第9話、さて、いよいよ……!

 そろそろ、新たな気持ちで創作を始めてもよろしい頃合いとなって参りましたね。

 基本的な『 書き方 』としての講義は、最終局面を迎えようとしております。

 横書きの話が続きましたので、この『 縦書き 』と『 横書き 』の相違についての講義を、最後にもう少し、させて頂きますね。



 あなたは、同文を『 縦書き 』と『 横書き 』にして、比べてみた事はありますか?


 まあ、実際、出来上がった作品を、PCの機能により変換してみれば良いのですが、『 とある事 』に、お気付きになるかと。

 ご参考までに、以下の1文を、お読み( ご覧 )下さい。

 ↓

 彼女からそう言われ、私は、彼から手渡されて手に持っていた、彼が書いた数年前のノートを開き、先程、先生が私に、非常に熱心に、また丁寧に説明した、最後の解説の部分を、慌てて探してみた。


 …これまた作為的、尚且つ、幼稚たる文面で、誠に申し訳ありません。(笑)

 この例文は、本来なら3文ほどに分けて記述するべきところを、敢えて、無謀にも1文としています。 なので、かなり不自然で、読み難いかと思います。 …てか、文章として成り立っていませんね。

 読み難い理由は、合文である以外にも幾つかあるのですが、その内の1つは、読点が多いからです。 無理やり入れてある箇所もありますが、読点を多く打たなくてはならない文面になっている事自体、そもそも、不自然な文章になっていると言えます。 しかし、この場合、その問題は置いておいて……

 これを、以下のように読点を削除し、『 縦書き 』にしてみて下さい。

 ↓

 彼女からそう言われ、私は彼から手渡されて手に持っていた彼が書いた数年前のノートを開き、先程、先生が私に非常に熱心に、また丁寧に説明した最後の解説の部分を慌てて探してみた。


 …少々『 苦しい 』ですが、意外と読めるのです。


 作為的に作った例文ですので、おかしな文章にはなっていますが、横書き表示に比べ、格段に読めるはずです。 日本語、独特な結果である事には間違いありませんが… 不思議ですよね?


 ここで更に、縦書きに付随したお話しを、少々……

 実は、放送・映画・演劇の世界において『 台本 』なるものは、全て『 縦書き 』です。


 これは、行を飛ばして読んでしまう確率が、縦書きの場合、非常に低くなる理由からなのです。 ナレーションやアナウンサー・司会・役者が、放送台本やニュース原稿、セリフ等を飛ばして読んでしまったら大変ですよね? 従って『 横書き 』の台本は、プロの世界では存在しません。 当然、日本独自の事ですが……


 また、小説を含む『 文献 』を、ヒトより格段に速く読める方がいらっしゃいますよね?

 これは文章そのものを理解しながら読むのではなく、文章を『 塊 』として認知し、書いてある内容を『 想像 』しながら理解している為に、速く『 読める 』のです。 いわゆる『 斜め読み 』と言われるものですが、実は、横書きだと、あまり効果が出ません。

「 単行本小説だと、速く読めるんだけど… PCだと、速く読めないんだよな 」

 この理由は、つまるところ『 横書き 』だからです。


 読点が少ない…… これは、まさに『 文章の塊 』に値します。


 そのような、読点が少ない縦書きの文章を、どこかで拝読された事があるはずですので、思い出してみて下さい。


 ……そう。 純文学です。


 最近の新しい作品ではなく、古典的な名作をご覧下さい。 どこで『 息継ぎ 』しているのか? と思うほど1文が長く、しかも、読点が極端に少ない事に気付かれる事と思います。

 このように、縦書きの文章は、読点を減らしても違和感なく文章を構成させる事が出来ます。 読み手側も、かなりのスピードで読み進める事が出来るのです。


 故に、横書きで創作する場合は、読点の入れる位置を充分に熟慮し、なるべく『 親切に 』読点を配置した方が良いでしょう。

 …まあ、私の場合は先記した通り、多くの読点を入れ、校正にて削除しながら創作していますので、読点はかなり多い方です。 縦書きの『 時代 』が長かった為、未だ、どうしても横書きですと「 読み難いのでは? 」と言う『 視覚的効果 』を優先してしまい、読点を多用してしまいます……


 実際に、一度、ご自身の出来上がった作品をPC機能にて、書式を縦書きに変換してみて下さい。 中々、面白い『 眺め 』と成りましょう。 …それは、あなたの作品が書籍化された時の『 眺め 』です。


