第53話家族
ファニーさんのお母様は虚ろな目で俯き意思は……持ってないようです。
神父様は愛する妻を目にして信じられないというような、再び会えて嬉しいような複雑な表情をしておりますね。
「ここに、後はお父さん……貴方がいれば完璧なの」
ファニーさんはアンデッドとして、家族を作り上げようとしているのですか。
そして……
「だから……私の為に死んで?」
言うが早いかファニーさんは神父様目掛けて飛んできました。
「神父様!!!」
ガギンッ!!!
寸前のところでファニーさんの剣を受け止めました。
神父様は私の後ろで何が起こっているのか分かっていない様子で、ただ呆然としています。
フェンに神父様を連れて逃げるよう伝えると、フェンは大人しく私の言うことを聞いて神父様を口にくわえ森の外に向けて駆け出していきました。
「──マリー。貴方もすぐに仲間になるんだから、大人しくしてくれる?」
「それは、いくら友達と言えど承認できませんね。私の体は私のモノですから」
一旦後ろに引くと、振動でボタボタと血が溢れてきます。
──まずいですね……
結構な血が流れている為、目の前が眩んで来ました。
しかし、こんな所で気を失う訳にはいきません。
グッと歯を食いしばり、ファニーさんに剣を振り下ろしながらファニーさんに語りかけます。
「ファニーさん!!目を覚ましてください!!貴方はこんな事をする方ではなかったはず!!私が友達として貴方を支えていきます!!ですからこのような事はもう……」
ファニーさんは無表情で私の剣を受け止めながら聞いていましたが「クスッ」と不気味に微笑みました。
「友達として私を支える?こんな姿になった私を?はんっ。可笑しくて笑っちゃうわ」
ドスンッ!!
隙を見せた瞬間、地面に叩きつけられファニーさんが馬乗りで剣を首に突きつけてきました。
「私はもう悲しいのは嫌なの!!大切な人と一緒にいたいと思うことが罪なの!?大切な人を殺した相手を恨む事のなにが悪いの!?」
気づけば私の頬にファニーさんの涙が落ちてきました。
「……お母さんを殺した貴族を告発しようともしたわよ。だけどね、私の意見は通らなかった。何度も何度も警備隊の詰所に行ったわ。けれど聞く耳すら持ってくれなかった……」
そこの司令官をクビにした方が良さそうですね。
「だから私が自ら手を下す事にした。お母さんを引いた貴族も、そのきっかけを作った東の神父も……全部私で終わらせてやるのよ!!」
ダンッ!!と私の首スレスレの所に勢いよく剣が刺さりました。
これを受けたら間違いなく命がありませんでしたね。
「ふふっ。そんな顔しなくても大丈夫よ。すぐに私が生き返らせあげる。そして、一生私の家族として過ごしましょ」
そう言うなり、再び剣を手に取り剣先を私に向けるとその剣を力一杯振り下ろしました。
しかし、残念なことにここから抜けでるほどの体力が残っていないのです。
──あぁ。殿下とゴリさんに怒られますね……
死体になっても怒られるのは正直勘弁願いたいところなんですが。
冷静にそんな事を考えていると、首に剣先が当たった所で止まりました。
恐る恐る目を開けてみると、ファニーさんのお母様がファニーさんを止めていました。
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