第3話別れ

「元気そうでよかった」


部屋を駆け回る二匹に一安心する。


でもここで飼う訳にはいかなかった。ここはアパートで動物は禁止。


それに充はあと数日でこのアパートを出なくては行けなかったのだ。


「ごめんな…俺じゃお前ら飼えないんだよ」


明日この仔猫を助けた場所に行ってみよう。もしかすると親猫が近くにいるかもしれない。


今夜だけは預かるか…


充は薄っぺらい布団を引く、猫達には座布団を置いてやった。


今日はもう寝ようと布団に横になる。


足をさするがまだ痛みは引きそうにない、もしかしたら明日になったらもっと腫れるかもしれない。


でも今の充には病院に行く事も湿布を買う事も出来なかった。


諦めたように充は眠りについた。


朝になると怪我をした足元が温かい、そっと起き上がってみると座布団の上で寝てると思った猫達が自分の足元で丸くなっていた。


温められたからか昨日より痛みがない気がする。


猫達を起こさないようにそっと足を引くと…


「え?」


足の怪我が綺麗に治っていた!


「よかった…」


そんなに酷い怪我じゃなかったようだ、寝て治る程度だったのかと少し疑問にも思うが治っているのが何よりも証拠だ。


足音を立てないように歩いていたが少しの物音に猫達が起き出した。


ガリガリ!


「わー!やめてくれー」


猫達は起きるなり床で爪とぎをする。


慌てて止めて座布団に乗せた、すると不満そうにそこで爪をとぐ。


困るが床よりはマシだ。


二匹に昨日のミルクとかつお節をやると二匹を持ち上げて家を出る。


今度はしっかりと扉を閉めて鍵をかける。


「じゃあ行くか」


二匹を連れて昨日の現場へと到着した。


「ほら、お前らの家はわかるか?」


二匹を下ろすとクンクンと地面に鼻を付けて匂いを嗅いでいる。


すると二匹はまた跳ねられそうになった道路へと行こうとする。


「あっちに行きたいのか?」


「にゃ~」


答えるように仔猫が鳴いた。


充は二匹を抱き上げて道路を渡る。


安全そうな場所で下ろすと二匹はトコトコと歩き出した。


「おっ家がわかったのか?じゃあ俺はもういいな…」


動かずに二匹の向かう方を見入る。


進む方は車の通りが少ない場所だ、道の端を歩いているから大丈夫だろう。


姿が見えなくなるまで…と思い二匹を見送る。


角を曲がろうとすると二匹が振り返った。


「じゃあな」


充は眉を下げて二匹に手を振った。

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