第35話


 「行ってきまーす」


 今日からはセーフティゾーンでのポーション類の販売に行く。ダンジョンを強化するには金がいる。魔力を探索者から吸収しダンジョンポイントを増やすのが普通の方法なのだろうが、俺は違う。まずは、お金をダンジョンポイントに変換しダンジョンを強化、そして、オレタートルや金銭、金銭をダンジョンポイントにしてアイテムを作成、それらを宝としてダンジョン内に配備することにした。


 昨日どうしようか考えながらダンジョン管理画面を見ていたら金銭によるダンジョンポイント返還を見つけて唖然とした。今までは金銭をダンジョンの報酬とすることしか考えていなかったがそれ以外の選択肢が出てきた上にそれが最適の選択肢だったのだ。選ばない理由がない。


 今回のセーフティゾーンでのポーションはC〜Dランクのものを相場の3倍で売り出すことをギルドで決められた。そして売上のうち2割をギルドに収める事になったがそれは別に良い。ギルドの保護下にあると言うことが大きなメリットになる上に冒険者相手の安心できる指標の一つにもなるからだ。今回のセーフティゾーンへの道のりはソロでさっさと向かっていった。


 「こんにちはー。」


 一応何人か荷物持ちや雑用のような人が各パーティにはいる。長く潜るチームにはそう言うサポートメンバーがつくのだ。もしくは、パーティーのメンバーを分けて探索に出たりもする。そうする事で探索中の荷物を減らす事ができるし冒険者達は仕事に集中できるからだ。


 大体はみんな人付き合いが必要になるこの世界、挨拶を返してくれる。今日は冒険者とし言うよりも商売人として来ているので先に他の行商人の人が居たらルールや挨拶をしておこうと思って探してみるとこの前にも居た人が座っていたので話しかけようと近づく。


 「こんにちは、この前はどうも。」


 「お、君はあの時の冒険者君か!今日も魔の森に入っていくのかい?」


 「いえ、今日はあなたと同じ商人としてここにきたんですよ。あと僕の名前はガズィです。よろしくお願い申し上げます。よければここでの商人としてのルールとか有れば教えて貰えませんか?」


 俺は胸元からギルドから渡された承認証代わりのプレートを見せる。これはステータスカードと同様の特別製らしくて見たら誰でもわかるものらしい。


 「なるほど…!その年でもうギルド公認なのか…それはすごいね。ここでのルールは特にないけど必要以上に販売金額を下げない事と必要以上に結託して物の値段を釣り上げたり品薄にしたりしないことかな。少しくらいのお目こぼしはみんなあるけどね。それと僕の名前はアーランドだ。よろしくガズィ君。」


 「ありがとうございます。少しくらいの役得は必要ですもんね。私の商品はコレなんですけど、ここにくる人たちと被ったりはしませんかね?」


 魔法の袋からそっとポーションを取り出してアーランドさんに見せる。


 「ほう、ポーションを持ってくるなんて凄いね。確かに需要はあるだろうけど錬金ギルドや薬剤ギルドに睨まれるからあんまり手を出す人は…。なるほどね、だから冒険者ギルド公認のプレートを…!深くは聞かないで置くけどギルドと決めた価格なら大丈夫だと思う。けどなるべく目立つ事は避けたほうがいい。他のギルドから目をつけられると面倒だからね。」


 アーランドさんは、少しのものを見ただけでほとんどのことを察してアドバイスまでくれた。この人はやれる人なんだなと思いながらしっかりと忠告を聞き入れ感謝を述べた。アーランドさんにここを使うといいと隣を使っていい許可をもらったので遠慮なく隣で作業することにした。

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