　お嬢様が作成して、メイドや執事たちに配った魔法道具は非常に好評だった。

　同僚のメイドたちが皆、お嬢様の作った道具のおかげで様々な仕事が楽になったと語っている。

　屋敷の掃除にかかる時間が短くなって、時間に余裕が生まれた。今までは集中して掃除することが出来なかった箇所や、後回しになっていた細かい部分まで掃除できるようになった、と。

　作業が楽になって、今までガチガチになるまで疲れていた身体がほぐれて、痛みもなくなったらしい。すると更に、仕事に集中できるようになったという。

　特に、洗濯の手間が少なくなった。洗濯担当を指名されても喜ぶ子が居るぐらい。今まで、とても大変で憂鬱だった仕事が、お嬢様の作ってくれた魔法道具のおかげで嫌じゃなくなった。

　メイド達、皆の雰囲気や関係が良くなっていて、これもお嬢様の作った魔法道具の影響なのだろう。魔法の力で、ここまで皆の雰囲気を変えてしまうなんて凄い。

　一番嬉しいのは、ナディーンお嬢様が私達のような雇われて働いている人達にも、気を遣ってくれること。お嬢様は、とても立派な淑女になる。いや、既に立派な淑女だと思う。

　彼女のような素晴らしい人のお世話をすることが出来て、私は誇らしかった。他のメイド達も、ストランド伯爵家のお屋敷で働けることを喜んでいると思う。

「皆、お嬢様の作ってくれた魔法道具が便利だと言って、大喜びですよ」

「そうなんだ。ちゃんと使ってくれているようで、嬉しいわね」

　ナディーンお嬢様には、同僚のメイド達の喜ぶ様子を伝えた。すると、嬉しそうに笑みを浮かべるお嬢様。最近、お嬢様は笑顔をよく見せてくれるようになって、私も嬉しい。

「他に、どんな事を言っていた？　もうちょっと、詳しく聞かせて」

「えーっと。お嬢様の道具を使えば、部屋のゴミを集めるのが簡単になって疲れなくなったとか、床を水で拭いた後に乾く時間を待たないで次の作業が出来るから楽だと言っていましたね。それから……」

　興味津々で、もっと話を聞きたいというお嬢様。私は、他のメイドたちと会話した内容を思い出しながら、次々と伝えていく。

「私の聞いた話は、こんな感じです」

「ふむふむ、なるほどね」

　私の話が終わると、お嬢様は頷きながら言った。どうやら満足してくれたようだ。

「ありがとう、とても参考になったわ」

「お役に立てたのであれば、光栄です」

「また、使用した人の話を聞いてきて、私に報告して。お礼に、これをあげるから」

　そう言って、お嬢様はクッキーを取り出した。また、魔法で作ったお菓子らしい。時々、私はお嬢様から魔法のお菓子を頂いていた。そして、今日も。

「さぁ、食べてみて」

「ありがとうございます。頂きます」

　サクッとして、程よい甘さのクッキーだった。食べ始めると、止まらない。手軽に幸せな気持ちになれる素晴らしいお菓子である。

「美味しい……！」

「いっぱい作ったから、どんどん食べて！　飲み物も、ほら。用意してあるから」

　あぁ！　また、美味しすぎて食べてしまう。止めないと、また体重が……。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい