ダンジョンで勇者から世界を救え!〜繁殖と変異と進化で強いモンスターを生み出せ〜

ヒバリ

第1話

 ダンジョン


 現代ではあり得ない空想のものとされ様々なゲームや創作物に出てくる夢やロマンのようなものだ。


 そこには宝があり、魔物がいて、ボスがいて、冒険がある。多くの創作物はダンジョンを攻略して強いアイテムや経験値を手に入れ貴族やSランク冒険者となるようなお話が多い。


 そんな中、ダンジョン運営モノというのはそこまで多くない。ゲームにしても本格的なものは少なく、あったとしてもあまり目を引かない。


 俺は様々な運営創作物を読んできた。今日も新しい話が更新されていないかスマホをチェックしながら大学の帰りの電車を待っている。


 今日は友達と帰る日でもないし、サークルの集会があるわけでもない。なので一人で帰ることにしていた。勿論彼女なんてもってのほかだ。


「でさ〜、今度四国に車で遊びに行こうぜ」


「いいね!授業サボってこ」


 ガヤガヤしたヨウキャ集団が俺の後ろを通っていく。別に嫌いでもないし苦手でもないが何か引け目を感じてしまうのは自分がインキャだからだろうか。


 そんな時ふざけていたのか集団のうち一人が俺にぶつかる。普段ならそこまで線路側に近付いていない俺だが、集団の通り道を開けるために線路側に立っていたのが仇になった。


プーっ


 最後に見たのは線路に落ちる景色とよくわからないナニカが薄暗くニヤニヤしている様子だった。


 っ!!!!なんだ?声が出ない。ここは?俺は死んだはずでは…


「やあ、伊織一馬君、初めまして?でいいのかな。僕は君のことをよく見ていたから初めましてではない気がするけどね。」


 先程死ぬ前に見た薄暗いナニカがニヤニヤとした口を崩さずに俺を見て話しかけてくる。


「喋れなくて不便かもしれないけど、ごめんね。魂しか拾い上げられなくてさ、肉体が用意できていないんだ。声がなくとも思考は読み取れるから安心してくれ。」


 何が安心する要素があるっていうだろうか。俺があんなことやそんなことを考えたらバレるってことだろう。俺はポニテとメガネが好きだぞ。


「ははは!面白いね。僕としては好みとかそういう次元は超えているから好きとかはないけど君がそういうならその姿になってみようか。」


 モヤモヤとしたナニカが人の形をとる。天使や神というよりはダークな感じで、ポニテでメガネの妖艶な美少女が現れた。


「さて、話を進めよう。ここにいてもいいけど嫌なやつに見つかると君も私も良くはない。ある程度説明しないとわからないだろうしね。」


 それはそうだ。ん?まてよ、なぜ俺はこんなに冷静でいられるんだ?普通はもっと錯乱するはずではないのか?。悪いが俺はこんなに冷静でいられるほど人間できちゃいなかったと思う。


「そうだね、私が精神耐性というスキルを与えているんだ。死んだ後に錯乱されても手間だし、私のサービスだ。」


 スキル?異世界っぽい話が出てきたな。ふむ、異世界転生か転移モノか?ある程度非日常的なことは予想してたがそっちか。世界を救えとか文明を発展させろとかそういう方向なら俺は不得意だぞ。


 自慢じゃないが戦闘能力はないし、勉強していたと言っても会計の勉強くらいだ。


「私が一馬君に求めているのはそこじゃない。簡潔に伝えよう。君にはダンジョンを運営して闇を救って欲しい。」


 闇を救う?どういうことだ。


「私が管理している世界の一つに光勢力に滅ぼされてしまいそうになっているところがある。光と闇は一対で連なるモノ。どちらかが欠けてはいけないモノだ。しかし、光側は勇者召喚や異世界転移で地球人をどんどん呼び込み闇を駆逐、そして光だけの世界にしようとしている。」


 ふむ、光だけになると悪いことはあるのか?人は死なないし地球みたいに怯えて暮らすこともなくなる。人間が、いるかわからないがエルフがドワーフが、様々な種族が繁栄を築きまた戦争でもし始めるだろうさ。


「そうだよ。そこなんだよ。何故そこに我々の子供魔族が虐げられ虐殺の目に遭わなければいけないんだ。今まではよかった。争い合うのは普通だ。そこに我々は関与しない。しかし、相手の神と呼ばれる存在のせいで一方的に駆逐されるのは許せない。だから私は君を呼んだ。」


 なんだ?それなら俺が死んだのはお前のせいという事か?精神耐性のおかげかわからないが動揺はしないが少し不愉快だぞ。


「まさかまさか、君は元々光側に連れられるために殺されたんだよ。神にね。私はそこから魂を奪い取っただけさ。どうせ向こうは数ある魂の中の一つが取れなかったところで気にはしない。だから、私は君を奪った。」


 なるほど、どちらかというと恨むべきは神の方か…。俺としては現代に思い残すことはないし、就職等嫌だったからあまり後悔はないが。友達や家族はいる。そいつらが気がかりだな。まあ、今更言ってもしょうがないか!。


「その思い切りがいいところ評価に値するよ。どうか、我々の種族を救ってくれ、魔物と魔族を。ダンジョンの王、ダンジョンマスターよ。」


 ダンジョンマスターか。そもそもダンジョンとは向こうではどのような扱いになる。最後の砦か?それとも世界各地に存在しているのか?


