第38話 リュートの姫君(テインタル王女)(1)

リュートの姫君

わんこさんの場合(エイルさん+子竜さん)


階段から財布を拾おうとして

すべってしまったワン!


はいと財布を差し出す女性


すんなりとした長い指、

切れ長で、卵型のとても美しい顔立ち

左手にはリュートを抱えていた


きっと吟遊詩人なのだワン!でも、なんて綺麗な人だワン!


「あら、かわいいワン子さん 階段から見事にこけてしまったわね。」

「ちょっと待って」 近くの噴水の水でハンカチを濡らし

 その濡れたハンカチでワン子さんのたんこぶを冷やす


 「すごい美人だ!エイルさんが甘い香りのパステルピンクのバラなら、

この人は白百合か白い牡丹の様だワン。」


優しく手でワン子さんを撫でる「ぼんやりして? 本当に大丈夫?」


「水かなにか飲む?具合が悪いのなら 

近くの薬師か、お医者様のところに行きましょうか?」

心配そうに見つめる


「大丈夫ですワン ありがとですワン」


「そこにいたの!ワン子さん!大丈夫!!」と

エイルさんが階段から降りて来た


リュートを持った彼女を見るなり

エイルさんの顔色が変わり、まっ青になった


リュートの彼女もエイルさんを見るなり

硬い表情になった


そして、ワン子さんをちらりと見てから

エイルさんに向きなおり

白の国の言葉、エイルさんの故郷の言葉


(つまり、外国語、ワン子さんにはわからない)で話を始めた


「ひさしぶり、元気になった? あら、その腕輪で傷跡を隠してるのね」

とリュートの歌姫


そして続けて エイルさんに話しかける


「私が刻んであげた 他の傷は癒えたかしら? 

腕輪の下の傷だけは、特別だから 痕が残るかもね」


「私はエルトニア…貴方…を」

「殺したい 殺せない」彼女は、悲しげに歌うように言って、笑う

貴方が憎かった でも 分かってる 

本当はうらやましかった


貴方を殺せば、彼は悲しむ」


「私にとって 彼は大事な人」うつむいて悲しげに、

そして苦しげに言葉を紡ぐ


少しおびえてるエイルさん


だが 彼女を見つめエイルさんは、静かに問いかける。


なぜですか? なぜ、そんな風に自分やアーシュを

傷つけるのはなぜ?」


「帰れない 居場所もない」

 

「そんな事ない!」

「…..彼の傍にいられる貴方が羨ましい」


「さようなら….私の事は許さないで…..。 」と切なげに微笑んだ


「エルトニア姫 わん子さんの具合が悪かったら医者に

連れていってあげてね。」そういい残して去っていた


「何を話してたですか?ワン!」 

リュートの歌姫とエイルとの会話ですが

白の国の言葉で、エイルさんの故郷の言葉でしょう? 


バイリンガルな人だワン!


「エイルさん 今の人誰ですか?」

「すごい美人でしたね たとえるなら白百合のような感じの人

もちろん!!エイルさんも美人です ハイ!!」


「わん子さん お願い 今の人の事 アーシュに言わないで」

「たぶん、 2人とも 時間がかかるの」 「?」


「とにかく お願い わん子さん!」 「? はいですワン」

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