第19話 春を待つ渓谷 



雪溶けの水が川を流れる

とても冷たい水に手を触れてみる


この冷たい川の流れが

どれだけの命を育んで来たのであろうか


私は

冷たい水を両手で掬い

顔を洗う


生きることが

どんなに辛くとも

この冷たい川の流れのように

何かを育んで来たかもしれない


そして私は

未だ雪が残る雪原に咲く花のように

力強く咲かせた花弁を空に向けるだろう


雪溶けの渓谷に

今年もまた旅に出かけるだろう


そして冷たい小川の水を

この両手で掬い

顔を洗い心を清めるのであろう


雪溶けの高原に咲く花に

その力を貰うために

私はまた旅に出るだろう


雪国の春は未だ遠いが

私の心は其所で生きている

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