「ダンジョンとは、光と闇を隔てる砦だ。ダンジョンが制覇されればその一帯の闇の地域は光側に取られ、魔族や魔物は惨殺され、畑や町を奪い取られる。今までは、光側にとってダンジョンは資産だった。魔物や魔族をダンジョンで倒せば武器や防具、アイテムなどを落とす有用な資源と見られて攻略されてもダンジョンコアは破壊されず一対の関係を築けていた。」


 なるほど、そこで光の神の介入、ダンジョンコアの破壊と続いていったわけか。闇側の利点はあるのか?



「あるよ。光の種族から生命エネルギーや魔力を吸収してダンジョンポイントに変換それを資源に変えまた再配置したり戦力を増やしたりする。そして余った分で資源を出して自分たちで活用する。」


 ちなみにダンジョンで死ぬ魔族や魔物はいいのか?


「意思ない魔物がダンジョンでは生まれる。いや、意思はあるが知能が低いとでもいうのかな。君の世界で言うところのmobだ。たしかに繁殖などはするが知的生命体が生まれない。産まれたらネームドといってユニークモンスターの扱いになる。その場合はやられたら死ぬと言う判断になるだろうな。」


 なるほど、次に魔族は?


「魔族はダンジョン内では自然には生まれない。魔物もそうだがな。ダンジョンポイントというものを使って召喚して、繁殖させたり交配させてどんどん戦力を増やすんだ。魔族に関しては知能指数が高いからあまり簡単に交配などはできないがな。ちなみに、魔族でも本体で戦わせずに魔力体を用いさせる事で何度でも配下として戦わせられる。経験値なども入るぞ。だが、魔力体を使うとデメリットも大きいことを忘れるな。」


 なるほどね。救済措置はあるのか。ネームドにも同じ機能が?


「一応ある。」


 ふむふむ。魔族と魔物の違いとは?ネームドになったら魔族か?


「そんなことはない。進化を重ねていけば魔族に変わることもあるがな。違いとは元々その種族として認知されているかどうかの違いだ。ここは基本的に人間からみた尺度で決まっている。魔族は人型かつ意思疎通ができ、群としてよりも個としての存在を重視するものといえばわかりやすいか?」


 動物的な群れではなく、個人としての意思があるかどうかだな。わかった。


「よろしい。では、他に質問は?」


 ダンジョン同士は助け合っているのか?それとも領土というくらいなんだ国などが形成されて闇の中でも領地争いがあるのか?光側だと種族ごとに国があるはずだ。そこもどうせ争っているんだろ。


「大正解。考えた通りさ、闇側の領土戦はわかりやすくダンジョンコアの支配権を奪われたらその者の領地だ。一個一個が独立した貴族の領地みたいなモノで、ダンジョンを奪われて死にたくないダンジョンマスターは降伏し支配下に置かれるか、消されて併合されるかだ。併合された場合でも後からダンジョンコアを追加して撤退先にしたりもできる。」


 なるほどな。群雄割拠の状態じゃ光側に負けるわけだな。


「と言ってもある程度は統制が取れている。この世界は広い。その分ダンジョンマスターも多く序列のような物がある。定期的に総会のようなものも開かれて全体として意見を共通させたり宣戦布告の場にしたりしているな。その場で取り仕切りをしているのが1番初めに生まれ今もなお生き残っている最古のマスターさ。どっちかというと君の国の戦国時代を大きな統治下で行う感じだ。連合国というのかな?光側と大体同じ。」


 そこに光の神の介入でバランスが崩れたと。ちなみに、俺を転生させるとしたら誰かの配下になるのか?それとも独立か?


「君の望むようにできるが、転生させるからね。独立の方がいいと思う。一応補足だけど成長すればするほど特徴ができてボーナスも入る。例えば獣人系ばかりを集める魔族なら獣人系や獣系の魔物に戦闘力ボーナスやコストが下がったりね。」


 なるほどな。俺がどうなるかとかは決めれたりするのか?


「勿論転生させるんだから幾つかの設定はさせてあげられるように取り計らうよ。」


いいね。楽しそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る