「 …おい、おい。 1行空けが、やたら多くね? 」

「 こんな『 顔 』になるの? 」

「 段落落とし… やっぱ、しておこうかな…… 」


 色々な感想に加え、『 反省 』も出て来るかと。(笑)

 ちなみに、私は、出来上がった作品を、必ず縦書きにして保存しています。 現代ドラマもSFも、コメディーも、恋愛も、全て。 こだわりと言えば、それまでなのですが… 数字も全て、漢数字に換装して保存しています。


 理由は、『 練習 』の為です。

 縦書き・横書き、どちらの書式を選択しても、読み手側に立っての『 読みやすさ 』を再現させる為の……


 創作は、誰かに『 意思 』を伝えたいが為に行われる、自発的な『 芸術 』です。

 意思を伝えると言う事… すなわち、『 読みやすく 』なくては本末転倒でしょう。

 私のように、執筆家を目指さず、自身の『 想い 』をカタチとして残したい一念で創作をしている者にとって、作品を読んで頂けるの方々に対する『 読みやすさ 』とは、ある意味、物語のテーマ性や描写の仕方、記述法云々よりも優先される事項となります。

 一般的とされる解釈に則り、誰もが、おおよそに理解出来なくては……


 分かりやすく、理解しやすい文章……

 それが、私の目指すところの『 創作 』の基本です。


 その為に必要なのは、特記するに相応しい『 高尚な文体 』でもなければ、荘厳かつ煌びやかな『 装飾的 』文章でもありません。 意思を正確に伝達する、『 読みやすい表記 』なのです。


 ビギナーの方々においては、まず、基本となる書き方をご理解頂き、作品に反映して頂く事を切に願います。 人称の変換や、飾った語句・表記の網羅は、何作か創作した後に『 冒険 』して頂ければ宜しいかと……



 では、表記についても最後に1つ、提議させて頂きますね。

 例えば、『 事 』と言う漢字を取り上げてみましょう。

 あなたは、漢字・ひらがな、どちらで表記しますか?

 下記に例文を用意致しました。

 ↓

 厄介な事になった


 これを『 厄介なことになった 』と表記するのは、文法上、間違いなのです。

 例文の『 事 』には、固有名詞の対義語を指す『 普通名詞 』としての意味合いがあり、単独で主語に出来ます。 つまり、「 事が起きる 」でも、意味は通じますよね? 『 厄介な 』を省いても理解出来るワケですから、漢字で表記するのが基本です。


 では、下記の例文をご覧下さい。

 ↓

 そんな事はない。


 これも本来、間違いとなります。 正しくは『 そんなことはない 』です。

 例文としての『 こと 』は、この場合、形式名詞となります。 『 そんな 』と言う修飾語が付いて、名詞としての役割を果たす言葉になるからです。 つまりは、単独では主語にならず、それだけでは意味不明…… 従って、ひらがなで表記するのが正解なのです。

 ちなみに『 時 』・『 とき 』も同じです。


 カミングアウトしますが、私は、ほとんどに『 事 』を使っています……

 これは、ひらがなが連続した時、読点を打たねばならない場合が多く、少しでも読点を減らして読みやすくしようと考えた末の結果です。 まあ、分かっていて『 使っている 』と、ご判断願えたら幸いです。 本来は、間違いですが、敢えて間違った使い方をしている場合が多いのです。

 文法にお詳しい方が読まれれば、いつの日か注進コメントが届くだろうと思いつつ、もう5年以上……

 おそらく、微妙にお気付きになられていた方も、多分にいらっしゃるかとは存じますが、敢えてコメントをされない… いや、楽観視する許容範囲の中であったと、勝手ながら極楽推察させて頂き、これからも『 使わせて 』頂こうかと存じます。(笑)


 たまには、文法も『 勉強 』しましょうね?

 …って、作為的な使用をしている本人から申し上げても、説得力ゼロですよね。

 学生時代から、分からない事は徹底的に調べ上げるクセに、勉強は『 必要程度 』しかしない、私でしたからね…… すみません。


 さて… では次章、いよいよ最終章とさせて頂きます。 必要以上の勉強をしない『 お気楽 』講師に、最後までお付き合い頂きまして、誠にありがとうございました。 内容的には、真摯に述べさせて頂いたつもりですが……


 次章、この講義では初めてになるかとは思いますが、『 書き方 』以外の項目として、ストーリーの組み方… そう、創作においては、最初の重要案件となるであろう『 設定 』についてのお話しで、この講義を締め括らせて頂きますね。

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