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 イサクはランタオとリオナを、石守り村で一番のもてなしを誇る宿に案内した。二人が家を出るころには寒風が吹きすさび、雨が斜めに体をたたきつけた。


「ここは田舎村なのですが、お二人に泊まってもらう宿はここから少し時間がかかります」


 ランタオはリオナを見やった。洞窟の中とはいえ一度も外に出たことがないはずのレオナ。ところがレオナはの表情は崩れていない。孤島で僕を待っている先生みたいだなと笑った。その表情は寒風の中に紛れて誰にも気づかれなかった。


 村を進むにつれて、灯りが増えてきた。くちなしの花の電灯が道を照らしている。


「この道をまっすぐに行けばつきますよ」


 イサクは先頭から振り返らずに言った。腕で雨風で視界がぼやけないようにしながら、二人は頷いた。


 泥を踏みつける三人の足音が鳴る。




 隣町は長老の住んでいる村に比べて、背の高い家が多かった。家と家が立ち並んで壁を作っていた。住宅街のようだ。次第に風の音がこもった響きを奏でるようになった。道はかなり明るくなった。くちなしの花の電灯が頭の上から多く注ぎ込んでいた。微かにだが窓に人影も見えてきた。


「ここまでつけば安心ですよ」

「はい、風も気のせいか弱くなってきたようですし」

「建物に多少は守られますからねぇ」



 着きました、とイサクが立ち止まったとき二人は目を輝かせて言った。


「ホテルなんですね! わぁ初めて見た」

「ホテル、ほうこれがホテルか! 思ったよりも豪華だな! 」


 ぐにゃぐにゃにへしまがった記号のような字で「Montereyーモントレ」と書かれた看板が見下ろしていた。

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