135.


「その話しをするのなら、九藤の奴も呼んだ方が良いんじゃないですか?」


 一歩前に出た鈴木さんが九藤さんの必要性を話すが、置いてきたのは俺だし。このメンバーでも半数は残るって思っていたら、良く見れば、前澤さんと小村さんの姿は無かった。


 小村さんが付き添いか。

 支障は無いがどうせなら、白浜さんが居ないでくれた方が、話の流れが滞りなく行なえただろうに。


「いえ、決まった事は、僕からも伝えるつもりですが、お二人の方が先に会ったら、その時は伝えて下さい」


「なんで私が」

「おいっ菜奈、それぐらいやれよ。すいません。俺が伝えときますので」


 俺だからなのか、白浜さんに対して何かを言うと、高確率で反感をかっている気がする。棘がある受け答えをされて、やはり良い気分な者は基本は居ないし、俺も不愉快とまではいかなくとも、遠慮願いたい。


「地形の分からない森で、幾ら標的がデカかろうと、難航すると思いますが」


「時葉さんの言う通り過ぎて、ほんと。どうしようって感じですよねぇ~」


「プランは無しですか?」


 時葉さんに問題を突かれ聞かれ、全員から期待の眼差しが消え失せ、失望の色に変わっっていったが、俺だって無い訳じゃない。


「ただ俺が考えると、森を焼き尽くすとか。広範囲に及ぶ人海戦術で、森の中をソナーの要領で人を歩かせるとか。何かと安全とか、今後を欠く作戦概要に成ってしまうんですよ。それでも良いんですか?」


「論外です」

「却下ね」

「流石にちょっと、考え直した方が…」

「ほらほら、やっぱり緋彩先輩の方が優秀なんだもぉ~ん」

「あの、千田さん?私は、支持しなくもなくもないですよ?」


 鈴木さんと優李からは、柔らかい言葉を受けるも。即否定の時葉さんと望奈さんに、全く意味が分からない小さき女性には、うっかりで矢を放ちたかった。


「マジック…」


「あわわわっ、冗談ですよ!手をッ、手を向けて、マジックショーを開催しようとしないで下さい!」


 意図的に手を向けていたが、追われた猫のように望奈さんの後ろに隠れるも。望奈さんに手を掴まれ、肩をも掴まれた白浜さんは、前に移り変わられ、動けぬ的と成っていた。


「一発よ。それ以上は危険だから」


「ちょッ!?緋彩先輩!?一発でも、あの人の攻撃なら私死ねますって!?どっちの味方だったんですかっ、さっきまで千田さんが…ん"ん"ッ!んぅ~ん」


 前に出された白浜さんが叫び、口数が減らないのを見てか、その口を望奈さんが塞いでいたが、白浜さんは必死に足掻いておらず。逆に何だか手で押さえられてる状態を、楽しんでる感じだった。


「やっぱり、二発なら良いわ」


「ん"?!ンン!ンンッ!!」


 流石に割りと本気で俺が放つ素振りをして、望奈さんが妥協なしに押さえていると、ようやく焦り始めていたが、


「望奈さん、そのまま押さえてて下さい」


「嫌なんだけれど」


 露骨に嫌そうな反応をされて、心のガラスに亀裂でも入ったのか、勝手に静かに成っていたので、それで良かった。


「お願いします」


「分かったわよ」


「はい。それで一周回って戻って来ると、彼奴の見つけ方に関してですが、一つ思いつきました」


 白浜さんが口を挟む事は無いが、他の面々も中々に不安そうな表情をしているが、今度のは割りと妥当な作戦のつもりだ。


「ウルフをひたすら狩って、狩って、狩りましょう。そしたらウルフの親玉も出てくるでしょ、って安易な考えです」


 しかもこれで選定した人達は、少なからずウルフを倒す事によってLvが上がり。今後の戦力としても十分に役立つ。


「それだと、かなりの人員を割く事に成りませんか?」


「そうですけど、敵が減るのなら良い事ですし、周囲の森から探すのが目的では無く。一匹、一匹を確実に倒して進んでいくのなら、被害も抑えられますし、許容以上のすれ違いは起きないと思いますよ」


「その場合、私達というか。私と、他の隊はどうするの?」


「時葉さんはともかく、隊員の皆さんには残ってもらい、引き続き子最優先で、安全に努めてもらいます」


「私はどうしましょうか」


 時葉さんがきょとんとした様子で、聞いてくるが、仕事を振って良いのなら、この人には選抜した人達の、各グループの統率をしてもらいたい。


 というかこの人以上の適任が居ない。


「時葉さんは、駆り出す予定の人達の纏めをお願いしても、良いですか?」


「承りました」


 お願いする事に対して、疑問を挟まれる事はあっても拒否する事がない彼女は、内心ではどう思っているのか、物凄く怖いけれど、それを言っては進まないので引き受けてもらおう。


「いつもすいません。お願いします」


「いえ」


「それと、優李は此処に残って、そちら側の人員の管理とか、その他諸々お願いします。それであの脳筋の友宏は連れて行きますので」


「兄を頼みます」


「ちょっと良い?」


 快よく優李さんが引き受けてくれた所に、望奈さんが口を挟み。何を聞いて来るのか思ったこれは、


「どうかしました?」


 素直に聞いていた。


「いま貴方、優李って、呼ばなかった?」


 その瞬間、俺は心臓は止まった気がした。


(やってしまった…)





 

 





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