ボツにしたストーリー
プロローグ:乗客輸送船エリエステル号の悲劇
「フン! 馬鹿馬鹿しい!」
エリエステル王国所有乗客輸送船のエリエステル号の船長は、この記事が書かれている新聞紙を自宅の床に投げ捨てると鼻息を荒くして「船が沈まずに、海底散歩だと? 常識ハズレにも言動がありすぎる!」と馬鹿にした。
しかし、彼はその時自身に起こる奇妙な経験を知らなかった。
午前10時。いつものように客を乗せて隣国のエルハンメア王国に向けて出航しようとした時、奇妙なものが目に留まった。
一見、流木かと思った彼だが、薄い色のレースが見えたのでヒトだとわかった。
「あれ・・・? あんな、木じゃない!人じゃ無いか!!」
急いで彼は乗客に呼びかけて、女性を救助すると女性は何かに怯え始めて「アイツが来る! アイツが、ゴッドバウンド号を襲ったアイツが来る!」と叫び始めた。
確かに3日前、乗員乗客200人を乗せたクレベール王国の高速輸送空中魔道船ゴッドバウンド号がこの今まさにエリエステル号が通ろうとしている空域で失踪していた。
「お嬢さん、落ち着いてくれよ。この船は沈まないから」
フラグにしか聞こえないセリフを吐き、
「何か見えるわ! アッ、コッチに何かが来た!!」
先程救助された女性が急いで海に飛び込もうとし始めてそれにつられるように他の乗客も彼女に続き始めた。
正午12時。エリエステル号甲板では、乗客の悲鳴や乗員たちの怒号が飛び交っていた。
「スーッ・・・。 お静かに!!」
船長が腹から出した怒号で静かにさせた後、「お静かに願います。この船が、とても硬いと言われる極東原産木材をふんだんに使用した我が蒸気船エリエステル号は不沈です! なので、ご安心下さい」
刹那、船体が激しく揺れてマストが壮大な音を立てて折れた。
「船長! マストが!」
「・・・リズベール君、落ち着きたまえ。 この船は」
船長が不沈だと2回目を言おうとした時、傾き出したので、船員と目を合わせて、「船を捨てろー!」と大きな声で叫んだ。それを皮切りにまた騒がしくなったが、すぐに悲鳴へと変わった。
緩やかに傾いていた船体が、早く沈むようになったのだ。
その後、エリエステル号は機関部から爆破していき船体が穴だらけになり海底という墓場に沈んで行った。その日エリエステル号に乗船していた乗員乗客300名は、なんとか無事生きて家族の元に戻ってこられた。
エリエステル号が沈み救助艇がその場を離れて港に向かっていく中、船長は見た。船の舳先と思われる形が海面に突き上がり、水平になったのを・・・。
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