第58話その後
一通りお説教も終わり、改めて私が気を失っていた間のことを聞きました。
まず、一人で戦っていたクルトさんですが、だいぶ苦戦を強いられていたようですが、そこはクルトさん。
「あんな武器、早々お目にかかれるモノじゃあらへん。折角やし楽しまんと思うてな」
と、戦闘を楽しんだご様子。
しかし、最期の一撃を喰らわそうとした時、急に苦しみだし体が消滅してしまったと。
恐らくファニーさんが消滅したタイミングで、そのアンデッドが消滅したのでしょう。
しかし、タイミングが悪かったですね。
「もぉ最悪や!!めっちゃ不完全燃焼!!君らに分かる!?」
最期のトドメを刺せなかったクルトさんは、それはそれは大変不機嫌です。
その為、鬱憤を晴らそうと騎士団へと行き、訓練と称したストレス発散を騎士達で行ったようですが、腕試しにもならなかった様なのです。
騎士の方々はクルトさんの顔を見ると怯えるようになってしまい、団長のフリード様から出入り禁止が決定しました。
──クルトさんの相手にならない騎士にも問題があるのでは?
まあ、そこは今からフリード様とカルム様がどうにかするでしょうから口出しは不要ですね。
「ちょっと、君ら、僕の存在忘れてない?」
そう声が掛かり振り向くと、キャリー様と一緒にいるニルスさんの姿がありました。
どうやらニルスさんは姿を変えれる能力を活かし、キャリー様達隠密部隊の方々と一緒に行動をしていた様です。
──すっかり存在を忘れていましたが、ニルスさんもしっかりお仕事をしていたんですね。
そのニルスさんは姿をアンデッドに変え、ファニーさんが住処にしていた洞窟へと行き、見張りに付いていたアンデッドを一人で片付け無事に禁断魔術書を取り返してきた。と言う事らしいです。
「本当、勘弁して欲しいよねぇ。何でアンデッドなんかにならなきゃいけなかったのさ。このままの姿でも全然余裕だったんだけど?」
「いや、 お前がそこまで強いとは思いもしなかったもんだから……すまんかった」
ニルスさんの愚痴にキャリー様は素直に謝罪しております。
まあ、キャリー様はニルスさんの力を知りませんからね。当然木を隠すなら森の中だと思いますよね。
キャリー様はニルスさんの強さと度胸を見て、隠密部隊に入隊させたいようでゴリさんとニルスさんに何度も掛け合っている様なのですが、どちらの答えもノー。
それでも諦めきれないキャリー様は何かと理由をつけてニルスさんの元へ足を運んでいるらしいです。
キャリー様には秘密ですが、ニルスさん率いる毒蜘蛛の方々はゴリさん預かりになっているので、どう転んでも隠密部隊に入ることはありません。
最後にアンデッドになっていた方々ですが、無事にあるべき場所に戻った様です。
「死者達から礼を言われた。妾からも礼を言おう。よくやってくれた」
シャーロット様から労いの言葉が掛けられ、柄にもなく照れました。
「じゃが、言葉だけじゃ足りぬと死者の者たちがフェルスの墓に宴の場を作りおってな。今回の立役者のお主が来ぬと片付けようにも片付かんのだが?」
ニヤッと悪戯っぽく笑いかけてきました。
キョトンとしている私にティムさんが「みんなマリーを待ってるんだよ」と。
その言葉の意味を理解すると目頭が熱くなり、思わず顔を背けてしまいました。
「あれ?あれれれれ?マリー、もしかして泣いてる?」
本当にこういう時空気を読まないルイスさんに腹が立ちますが、今回は許します。
改めて私は便利屋に……皆さんに出会えて本当に良かったと心の底から思えます。
それもこれも借金をした脳筋バカ夫婦のお陰なんですが、あの夫婦に感謝の言葉は不要ですね。
殿下の部屋だと分かっているのにも関わらず、どんちゃん騒ぎをする皆さんを見て笑みがこぼれました。
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