第12話 赤い傘



薄曇りの真昼に空を見上げ

雪雲の谷間から

薄く光る雲を見て

そこに太陽が居る事を知らなければならない


若い日の恋は

夢のように流れ去り

冬の日の散歩道の粉雪舞い散る中

赤い傘から顔を覗かせた人は

いつの間にか大人になっていた


何度も手紙を書き直しては

ただの紙屑になり

とうとう手渡すことのなかった相手は


此の街の白い歩道で

可愛らしい子供の手を引き

赤い傘の下で微笑んだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る