#25 第二次改装と出港
ナームス傭兵国の港にネヴァダやペンシルベニアが利用していただろうドッグがそのままの状態で残されていたので、リユースする事にした。ドッグに入港すると同時に、船を固定させるためのアームが船体を挟み
「ロック・アーム、固定完了!」
「各員、作業に入れ。 俺はネルス達を回収してくる」
「ネルス隊とトポス隊は撤退を開始しろ、ルーマス隊は
『『『了解』』』
○○〇
数分後、予め表示した海岸沖に着くと
前部扉を降ろすとぞろぞろと乗り込み、最後にKLX250や87式偵察警戒車が乗り込んだ。
「おかえり」
『只今戻りました、隊長』
インカム越しに疲れ切って
『こちら1番舟艇、全員無事です』
「ノヴェラスだ。 お疲れ様」
『
5隻のSBT-22に護衛される形でアディス級潜水戦艦に帰艦した一行は、ネルス達に5日間の休暇を特別に与えた。その後、艦内に残したまま置き去りにしていた王女や女王に手錠をしたまま外に出して話を聞こうとした時、予想外の要求をしてきた。
「――さてと、もう一度聞くぞ? 村雨旭が今回の犯人だな?
「クッ・・・、さっきから何度も言っている――ッ!」
「フッ――、正義気取りの女王は世界を見ようともしない。 愚か者だな、もういい!喋るな。――で? そっちの王女さんは、何か言う事ありますかねぇ?」
「・・・――て」
「はい?」
「私を、奴隷でもなんでもいいからクソ母親から離れさせて!」
クソ母親って・・・、娘が言うくらいクソなンだろうなぁ・・・。驚きと呆れを通り越して、引いたわ。
「は、ははは・・・」
「お願い、私に世界を見させて・・・!」
王女が手錠を付けたまま、這い寄って来て上目遣いの顔でしかも泣きそうな目で俺を見上げて来た。その様子を間近で見ていた女王はワナワナと口を振るわせて「母親に対して、クソとは何という口を聞くの⁉ メシア、あなたは――‼」と説教を始め、次第に口論になって行った。
「――メシアか・・・、良い名だな」
2人が口論をしているとノヴェラスが力ずくで2人を引き離して、王女の顎に指を這わせて「世界を見せて欲しいのなら、広大な海という世界の中を見せてあげよう」と言って立ち上がらせて手錠の鍵を外して自由にした。
「え・・・?」
「世界、見せて欲しいンだろ?」
「は、はい・・・」
「だったら、俺について来い。 生きたいのなら俺の背中に身を預けろ、泣きたいなら胸を貸してやる」
メシア・ナームスはノヴェラスの言葉を聞いて、涙をボロボロと流し始めた。
「泣くなよ、たった4単語だろ?」
メシアが泣いている間1人残された女王をノヴェラスは
「落ち着いたか?」
「・・・はい」
瞳から次々と出てくる涙を指で払いのけて微笑んだメシアのこの日の顔を、俺は一生忘れないだろう。
○○〇
第二次改装を終えたのは、海面がうっすらと氷を張った日だった。
改装の結果、全長が482・0メートルと長くなりそれにつれて全幅も146・8メートルに拡大した。さらに、基準排水量を203800トンに1万トン減らした結果、公試排水量が214000トンと少なくなった。使用機関炉はそのまま魔導機関炉6基と補助魔術式機関12基だが、洋上時と潜航時の速度が20・7ノットと22・9ノットに多少遅くなってしまった。
兵装面の改装内容は主兵装を36口径30・8センチ連装両用砲塔3基6門に改装し航空機や対地支援に特化した主砲塔に副兵装に艦首部魚雷発射管8本を装備させ特殊兵装の
主砲塔が使用砲弾は対空支援砲弾に≪
そして醍醐味というべき変化は、艦尾に装備していた
36口径30・8センチ連装両用砲塔に換装した事で、防御銃座として
え?高角砲は要らないのかって?
アハハ! 面白い事を聞くネ?
もう1つ変わったことが有る、任務遂行部隊を強襲部隊に変更したうえでメシア・ナームスを隊長とした空挺部隊を新設した。この部隊は敵領地の上空に航空輸送すると同時に前線を増やすという目的で造った。
長くなったが、今はこんなところだ。
改装を終えたアディス級潜水戦艦はその後、ドッグ内に海水を注入して出港準備に入っていた。
「あ、敬礼!」
レイクッドが黒の軍服を纏った男性を見て敬礼を叫んだので、他もそれに続いて敬礼をした。男性は「休め」と一言だけ言って乗船用のタラップを登って訓示を説き始めた。
「コホン! 我々はエルドリア海を放浪する
それぞれが銃を持ち上げて胸の前に構えるとレイクッドから順にタラップを登り、アディス級潜水戦艦の甲板に脚を付けた。
○○〇
「
『こちら機関室、タービン6基とボイラー12基点火完了! いつでも行ける!』
「
「了解、機関微速。 出港します!」
艦内外に響き渡るラッパの音が吹き鳴らされると同時に、警笛が短く2回ほど鳴った。
「微速から増速、第3戦速へ!」
「――ヨーソロー!」
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