28 イデアの海

【タイトル】

 イデアの海

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054887241342


【作者】

 kinomi 様


【ジャンル】

 SF


【あらすじ】

 誰かに身体をゆすられて、ハルカはゆっくりと目を覚ました。目の前にいた少女はハルカを「実体女子高生」と呼んだ。周囲を見渡せばそこは不可思議な世界。重力はあるのに様々なものが空に浮いており、物は色褪せて見える。思い出したところ、思い出せないところ、どこか曖昧なところ。ハルカもナツも抱えているみっつの部分。二人は虚空の世界を歩く。ここで何が起きているかを見て、自分たちが何者で、何故ここにいるかを考えるために。


 ※24_始の想起、あるいは現の蒼海にて まで読んだ時点での感想です※


【魅力】

 まず挙げるべきは、すこし不思議な独特の世界観を編み出してしまう作者様の文章にあるでしょう。実体女子高生と概念女子高生、というワードがいきなり飛び出す時点でもうすでに不可思議な世界に迷い込んでしまいますし、そこからハルカの視点を通して見る世界も「本来、知っている世界」とは違うという異質さを描写で提示されます。空には透明クジラが彷徨し、実体女子高生は空飛ぶママチャリに乗って移動する。言葉にするだけでも「なんだそれは」と思ってしまいますが、それを透き通るような文章で綴っていくことで「そういう世界」に落とし込む。これが絶妙というか癖になるというか、世界観醸成とその引き込みについては虜になるほかありません。

 と、文章と世界観の話ばかりしてしまいましたが、今作はそんなだいぶ変わった世界の中で二人の少女・ハルカとナツが出会うドラマでもあると思います。外側の情報と意味深な謎が多く、前途多難な道のりではありますが、そのなかでハルカとナツが心を通わせ、互いを思い、同志として友人として並んで歩いていく。そう考えるとこの世界で出会ったからこそとても尊いものに感じるのかな、と思いました。


【その他】

 ツナセ・ラタワが安直だけど好きです。奇妙な滑稽さ、というものがこの世界にあっているようで浮いている気がしたので。

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