第35話一難去ってまた一難

何とか落ち着きを取り戻してくれた神父様ですが、エルさんを睨むのは忘れません。

エルさんは額を真っ赤にしながら「酷いじゃないか」と私に文句を仰っておりますが、自業自得です。

私的には話を進めたい所ですが、この様子では神父様は話をしてくれそうにないと判断した私は本日は一旦戻り、後日改めて謝罪に伺うことを伝えました。


「──殿下小僧の犬がいないなら、話だけは聞いてやる」


不機嫌な様子で仰ってくれました。

当然エルさんは二度と連れてきません。

そして、帰ったらゴリさんにも説教です。

無駄な体力を使わせた責任はちゃんと取ってもらわなければ、私の気が済みません。


そして、私達がフェン、リル、ゴンの三頭とルーナの待つ外へと出ると、ルーナがすぐに私の元へと飛んできましたが、フェンリル三頭の様子がおかしいです。


ヴゥゥゥゥゥ~~~~


とある一点を見ながら唸り声を上げ、警戒しています。

その一点を見てみると、そこには神父様の姿。


──あぁ、やはり……


神父様も何かを察したのか、すぐに教会の中へと戻り出てきませんでた。


「あの神父、娘と接触あるっぽいね」


「えぇ、ですが、本日は聞き取りは無理でしょう。──誰かさんのせいで」


キッとエルさんを睨みつけても「お~怖っ」と仰るだけで反省の色が見られません。

まあ、エルさんに反省を求める方が間違っていますけどね。


私とエルさんが喧嘩しているように見えたのでしょう。

フェン、リル、ゴンが心配して寄ってきました。

私は優しく三頭の頭を撫でながら「大丈夫ですよ」と伝えました。

すると、安心したのかヤンさんに会いたくなったのか、早く帰ろうと私を急かして来たので、教会を後にしようと足を進めた所でフェンの足が止まり、教会の方を見ながら唸りだしました。

何だ?と思っていると……


ドーーーーン!!!!と大きな音を立て、教会が吹き飛びました。


「──なっ!?」


私とエルさんは驚き、何が起こったのか頭が付いていきません。


ワオン!!


フェンの鳴き声で我に返った私はすぐに神父様を助けに、エルさんは仕掛けてきた敵を探しに向かいました。


「神父様!!神父様!!」


瓦礫となった教会の中から神父様を探しますが、いかにせん瓦礫が邪魔です。

必死に名を呼びますが応答がなく、焦りばかりが募ります。


「生きていて下さいよ……」


ボソッと呟いた時、リルが鳴いて私を呼びました。

どうやら、この下にいるらしくフェンとゴンが瓦礫を除けてくれていました。

しばらくすると、瓦礫の中からフェンに咥えられた神父様の姿が見えました。


「神父様!!」


慌てて駆け寄り息があるか確かめます。

頭からつま先まで血だらけですが、何とか息はあります。

ホッとしていると神父様の目がゆっくり開きました。


「……お、れは、生きて、いるのか……?」


「ええ、重傷ですが生きています!!すぐに医者の元へ連れていきます!!気をしっかりもっていてください!!」


気を失わないよう励まし、ゆっくりゴンの背中に乗せました。


「──おや?生きていましたか?中々にしぶといですね」


殺気を感じ振り向くと、この間会ったアンデッドとは別のアンデッドの姿がそこにありました。

しかも、その片手にはぐったりしたエルさんの姿が……


「エルさん!!」


声をかけますが反応がありません。

エルさんがやられたとなると、私が勝てる見込みは五分……と言いたいところですが、勝算が見つかりません。

私はソッとゴンの耳元で「……神父様を医者の元へ。──行きなさい」と伝え、ここから逃げるよう促しました。

ゴンはしばらく悩んでいましたが、覚悟を決めた様で森の外向けて駆け出していきました。


──さてさて、次はエルさんの救出と行きますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る