3
イサクはランタオとリオナを、石守り村で一番のもてなしを誇る宿に案内した。二人が家を出るころには寒風が吹きすさび、雨が斜めに体をたたきつけた。
「ここは田舎村なのですが、お二人に泊まってもらう宿はここから少し時間がかかります」
ランタオはリオナを見やった。洞窟の中とはいえ一度も外に出たことがないはずのレオナ。ところがレオナはの表情は崩れていない。孤島で僕を待っている先生みたいだなと笑った。その表情は寒風の中に紛れて誰にも気づかれなかった。
村を進むにつれて、灯りが増えてきた。くちなしの花の電灯が道を照らしている。
「この道をまっすぐに行けばつきますよ」
イサクは先頭から振り返らずに言った。腕で雨風で視界がぼやけないようにしながら、二人は頷いた。
泥を踏みつける三人の足音が鳴る。
隣町は長老の住んでいる村に比べて、背の高い家が多かった。家と家が立ち並んで壁を作っていた。住宅街のようだ。次第に風の音がこもった響きを奏でるようになった。道はかなり明るくなった。くちなしの花の電灯が頭の上から多く注ぎ込んでいた。微かにだが窓に人影も見えてきた。
「ここまでつけば安心ですよ」
「はい、風も気のせいか弱くなってきたようですし」
「建物に多少は守られますからねぇ」
着きました、とイサクが立ち止まったとき二人は目を輝かせて言った。
「ホテルなんですね! わぁ初めて見た」
「ホテル、ほうこれがホテルか! 思ったよりも豪華だな! 」
ぐにゃぐにゃにへしまがった記号のような字で「Montereyーモントレ」と書かれた看板が見下ろしていた。
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