第21話 味のしない夕食でした
夕食の時間になり、支度を済ませルイは王族たちが利用する食堂に移動する。ルイは用意された中でも地味なドレスを選び、宝石も薄い青色のトルマリンのネックレスとイヤリングを選んだ。青は陛下の瞳の色だ。
すでにそこには陛下、王妃たち、王子たちが一同ずらりと着席していた。ルイは陛下の近くに通された。
「そう、固くならずともよい。ただの食事だ」
「ありがとうございます」
そうもいくまいよ。
王妃、王子たちを紹介された。ズラリと並んでいる。覚えられるだろうか。
夫人は第一夫人からアルミダ、その息子にシオン、カイン。第二夫人シャウラ、その息子にフリル、ハミル。第三夫人エルナト、その息子にキール、コール。第四夫人レグルス、その息子にタールだと紹介された。頭が割れそうだ。しかも正式名称と愛称付きである。今までの王子は数字で覚えていたのに急に長い名前プラス愛称など覚えられない。
シオンとカインだけ覚えておけばいいか
カチャカチャと無言で食事をすることがこんなにも地獄なのかと思うほど地獄だった。ゴクンという喉の音さえ聞こえてきそうだ。ルイは今日を乗り越えればと祈るのみであった。
食事はようやく終わり、食後に香りのいいコーヒーが出てきた。コーヒーなんて久しぶりだ。
「これはコヒィーという。最近貴族内で流行っているモノだとか」
陛下が説明をしている。王妃や王子たちがニヤニヤしている。
ああ、これは苦いという顔を期待しているんだな。
「ありがとうございます。良い香りですが、真っ黒な色をしていますね」
一口飲んで、少し眉を動かしうっという顔をして見せる。
「どうだね」
ニヤニヤとしながら陛下は感想を聞いた。
「はい、大変香ばしく少し苦味がありますが、喉越はよく大変おいしゅうございます」
「ほほ、そうか」
満足いただけましたか?
「まあ、グルメでいらっしゃる。わたくしなんて初めて口にしたときは苦味しか感じませんでしたわ。ルイ殿は舌が肥えてらっしゃるのですね」
陛下のすぐ近くにいる王妃であるアルミダがにこりとルイに話し掛けた。
「あ、ありが…」
ルイがそう言う前に違うご婦人が割って話し出した。
「本当にコヒィは苦味ばかりが先にきましてよ。わたくしも最初に口にしたときは毒かと思いましたわ」
「まあ、確かに。そのように記憶していますわね」
「ルイ殿は飲んだことがあったのでは?」
「本当に。私なんて吐き出してしまいましたわ。ほほほ」
王妃の第一夫人を皮切りに続々と夫人たちが話始めた。やはり口を開くのも階級順なのだろうか。第一第二夫人と話し始めたのだ。夫人も大変だ。
最後の第四夫人は他の夫人とは違い、派手な装いのドレスに胸元が大きく開かれ大きなバストは零れ落ちそうになっていた。そして、宝石は真っ赤なルビーがドーンと胸元に光り輝いている。もちろん耳にも指にも真っ赤なルビーが光っている。
他の三名の夫人たちは王妃に合わせ小さい品の良い石を付けているのに対しこの第四夫人だけは少々下品だ。第四夫人はにこりとタールに笑いかけている。タールは一番末っ子なわけではないが、母親の地位が低いのでルイから一番遠い席でまたもやルイを睨んでいる。
ルイが王族たちを目で追っていることに気が付いたシオンはにこりと笑う。ルイからタールを引き離したのだと推測する。
シオンは、プラチナブロンドをしていて紫の瞳だ。アルミダに特徴が似ている。なんともクールな美形である。にこりと愛想笑いをされると惚れそうになる。
その横で明るい笑顔を発しているカインは陛下似のようで、髪の色は金髪だが陛下と同じオリエンタルブルーの瞳をしていた。
食事を終え、ひとしきり会話を楽しんだ後、王妃たちは下がり、陛下と王子たち、そしてルイのみとなった。
かの国についてシオンが話を進める。
「かの国の使者だが、返事を持たせて返したよ。手厚く迎える必要はないからね。一行はムッとしていたが…内容は先ほど言った通り、我が国の付与師を引き渡せとの事だ。所在を明らかにしてまた連絡をすると返答をした所、二十日後にまた来ると帰って行ったよ」
「私のために申し訳ありません」
「いや、かの国と交流出来てうれしいよ。かの国は幻の国だからね」
シオンはまたもや極上の笑みをルイに与える。
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