第14話 貴族になります
「すごいね、想像以上の出来栄えだよ。君は…貴族になる事は望んでいる?」
「え?どういう意味ですか?」
「君はさっさと貴族になって自分の身を守る方がいいと思うよ。これだけの付与師は類を見ない。君の名で、商品取引をすれば、あっという間に貴族に留まるだろうからね。貴族が君を欲しがると思うよ。その前に貴族になっていた方がいいだろうね。力及ばずだが、私が後ろ盾になるよ」
貴族なんて面倒だが、追手が来たときに庶民と貴族では対応も違ってくるだろうし、なによりもここでも貴族が付きまとう。力を持っている女を攫ってまで婚姻し奴隷のように働かせるなんて珍しい話じゃないらしい。最近では女性が当主の男爵家もある。貴族になった方がいいように思えてきた。
「シラー男爵、後ろ盾よろしくお願いいたします」
「ああ、まかせない。私を囲っている辺境伯がいる。彼も信用できる人だ。安心していいよ」
今月分を一日で付与してしまい、シラー男爵から「来月来てくれ」と言われてそのまま帰宅する事になった。
「え?貴族になる?」
「そう、実は私は実家が上級貴族ではあったけど王族にいいようにされて没落したの。で、娼婦館に売られそうになって逃げだしたんだけど…」
「ルイ、すごいことをさらりと言うんじゃないよ。ま、庶民ではないなとは思っていたさね」
「で、シラー男爵が言うには力があり過ぎるからもう貴族になった方がいいって。じゃないと貴族に攫われて無理やりに婚姻させられるからって」
「まあ、そう事もあるでしょうね」
ネメシアは経験があるかのように頷く。
「ルイも貴族になるのか~あそこに寝泊りするといい事があるかな?」
プリムラがガルボを食べながら言う
「前に住んでいた人?どんなとこに嫁いだの?」
「けっこういい家に嫁にいったよ。ね、アネモネ」
「ああ、そうだね。子爵の妾になったかね」
「プリムラ、全然よくないわよぉ。妾なんていつ捨てれらるか分からないんだから」
「なんだよ、金持ちならいいだろう?ネメシアは固いんだよぉ」
「お金じゃないわ、プリムラ」
「まぁいいんじゃないかい。貴族におなりよ。身の危険は自分で回避しないと誰も守っちゃあくれないよ」
「そうね、飛び級で準男爵になれるだろうってシラー男爵が言ってたわ」
「いきなり、準男爵かい?普通は爵士からだろうに」
「そうなの、あとシャルトル辺境伯が私の後ろ盾になってくれるって」
「はっ?!シャルトル辺境伯ってここいったいの大領主じゃないかい?!」
ローランド・シャルトル辺境伯、この大都市アルベルスの大貴族である。
「そうなの、で今度、面接するの」
「面接ってなんだい。謁見の事だろう?」
「はあ、すごいことになったわねぇ」
「頑張って来なよ、ルイ!」
「ありがとう、プリムラ」
シャルトル辺境伯との謁見は、まだ未定なのでゆっくりと中古ドレスでも探す事にする。一応平民なので礼儀だのマナーなどは大目に見てくれるだろう。とりあえず、来月まで仕事がない。事務作業で入ったのに即戦力となり全部、シラー男爵が表立ってしてくれることになった。結局、価格的ものはなにも分からないままだ。ただし金額の設定はシラー男爵との間で、契約を交わしている。あの王子の時のようなただ働きはしない。きちんと高額な石でも私の名前で取引をしてくれるそうだ。
「で、なんであんたは家でぼーっとしてるんだい?シラーのとこに行かないのかい?」
「だって昨日、ひと月分の仕事を全部仕上げちゃったからもう仕事ないって言われて…」
「ああ、だから貴族の話になったんだね。そっちを先に言うんだよ、まったく」
「言ってなかった?」
アネモネからため息を吐かれた。
「ねぇ、私が貴族なったらアネモネは手伝ってくれる?」
「…本当はひとの人生なんて関わりたくないんだけどねぇ…あんたはぼやっとしているからねぇ。受付くらいはしてやるよ」
「ありがとう、アネモネ」
アネモネが味方をしてくれるなら百万馬力だ。
「今日はお祝いに「コバーチュ」のあんかけステーキ肉を買って来るわ。スープだけ用意しといて!」
「はいはい、なんのお祝いなのかね。呑気な子だよ」
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