第44話対アンデッド
「さて、そろそろ降参しては?」
鎖の付いた扇ぎながら見下してくるのは、私が相手をしているアンデッド。
この方の武器は扇の一枚一枚が刃のように鋭く、手に持ち直接攻撃する事は勿論、扇を飛ばし飛び道具として攻撃する事も可能。
──全く厄介な武器を持っていますね。
今、私とヤンさんは手分けして五体のアンデッドの相手をしています。
ヤンさんが三体、私が二体を相手をしているんですが、やはり強い。
「ここに5人もいらないやん?僕らは教会に行こうやん」
「──そうだな。俺らの目的はこいつらじゃない」
二体のアンデッドが東の教会へ向かおうとしている事が分かりヤンさんと止めに入りましたが、それを遮って他の三体のアンデッドが攻撃を仕掛けてきました。
「しまった!!!」
そちらの相手をしている隙に、クスクスと笑い「バイバ~イ」と手を振りながら、あっという間に姿が消えました。
私はすぐに東の教会へ向かおうとした所で、ヤンさんにガシッと肩を掴まれました。
「…………」
『焦るな!!あっちにはクルトがいる!!』と一喝されました。
そうですね。あちらにはクルトさんもシモーネさんもジェムさん。それにフェン、リル、ゴンがいます。
それなら私がやる事は一つ。ここを早めに打破する事です。
私は扇をクルクル回してこちらを見ているアンデッドと再び向き合い、剣を構えジリジリと距離を詰めて行きます。
そして、どちらが言うまでもなく同時に斬りかかります。
ジャラジャラジャラ……!!
扇を避けた瞬間、鎖が剣に纏わりつき剣の自由が奪われました。
「──くっ!!!」
剣まで奪われないよう、力を込め必死に耐えます。
相手は鎖を引き寄せ、私との間を徐々に近づかせていきます。
このままでは、マズいと思い仕方なく剣から手を離しました。
「おや?結構簡単に手を離しちゃいましたね?」
意外そうな顔をしているアンデッドですが、取られたら取り返す。これ常識です。
「こう見えて、そこそこ武闘には自信があるので……」
まあ、元武闘派令嬢ですからね。
私の言葉を聞いたアンデッドは「へぇ~」と不敵な笑みを浮かべながら、私から奪った剣をこれ見よがしに振るっています。
ファニーさんが作ったアンデッドのスピードは神速クラス。
私はその速さに慣れる為に鍛錬を積み重ねてきたのです。
──さて、特訓の成果は如何なものか……
タンタンとその場で足踏みをしながら狙いを定め、狙いが定まった所で思いっきり地面を蹴ります。
「──なっ!?」
ドーーーン!!!
不意をつかれたアンデッドは、私の蹴りをもろに受け飛ばされました。
アンデッドが立っていた所には先程奪われた剣が転がっていました。
その剣を手に取り「……他愛もない」と一言。
土ぼこりが上がっている方を見ているとフラフラと立ちあがり「プッ」と口の中の血を吐き捨てているアンデッドの姿を捉えました。
「……貴方、私を本気で怒らせたみたいですよ?」
確かに相当怒っているようですが、本気だろうが手を抜いていようがこの世は弱肉強食。勝ったもん勝ちです。
そんな事を考えていると、目の前に扇が飛んできました。
慌てて交わしましたが、頬が少し切れ血が滲みましたがそんな事に気を取られている場合ではありません。
頬を掠めた扇は、大きくカーブを描き再びこちらに向かって来ます。
どうやら、あの鎖で方向を操作している様です。
アンデッドは器用に鎖と扇を操り、的確に私の方へ飛ばしてきます。
見ていて「何とも器用な事を……」などと思っておりますが、そんな事を考えていてもどうしようもありません。
私が見る限り、あの鎖がなければ扇の操縦は不可能だと判断しました。
──となれば、先にやるべき事は……あの扇と鎖の分離。
私はわざとその場に立ち止まり、扇が向かってくるのを待ちました。
それに驚いたのはアンデッド。
「──何!?」
キーーン!!!
扇と鎖の結合部分に剣を差し込み無理やり外すことに成功。
扇は私の手の中です。
「おやおや?形勢逆転ですか?」
クスクスと微笑みながら扇を仰いでやると、悔しそうにこちらを睨みつけています。
「調子に乗るなよ!!小娘風情が!!」
負け犬の遠吠えとはこう言うことですね。
アンデッドは怒りに任せて私に殴りかかってきましたが──
「……遅いです」
ズボッと体の中心に剣を刺しそのまま横に引き抜きました。
アンデッドの体は半分に裂け、地面ヘ。
「……あ……わたしが……まけ……」
最期の言葉を言い終える前に力尽きたようです。
そして、体は干からびたミイラのようになり、その顔はとても悲しそうな顔でした。
そして、砂になり風に吹かれていきました。
「次生まれる時は、真っ当な人生を歩んでください」
そう言葉をかけました。
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