入ってこない。30分なのは砂時計の時間だ。
「服を脱ぐのを手伝ってくれ」
震えているタミアは、ブラッドに言われるがままに服を脱がすのを手伝った。そこには全身傷だらけでガタイのいい身体があった。タミアはあっ!と唸った。筋骨隆々で逞しい体に驚き、顔を真っ赤にしていた。
「タオルはそこにあるから、体を洗うのと顔を拭くので2枚は持ってこい」
ブラッドはタミアが脱いで入って来るの持たず、1人だけとっととタオルを持って浴室に入っていった」
早速タオルに石鹸を付けて体を洗い出した。そうしているとタミアが入ってきたのが分かる。
「じゃあ俺の背中と右腕を洗ってくれ。左手がこんなだから洗えないからな。頼むぞ」
タミアが震えながらタオルを手に取りブラッドを洗って行く。ブラッドは洗い終わったと思うとタミアに背中を向かせた。
「よし背中を向け。お前の体を確認する」
恐る恐る背中を向いているような感じで、ブラッドはタオルを手に取り、その小さな背中を洗ってやった。
「やはり痩せ過ぎているな。心配するな、前は自分で洗え。頼まれてもやらんぞ。言っとくが俺には衆道の気はないし、尻の穴も守り通したからな」
「は、はい」
ほっとしたように唸っていた。
ブラッドはお湯を掛け、石鹸を洗い流してから湯船に入っていった。
小さい方の風呂場とはいえ、大人が3、4人足を伸ばして一緒に入れる位の大きさがある。そうこの宿は温泉宿なのだ。本来この世界の宿に風呂場はない。こういった温泉街なら話は別だ。
「タミア、お前は何歳だ」
「はい、14歳です」
ブラッドは驚いた。てっきり10歳位かと思っていたのだ。どうやら碌な食べ物を与えられず、成長を阻害されている、そう思ったのだ。
「そうか。もう少し若いと思ったが、今迄碌なものを食べさせてもらっていないんだろ?ちゃんと食べてもう少し大きくなれ。まあ体が小さいのは仕方がないが、小さいのは小さいのでその小ささが役に立つ事もある。ただ体力だけは付けるんだ」
「は、はい」
タミアはおどおどしながら返事をした。湯気でよくみえないし、見るつもりもなかったが、体を洗ってから、恐る恐るといった感じでタミアが湯船に恥ずかしそうに入ってきたのが分かる。余程前を見られたくないのか、ブラッドの横に座ると斜めを向いた。
「俺が怖いか?隠さなくてもいいんだ。正直に答えろ」
「は、はい。その、殴られるのではないのかと、こ、怖いです」
「やはりそうだよな。見た目か?話し方か?」
「その、話し方です。顔は慣れればそうでもないのですが、その、話し方が怖いです」
「やはりそうか。娼館の女は俺の体が鍛えられていて素敵とか言うが、除隊した後酒場のネエチャンとかを口説こうにも皆怖がるんだ」
「た、確かに古傷が有りますが、鍛えられていて女性好みの体格だと思いますが、その、体の大きさと喋り方も堅いので町のお姉さんは怖がるのだと思います」
「お前、俺の事を怖がっている割には遠慮なく指摘するな。誤解するな。褒めているんだ。俺はこんなだから誤解されるんだろうな。心配すんな。尻の穴を掘ったりなんかしないし、俺は大人の女が好きなんだ。知っているとは思うが、この国は戦奴のイチモツをちょん切りやがる。だから俺は女とやれないんだ。勿論男の子を侍らす趣味もない。それと、周りが怖がるような話し方をしていたら指摘してくれ。直したいんだ」
「は、はい。分かりました」
そうして暫く湯船に浸かるのであった。
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