第39話 最後の賭け! 決めろ、ダメージカウンター!

「ジーク様、無礼をお許しください! 『挑発ぅぅ』!」


 グーファーさんは暴走するジークさんにヘイトを自分に向けさせる、『挑発』を使う。


「ぐぉぉおぉーん!」


 雄叫びをあげながら、グーファーさんに向かって走るジークさん。橘さんは『グランドウェーブ』でグーファーさんをドミニデスの方向へ運ぶ。いい感じだ。その間に僕とザーハックさんでドミニデスの足止めをしている。


「元王子には橘を攻撃しろと命令したはずだぞ!? なぜ別のやつを狙っている?」


 命令と違った行動を取っている、ジークさんに戸惑いを隠せないドミニデス。あと、少しでこちらに到達する。


「うわぁぁ! こわいこわい! まじで追いかけられてますぅぅ! ひええぇぇ!!」


 グーファーさんが恐怖のあまり取り乱している。まあ無理もない。自分自身が、ものすごいスピードで移動しているのに、相手も同じようなスピードで追いかけられているのだから。もう少しでグーファーさんも追いつかれそうな状況になっている。橘さんがわざと減速しているのかな? 



 あと、十メートルほどで僕たちのいる場所に、グーファーさんとジークさんが辿り着く。僕とザーハックさんは避ける準備をするが、ドミニデスも同じように避けようとする。さすがに『太陽の恩寵』が発動している、ジークさんの攻撃はただでは済まないと察したかもしれない。まあ逃しはしないけどね!


「坊主! どうするつもりだ!?」

「大丈夫です。ザーハックさん。見ててください」

「分かった。俺はこのまま避けるぞ!」


「くそっ! 離れろ! 何をするつもりだガキ!」


 僕はドミニデスの後ろを取り、逃げられないように捕まる。


「ぐおおおぉ! 『太陽神アポロ一撃ブロー』!」

「橘さん! 今です!」

「はいよ」


 僕の合図で、グーファーさんを運んでいた砂は右方向に進行を変えた。


「ひえぇぇえ!!!」


 グーファーさんの悲鳴と共に、ドミニデスにジークさんの『太陽神の一撃』が炸裂する。後ろをにいた僕ももちろん巻き添えをくらう。とても痛い。


「ぐわぁぁあ!!!」


 ドミニデスにもダメージがあったみたいだ。僕とドミニデスは吹き飛ばされながら、蹴りをいれて近くの建物に叩きつけた。少し遅れて僕も建物にぶつかった。


「元王子の攻撃を俺に当てるために自分を犠牲にするとか、頭狂ってるぜ。だが、やるなぁ。なかなかのダメージだ。まずはお前から支配してやる!」


 ドミニデスのヘイトが僕に向けられたようだ。挑発スキルを使った覚えはないんだけどな。ドミニデスの残りのHPは3900。やっと4000を切った。さすがはジークさんだ。かなり削ってくれた。ドミニデスに回復する隙を与えてはいけない!

 そんな事を思っていると、グーファーさんの悲鳴が聞こえた。ジークさんの攻撃、第二波がきているのが分かった。さすがは橘さん。よく分かってくれている。


「ちっ、またか。『ハウリング・フィアー』!」


 ドミニデスの『ハウリング・フィアー』をジークさんは受ける。ジークさんは減速して、ドミニデスは避ける事に成功する。減速させるために使ったのか。横を向いていると、ドミニデスは僕に蹴りを入れてきた。よし、いい感じにヘイト管理をできているようだ。

 倒れ込む僕に近づき。


「お前に絶望をくれてやろう。『盗星』!」


 僕は『盗星』の効果を受けてしまい、レベルを1つ奪われてしまった。ドミニデスのレベルは35から変わらないのだが。僕はニヤッと微笑み。


「それを待っていた!」


「なんだと!?」

「バウンスバック!」


「なんだ!? 何をした!?」


 僕は『反撃』を派生させ、『バウンスバック』というスキルを作っていた。『バウンスバック』は相手の補助系スキルで受けた効果を無効化し、その効果をそのまま相手に与える事ができるスキル。

 これにより僕を対象とした、ドミニデスの『盗星』の効果は僕ではなく、ドミニデスが『盗星』の効果を受けることになる。


「自分のステータスを確認してみたら?」


「がぁああ!? 俺のレベルが34に下がっているだと? 逆に、お前のレベル28に上がっているではないか!先程のスキルは補助効果を跳ね返すというのか?」


「そうだよ。これが、僕の開発したスキル。『バウンスバック』経験値を獲得しなくても、レベルが上がったよ。ありがとう! これで、8あったレベルの差も6差まで縮まったね」


