ボーイズ・ビー・蛮ビシャス〜蛮神に捧げる我が咆哮

モノクロウサギ

第1話 プロローグ

 幼い頃、母に寝物語で聞かされた英雄譚が僕は大好きだった。神様の試練を乗り越え、祝福の宿った武具や肉体を駆使し、大敵と戦う英雄譚が大好きだった。

 聖剣を携えた優しき勇者。身の丈を超える大剣を振るう荒々しき豪傑。鋼の肉体を手に入れた寡黙な格闘家。矢を放てば百発百中と謳われた麗しき弓聖。

 数多の英雄たちの残した人生の奇跡。綺羅星の如き物語は、何時しかとても大きなものになっていた。ただの寝物語が憧れに。憧れはやがて夢となり、立ち上がる為の理由となった。

 そして十三になった時、僕は家を出た。家族仲が悪かった訳ではない。ただ農村に住むしがない雑貨屋の四男だった僕は家を継ぐこともできず、商売できる程器用な方でもなくて、家にいても居場所がなかったんだ。

 だから僕は少ない手荷物と、両親からの幾許かの施しを手に、家を、村を出て、近くの街へと向かった。

 目的地は一つ。ある程度の規模の街なら必ずある場所。この世界を創りたもうた創造神にして、戦の神たる【蛮神バルバドール】様を祀る神殿だ。

 この神殿は我らが神に祈りを捧げるだけの場所じゃない。英雄を育む為の神域へと繋がるの門なんだ。


【バルハの塔】


 そこは蛮神バルバドール様の治めるもう一つの世界。


──蛮神は闘争を好む。


──蛮神は英雄英傑を好む。


──故に蛮神は新たな箱庭を創る。


──蛮神は眷属たる強き獣を創り、箱庭へと放ち試練とした。


──蛮神は告げる。人の子よ、獣を狩れ。


──蛮神は告げる。試練を越えし者には、神々が祝福を与えよう。


──蛮神は告げる。獣を狩り鍛えし武具はやがて神器に至るであろう。


──蛮神は告げる。例え試練に破れ死したとしても、闘志尽きぬ限りは不滅である。


──蛮神は告げる。だが人の子よ、忘れるな。これらの奇跡は無償の施しに非ず。信仰への祝福である。


──蛮神は告げる。戦意を捧げよ。勇気を捧げよ。武勲を捧げよ。闘争を捧げよ。


──蛮神は告げる。我は望む。新たな英雄英傑の誕生を。人の枠組みを越え、我らが神の階を登る者を望む!


──蛮神は告げる。数多の闘争の果てに、やがて我をも打ち倒す至高の戦士の生誕を望む!!


 斯くして、神託は下り、世界中の神殿がバルハの塔へと繋がった。

 バルバドール様の神託に従い、人界の豪傑たちが神域へと殺到した。ある者は神々から与えられる力を求め。ある者は神の試練を越えし名誉を求め。ある者は神域でのみ手に入る宝物を求め。ある者はただ只管に闘争を求めた。

 そうして数多の豪傑が集い、心が折れた者たちによって無数の屍が積み上がり、ひと握りの怪物たちだけが神の認めし英雄英傑の名誉を得た。

 そして彼ら誉れに憧れた人々が、新たに神域へと足を踏み入れる。豪傑も、達人も、並の武芸者も、武器を握ったばかりの駆け出しも、闘争すら知らぬ幼き子も。我らの神は等しく祝福した。


『強さは試練で鍛えれば良い。不屈の闘志こそが我が求めるものである』


 そんな偉大なる蛮神の導きに従い、今日もまた新たに神域へと臨む者がやってくる。


──僕、ライオット村のエルカもそんな人々の内の一人だ。





ーーー

あとがき

怠惰の初期と同じ時期に書いてたからか、見返してみたら文章のテイストとか結構違うんですよね。文章のルールも微妙に違うし。

あ、あとちょくちょく修正してたせいか、設定やら文章でちょっと齟齬があったりするかも。

注意は払っているのですが、その辺は読み切りということでお見逃しください。


で、投稿についてですが、とりあえず、三話まで投稿。そして今日の午後六時に四話を投稿。そこから毎日午後六時に一話ずつを、書いてある分がなくなるまで続けます。

それ以降は……何度も申しているとおり、状況次第で。連載してほしいという人は、頑張って高評価してください。めっちゃ人気出たら考えます。流石にないだろうけど(フラグじゃないよ)

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