第19話 ロードフェニックス
「迷惑はかけないんじゃなかったのか? アルデバラン?」
大振りのバトルアックスを掲げた、壮年の大男が立っていた。
「シドさん!」
「ひとまず助けてはやるが、あとでたっぷり事情は聞かせてもらうからな」
シドはバトルアックスを大きく振り、衝撃波を飛ばす。だが黒鳥は翼を重ねて防いだ。傷ひとつついていない。鋼のような硬さだ。
「オリヴィエ、手を貸せ」
「了解」
背後から若い男がロングソードで斬りかかると、黒鳥は背中からも出血した。
「ほう。なかなかやるな。私に傷をつけた冒険者など、何百年ぶりか」
「安全な深層に引きこもっていただけだろうが。そりゃあ傷つかないわけだ」
オリヴィエは挑発し、黒鳥の視線を引き付ける。
次いで、空気を引き裂くような甲高い音が響く。
矢だ。しかもかなり高密度の魔力を纏った矢。遠距離狙撃か。
黒鳥の目を狙ったようだが、黒い稲妻のようなものが走り、叩き落された。
「火、風、雷。多重属性付与の射撃か。かなりの腕だが、我らの濃い闇を前にしては、無力というもの」
黒鳥が羽ばたき飛び上がると、暴風が吹き荒れた。それも、さっきの黒い稲妻のような魔力を纏った暴風。俺とオリヴィエ、シドはたちまち身体が痺れて動けなくなった。俺はアヴァロンを地面に取り落とし、自分も倒れ込む。
「終いだな。サルーテ冒険者ギルドの【処理班】は相当に腕が立つと聞いていたが、この程度か」
黒鳥は地に伏す俺たちを鼻で笑い、さらに上空へと羽ばたく。
「我が名は黒凰ロードフェニックス。喜べ。サルーテの住民ども。あのお方はこの地にて、夫を迎える決断をなされた」
あのお方? エレナのことか。まさか、ここに来るのか? エレナの本体が。
「覆い尽くせ。我が眷属たちよ」
ロードフェニックスが唱えると、どこからともなく無数の黒鳥が飛来し、サルーテの上空を覆い尽くした。さっきの比ではない。とんでもない数が、驚くべき密集度で集結している。
俺の炎魔法程度ではどうにもできない。
「私たちは、大きな勘違いをしていたようですね」
隣で倒れているアヴァロンが苦しそうに絞り出す。
「太陽光を遮り、水路を確保する。これでエレナ・メルセンヌの本体が地上に出て来られる条件が、整ってしまったわけです」
どういうことだ。エレナは海魔系の種族に転生した可能性が高いんじゃなかったのか?
まさか、水道橋はブラフなのか? そのためだけにあれだけの大工事を?
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