「だから、わざと俺に近寄ったわけか。くくく。面白いな」


「それはどうも。橘さん、ザーハックさんあとはお願いします」

 

 二人が近づいてきたのが分かったので二人に託す。僕は二人から少し離れた場所に移動をする。


「リーフィスさーん! こちらにきてくれませんかー!」


 少し離れているので、大声でリーフィスさんを呼ぶ。気づいてくれたみたいで、こちらに走ってきてくれた。



「お待たせしました。『反撃』の時間ですか?」


「はい。そうです。リーフィスさんのスキルのCTもあると思いますので、僕のHPが1500以下になったら回復スキルを。僕の HPが2000以下になったら継続回復スキルを使用してください」


「分かりました。やってみます」

「よろしくお願いします。着いてきてください」


 僕はジークさんに追われている、グーファーさんの元へと駆ける。


「あ! トワさん! 助けてください! 『挑発』の効果は切れていると思うのですが、まだ狙われているんです!」


「それほど、グーファーさんの挑発が効いたってことですよ。もう一度、挑発をして下さい」


「えぇ。あ、はい。分かりました。『挑発』!」


「ありがとうございます。合図をするまで、ジークさんの攻撃は今から僕が全部受けます。リーフィスさんはグーファーさんの後ろで見ていてください」


 リーフィスさんはグーファーさんの後ろに隠れる。ジークさんはグーファーさんを狙う。スキルは使用しないか。二人の間に割ってはいる。


「さぁ! ジークさん! 再び勝負だ! 『反撃』」


 ジークさんのブローが僕にダメージを与える。


「ふぅ。スキルなしでもいいダメージですね。勝負はこれからですよ」


 剣を地面に叩きつけて威嚇する。


「グオオオー! 『太陽神アポロ巨鎚ハンマー』!


 知らないスキルだ。手をハンマーの形に変えて、押し潰すような攻撃だった。めちゃくちゃ痛い。火属性ダメージだから大分軽減できている。ダメージを受けていきたいから、今は軽減してほしくはないのだが……。

 

 次は、『太陽神の一撃』! これもいいダメージ。僕は吹き飛ばされた。


「『癒しの風』」


 リーフィスさんがスキルを使ってくれた。あれは、継続回復スキルだ。少しずつ回復していく。このダメージでは、残り40秒ほどで『反撃』の効果が切れてしまう。このダメージ量ではドミニデスは倒せない。

 よし、ザーハックさんたちに攻撃してもらおう。そう思い僕は、ドミニデスの近くにいるザーハックさんたちのところへいく。


「みなさーん! 僕を攻撃してください! いた!」


 周りから見たらただの変態だが仕方ない。ジークさんに背中から攻撃された。


「よく分からんが、坊主を攻撃すればいいのか?」

「おぉ! トワ君はドMだったのですね」


「そうです。僕を攻撃して下さい。一番いいのをお願いします」


「いくぞ? 『燼滅紅牙』!

「『グランドウェーブ』……『グランドスピア』」


「ぐはぁ。ありがとうございます! いい感じです」


「みんなを癒して! 『リザレクション』」


 リーフィスさんの回復により、次のジークさんの攻撃を耐えれるくらいにはなった。『リザレクション』は範囲が広い回復スキルだ。

 ジークさんが僕に近づいてきていることは分かっていた。


「『太陽神の一撃』」


「うっ! さぁ! ドミニデス! これで終わりだ! 覚悟しろ! この国を! みんなの自由を返してもらう!」


「また、元王子に攻撃させようというのだな。これ以上くらってたまるか! 解除!」


 ジークさんの洗脳を解除をしたのか。よし!

 

 僕が受けたダメージはトータル2800。そのダメージの1.5倍のダメージをドミニデスに与える。つまり、4200のダメージ。先程見たときの残りHPは4000をきっていた。これが決まれば僕たちの勝利だ! 

「そんな斬撃! 押し返してやる! 『毒祭』!」


「ダメージィィ! カウンタァァァァァ!!!!」


「クソがぁぁぁあぁ! グガァァァァァア!」


 僕が放った、『反撃』はドミニデスに命中し、大爆発を起こした。

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