第46話正体
ゴリさんは口を開けたまま、銃弾を放ったアンデッドを見据えて動けなくなっていました。
アンデッドはその隙を好機と攻めてきます。
慌てて剣を構えたゴリさんですが、銃弾と剣の立て続けの攻撃に傷が増えて行きます。
「──くそっ!!」
色々と突っ込みたいゴリさんに対して、手を休めず考える間も与えぬアンデッドに苛立ちが募っている様子。
このままではゴリさんも危ういのでは?と思った私は助太刀に入ろうと剣を手にしたところで、ヤンさんに止められました。
『手助けは不要だ。……むしろ、いい機会かもしれん』
そう言いながら、銃を持ったアンデッドを見据えています。
──もしかして、ヤンさんも知っている方?
じっとヤンさんを見ていたら、視線に気づいたヤンさんが困りながらも説明をしてくれるようです。
『どうせバレる事だ』と。
そして、ヤンさんがゆっくり話してくれました。
結論から申すと、あのアンデッドは元隠密部隊の方。
そしてゴリさんに非常に懐いて、実力も充分。
ゆくゆくは副隊長にとゴリさんも押していた人物だったらしいです。
──元ゴリさんの部下の方……でも、何故ゴリさんを懐いていた方がゴリさんに攻撃を?
その謎も、ヤンさんが解いてくれました。
それは、ゴリさんに裏切られたから……と。
ゴリさんは、事もあろうことか自分に懐いていたこのアンデッド……もとい、元部下の方に何も伝えず城を去った様なのです。
そして、慕っていたゴリさんを失ったショックとゴリさんに置いていかれたという事実に頭がついていけずミスを連発。
そんなある日、任務先で隙を突かれ──……という事らしいです。
一通り聞いた感想は
「十中八九、ゴリさんが悪いですね」
敵ですが、あのアンデッドには同情いたします。
──……ということは、あの
きっと復讐の為にアンデッドになったのでしょう。
「
元部下の方が、仲間であるアンデッドにそう伝えました。
「……だと思ったよ。まあ、感動の再会を邪魔する気はないしね」
そう言うなり、物凄い速さでこちらに突っ込んできました。
慌てて私は剣で受け止めました。
「──ちっ。案外しぶといな……」
「そう簡単には殺らせませんよ?」
一発で仕留めたと思ったのでしょう。とても残念そうに呟いておりました。
「………」
『マリーどけ。俺が殺る』と私を押しのけ前に出たヤンさんですが、大分体がしんどそうです。
「お前じゃもう相手になんないから、そっちの子にしてよ」
アンデッドは私をご所望ですが、ヤンさんは私を背にしたまま微動だにしません。
アンデッドも言うだけ無駄だと判断したようで「……死に損ないを殺るのつまんないだけど」と口にしながらヤンさんに斬りかかりました。
「ヤンさん!!無理です!!私が──」
「黙ってろ!!」
思わず動きが止まりました。
──ヤンさんが……喋った……!?
そう思ったのも束の間。
『すまん。ここは俺に任せてくれないか』といつものヤンさんに戻りました。
そこまで言われたら、私は何も言えません。
大人しく剣を鞘に収めましたが、何時でも剣が抜けるように柄には手を置いたままです。
私が剣を鞘に収めるのを確認すると、アンデッドとの攻防が始まりました。
私はヤンさんを心配しておりましたが、その必要はありませんでした。
先程までやられていたのは嘘のように、ヤンさんはアンデッドを追い詰めています。
「──なっ!?お前、まだ動けるのか!?」
アンデッドはヤンさんの動きについていくのがやっとです。
ヤンさんを過小評価しすぎた結果ですね。
──でも、体力面から考えても長くは持ちませんよ?ヤンさん。
そんな事は本人のヤンさんが一番分かっているはずです。
だからこそ、一気に片を付ける気でいるのでしょう。
キンキンッ!!
と剣のぶつかり合う音が鳴り響く中、ようやくその時が……
「くそ-----!!!!!」
叫びながらヤンさんに向かってきたアンデッドの剣を弾き落とすと、ヤンさんは鋭い目付きでアンデッドに向けて剣を振り下ろしました。
──お見事。
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